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#連続小説【アオハル】

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自分の半生を振り返ったリアルとフィクションを混合した青春ストーリーです。高評価、低評価問わず遠慮なくコメントしてください。1日1ページ投稿を目標としてます!
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#連続小説【アオハル】〜プロローグ〜

(進路って決めなきゃいけんの?何で?) 中学3年。しかも夏。周りはドコドコの高校行きたいだとか、試験勉強だとか、塾に通う奴までいる始末。 俺は1人川辺にピーチベッドや漫画を広げ、タバコをふかしながら、クーラーボックスに入れてきたコーラやカルピスで乾杯中…何が悲しくて中年のサボリーマンみたいな事をしてるのか… (高校ってそんなに大事か?んだよどいつもこいつも!) 「おー!マイク〜!ま〜たオッサンごっこか?お前も毎日飽きねぇよな?」 「ん?んだよ…シャンかよ。オメェも暇なん

#連続小説【アオハル】〜第六章・練習あるのみ 3〜

帰り道は先頭を竹之内さんが延々と引っ張ってくれている。海沿いを抜け、産業道路を抜け、市内まで戻って来た。竹之内さんと健太、義和は同じ下宿先らしくココでお別れとなる。 『お疲れっした!!』 「お疲れ!石谷と鬼木は同じ方向だよな?事故るんじゃねぇぞ!」 路肩に止まり俺達2人は3人を見送った。 「ヤバいかも…」 「あ?石谷どうした???」 石谷は縁石に腰を下ろし項垂れてしまったのだ。 「おい!大丈夫かよ!」 (ゲロゲロ…ゴェ。ゴエ……ゴェ…) マジかよ!吐いてるし

#連続小説【アオハル】〜第六章・練習あるのみ 2 〜

義和の番手も変わり石谷、川野と順番に回った。すると目の前には夕陽に照らされた海が見えはじめてきていた。 「俺が引く!お前達しっかり付いて来いよ!」 『はい!!!!!』 西村さんが先頭に出て集団をグイグイ引っ張っていく。産業道路までは気にならなかったが海沿いの道に入った途端に横風がキツくなっていた。 (この風…ヤバイな。後ろに付いてるはずなのに…先頭にいた時みたいなんだが…) 海沿いを走る時に厄介なのがこの海風である。 海から山に、吹き上げるように吹く風は風圧として後

#連続小説【アオハル】〜第六章・練習あるのみ 1 〜

「よし…健太前出ろ!スピードが落ちたらすぐに変われ!」 「はい!」 ここは産業道路と県内では呼ばれている道だ。道幅は広く片側三車線もある。俺達は左端を走行しており比較的に安全に走る事ができる場所だ。 この道路に来てからはスピードが一段階上がり平均時速は40キロになっていた。健太もスピードを維持するために必死になってペダルを回しているのが分かる。 「よし。健太は竹之内の前に入れ。鬼木前出ろ!」 俺の隣に来た西村さんがそう伝えてきた。 『はい!!』 (ぐぉ…風!?だ

#連続小説【アオハル】〜第五章・自転車競技部 5

部室に戻ると西村さんのハンケツ姿が目に入ってきた。 「おお!お疲れ!乗ってきたか!どうだ?足パンパンだろ?」 自転車のウェアを着る時は、男女共に下着を着けないのが一般的だからハンケツになっているのは珍しくない。しかしシュールな姿で質問してくる西村さんに笑いを堪えるので俺は必死になっていた。 竹之内さんがこれからのメニューについて西村さんに話しかけたから良かったものの危うく吹き出してしまう所だった。 「後半は長距離で問題ないだろ。とりあえずペースは抑えめで安全に走行出来

#連続小説【アオハル】〜第五章・自転車競技部 4 〜

「最後だー!もがけもがけ!回せ回せ回せー!」 『ハァ…ハァ…は…い!!!!!』 合計15本。ふくらはぎ、ふとももは乳酸でパンパン。おまけに腹、背中、腕はプルプルと震える始末。満身創痍とはこの事なのかもしれない。明日は100%筋肉痛だろう。 俺はフラフラしながらも頂上までやっとの思いで到着した。 「お前ら、よく頑張った!初日でこの坂を15本いけたのは自慢できるレベルだ。三人とも体もデケエから今後が楽しみだな!アハハハ!」 (竹之内さん…めっちゃ余裕じゃん…1年違うだけ

#連続小説【アオハル】〜第五章・自転車競技部 3 〜

練習場所は学校から目と鼻の先にある寮付近であった。学校自体が山の上にあるので自転車の練習にはうってつけの場所だ。 「まず、自転車に慣れる前にペダルの脱着をマスターすることから始める。ペダルの凹んでる部分があるだろう?ソコにシューズの金具を合わせて踏み込んでみろ!」 (金具…これか…?) カチン!と音がすると、ペダルと靴がくっついて離れなくなった。 (うぉ⁉︎何だこれ⁉︎) 俺はちょっとだけパニックだ。両足がガッチリと固定されてしまってる感覚が違和感しかなかったから。

