総合振興計画を真摯に回すことの大切さ

各自治体の企画部門の分掌を見ると、自治体の規模によって多少の違いはあるものの、だいたい書いてあることは同様だ。

総合振興計画等に関すること、広域行政に関すること、地方分権に関すること、政策の総合調整に関すること、特区に関すること、国への要望に関すること、行政改革に関すること、市民との協働に関すること、統計に関すること、大学との連携に関すること・・・。

少し幅広で書いたが、だいたいこんな感じ。
で、何が言いたいかと言えば・・・、
これらは全て総合振興計画を真摯に回す・・・、その進捗管理をきちんと核に据えて、総合的に実施をしていくものだということ。

当たり前だけど、意外にこれらの仕事が縦割りで何のエビデンスも拠り所とせずに、それぞれが思いつきで勝手に動いてしまっている場合があるのではないかと思う。

事業のマネジメントをしっかりと行い、事業を四半期ごとに点検する。
そして、自治体の年度の動きに合わせて、年度ごとの点検と予算要求へのプロセスをしっかりと進めるということ。

その事業点検においては、過年度の反省、国や世界の動向、市民の意向を踏まえて、事業の過不足をチェックし、手法の検討を行い、必要に応じて行政改革により事業の効果・効率性を増し、また、自主事業から市民との協働や民間の活用等へ、事業の手法を転換するなど、より適切な手法について検討すること。

新たな方向性を検討するにあたって障壁があるなら、国へ要望をしたり、特区の申請をしたり・・・。

広域行政だってそうだ。目標を追って、自治体単体ではどうにも解決できない課題がある。だからこそ皆で解決を図っていこうとする。

そして、大学も政策の研究主体として、また、政策が分かる人材を育成する主体として活用を図っていく。
学生の政策提案なども、できるものは新たな政策に生かしていく。

統計は、これらの一連の動き、総合振興計画の進捗管理を行う際、事業の改革や新規事業を創出する時、そのエビデンスをしっかりと整えるために本当に大切なもの。

このように、全ては総合振興計画の真摯で地味な進捗管理を全庁で行うことにより、間違った方向を向くこともなく、場当たり的な取組も排除することができる。

中長期的に安定し、市民も安心感を持った落ち着いた行政が展開できる。

もちろん総合振興計画の他に、そこにある具体的な事業を重点的に推進するプロジェクトを管理するような計画はあっていい。

ただ、やはり総合振興計画の進捗管理をもっと重視しなければいけない。
確かに地味でアピールはしない。
そんなことは当然やることだろうと一蹴される。
でも、きちんと体制を作って真摯に総合振興計画を回す。
それが本当に大事。

人間というものは、その多くの人たちの考え方は主観的で具体的。
各々のスタンダードで勝手にものを捉えるから狭いものの見方になりがちだ。
だから、高い視点から、他者の立場で、客観的に物事を捉えることが大切だ。

総合振興計画の上位にある将来都市像とか都市づくりの理念といったものは、抽象的に書いてある場合が多い。
この抽象的であるということは、見かけに惑わされることなく、大事なことはどこにあるのかを、常に探すような思考を呼び起こす。

何で総合振興計画が将来都市像や都市づくりの理念を最上位に掲げる、2層なり3層の構造になっているのか・・・。

それは、こういった抽象的な思考を確保し、政策の方向性や事業をがちっと決めてしまわずに、広い視野を持って進捗管理を行い、常にあるべき方向性に沿って過不足を点検し、柔軟に適切な政策なり事業を見出す作業を継続しようとすることだ。

最近は時代の流れが速いため、中長期的な目標を掲げることの意味を問う声も聞こえてくるが、そういう時代だからこそ、自治体や社会、人間のあるべき姿など、そのあるべき本質に照らしながら“今”を進んでいかなければいけない。

そして、教養溢れる取組を進めたい。
教養とは、今現在客観的に実現されていないもの、つまり”理想”を目的としてカルティベイト(耕作)すること。
一人ひとりの人間を超えた世界がある。それがイデアとか道理というもの。それが我々の内に働きかけるんだ。イデアを実現させるようにと。
その働きかけに呼応して、我々がそれを受け止め、自分が主たる者となって行動を起こす。
そのイデアと我々の相互作用。その相互作用が作り出されてくる・・・。そうなった状態が教養だ。
ドイツの哲学者はそう言う。

こういったことを踏まえて、各自治体の企画部門は地道に真摯に進捗管理のやり方を形づくり、全庁の意識を変えていかなければいけない。

そういった継続的に安定した行政の体制が、その自治体に落ち着きと品性を与えると信じる。
 
私は10年以上前に、計画の進捗管理と、当時流行っていた行政評価を合体させて、モデル事業を実施して報告書を取りまとめた。しかし、その成果を10年間十分に生かしてこれただろうか。全てはそこに尽きる。私がこの10年間を反省するところは多い。

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