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父の人生を変えた『一日』その83 ~財務経営~

その83 ~財務経営~
 社団法人新潟電設業協会が発足する以前の電気業界は組合の組織であった。ある日、組合で懸賞論文の応募があった。電気工事業での技術面での懸賞論文であった。その中に一つ変わった論文が発表された。それがライオンの書いた懸賞論文であった。題名は「電気工事業における入金システム」。電気工事業で仕事をする場合、現金・手形・売掛金・前受金・期日決済売掛金など色々な入金方法が存在していた。それも一目瞭然として表を作り資金繰り表への対応などに使うと便利であると書かれていた。当社に戻って担当と作り上げたソフト面であった。今でもそのソフトが活用されている。これ一つで決済条件・月々の入金しかも手形と現金に分けて誰にでも解るシステムなのである。結果、特別賞に入賞した。
 ある会社の重役曰く「これは面白い当社も取り入れる」と言ってくれた。こうしてライオンは色々な事を思い切って少しでも電気業界を変えていくのである。電気の詳細を知らない電気工事会社の社長の出番は多くあるものであり既存の凝り固まった業界には「新鮮に面白く」写ったようである。『みずでん』の社長、変わっているがなかなか面白い事を言うし実行するとうわさが広まっていた。そして業界とはなんぞやとの問題につっこんだ建設的具申をしていくのである。


~倅の解釈~
 同業者が集う組合と言うものは電機業界にもある。さらには市域、県域を統合する協会も存在している。各々の団体は業界発展というミッションを掲げ、技術力の向上を通じて業界の発展促進に力を注いていた。現在も同様の団体が多数ある。ここで議論されるのは、技術の事や、業界の動向、安全管理などなどである。
 親父は、ここに新たなエッセンスを入れようとこだわっていた。「財務経営」である。しっかりと企業組織として、掲げるドメインである電気工事の技術力を高めることは当たり前のことであり、経営内容を様々な視点からさらに深堀して良くしていくことにこだわった。
 総合商社マンとして、徹底的に教育を受けた財務。これを自社の武器とすると同時に、業界としての弱みがここにあることを分析して実行したのである。他の分野の経営者からすると笑われてしまうが、中小零細企業には財務面で見直すことが多々ある。
 私の代となり、この課題はさらに加速している。時代を流れるスピードが10年前、20年前、30年前と比べるとまったくもって違うスピード感で物事が進む中、財務経営というエッセンスは不可欠である。実際のところ、自分自身もまだまだ勉強不足だが、日々、様々な企業の決算書を向き合いながら、経営のヒントを学ぶ。親父の口癖は、「数字は絶対に嘘をつかない」であった。


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