#連続小説【アオハル】〜第五章・自転車競技部 2 〜

薩摩実業高校は全校生徒で3000名を超えるマンモス高校だ。学科も文理科、普通科、商業科、情報科、機械科、電気科、土木科、これが1クラス40名〜50名で2クラスあり、俺が所属するスポーツ学科はその人数で最低でも7クラスあった。スポーツをする為に入学した奴が350名を超えるなんてマジヤバだ。 しかも、5時限目から部活動を開始するのだからスポーツに対する力の入れようは想像出来るのではないだろうか? 4限目が終わり、俺は同じクラスでもある健太、義和と共に部室を訪れていた。 「ちゃ

#連続小説【アオハル】〜第五章・自転車競技部 1 〜

薩摩実業高校自転車競技部、通称チャリ部は部員総数8名だ。三年生1名。二年生2名。一年生5名。その中の1人に女子選手が1名いる。一年生が入学した時点で団体競技に出場できるので、同好会から部活動として認められたのだそうだ。 入学式のあった日には、部員全員の顔合わせがあった。日焼けした顔が印象的で細マッチョな三年生の西村さん。 二年生は、小柄で天然パーマの竹之内さんに紅一点の美空さん。 一年生は俺。同じ出身地の健太と義和。西村さんと出身地が同じな川野。親父が競輪好きな石谷である。

#連続小説【アオハル】〜第四章・薩摩実業 3 〜

重田先生に案内されたのは、校舎から程近いプレハブ小屋が十数戸も連なる場所。俺とお袋はそのうちの一戸に案内された。 「ここが我が薩摩実業高等学校自転車競技部の部室です!」 (えっ!?自転車!?) 俺はお袋の方を見やるが、お袋は素知らぬ顔をしていた。部活なんてするつもりも無かったのでまさに晴天の霹靂だ。 「今年から部活動として学校から認められた出来立ての部だが、目指すのは全国優勝!優人君もここで鍛えて全国区の選手になり、ゆくゆくはプロの競輪選手として活躍してみたくはないか

#連続小説【アオハル】〜第四章・薩摩実業 2 〜

入学式が終わり生徒と保護者達はそれぞれの教室へと案内された。教室の扉の上に付いてる札には1総cの文字が貼り付けられていた。 (1総c…これが俺の教室か。気合い入れてナメられないようにしねぇとな…) 俺の席は教室後方の角だった。にしても席数が多い。1クラスで55席は詰めすぎじゃないのか?圧迫感がありすぎて窓を開けたい気持ちだ。 暫くすると担任の先生がやってきたのだが…入学式で見たあの教師だった。 (終わったな…1年生きれるんの…) 「おはようございます!」 「おはよ

#連続小説【アオハル】〜第四章・薩摩実業 1 〜

4月、俺は入学式に出席するためお袋と薩摩実業高校に来ていた。薩摩実業は野球やサッカーで全国制覇を果たすスポーツ学校であり、文理科は有名国立大学に現役合格者を出せる文武両道な学校だ。 入学式は体育館で行われるのだが、そのデカさは半端なくてバレーボールコートが三面も取れる程、俺は入った時の天井の高さと広さに呆気にとられてしまった。 (デカッ!俺、とんでもねぇ所に入学しちまったかも…) 「1年生は前から、あいうえお順に名前が椅子に貼ってありますので、自分の名前の席に座って下さ

#連続小説【アオハル】〜第三章・願い 5 〜

「マイク〜!おめでとう!薩摩実業受かったんだって?俺はお前と工業に行くって思ってだんだけどな〜まぁしゃあないか!」 「まぁな。シャンはこれから受験だろ?勉強しなくて大丈夫なんかよ?」 「足し算と引き算が出来たら入れる高校に、かけ算と割り算までマスターしてる俺が、受からない訳ないだろ?アハハハ!」 「イカレてる…でもお前は何とかしちまうからな…まぁ頑張れ…」 あの言葉通りに真也は、勉強を全くしないで合格をもぎ取ってきたんだから本当に凄い。 「おら!遊び行くぞ!大将!」

#連続小説【アオハル】〜第三章・願い 4 〜

駐車場へ戻るとニッちゃんが満面の笑みで出迎えてくれた。 「今朝は騙すような事をしてごめんね!テストどうだった?」 「分かるのだけ書いてきた。まぁ…50点いくかどうかも怪しいくらいかな…」 ニッちゃんの笑顔に報いたくて、一瞬嘘をつこうかと思ったがそれはやめた。結果は見えてるから嘘ついてもしょうがないと思ったのだ。 「そう。難しかったの?」 「考えなくても分かる所だけ書いてきたんで難しいかどうかは分からないや。それよりも…ニッちゃんはこの事知ってたの?」 ニッちゃんは