ブランドって何だろう。
人によってその定義は異なるとは思うが、その性質に着目して見るならば、ブランドとは、“消費者(市民)の各々の頭の中に、会社や自治体等々の“客体”をとても肯定的なイメージで顕在化させようとするもの“と言うことができるのではないか。
早稲田大学の豊田秀樹教授が監修している日経BP社のブランド調査によると、一般生活者のブランド評価については、四つの因子で評価するとのことだ。
評価因子の一つ目としては、好きである・気に入っている、親しみを感じる、なくなると寂しい、共感する・フィーリングが合うの四つのイメージで尋ねた“フレンドリー”。
次に、知らない、全く興味がない、最近使っている、役に立つ・使える、品質が優れているの五つのイメージで構成される“コンビニエント”。
三つ目は、ステータスが高い、かっこいい・スタイリッシュ、他にはない魅力がある、際立った個性があるの四つのイメージで成り立つ“アウトスタンディング”。
最後に、いま注目されている(旬である)、時代を切りひらいている、勢いがあるの三つのイメージによる“イノベーティブ”。
この四つの評価因子、“フレンドリー”“コンビニエント”“アウトスタンディング”“イノベーティブ”を併せて総合力を算出するとする。
この日経BP社のブランド評価因子を念頭に置いて、さいたま市の市民意向調査における満足度調査を見てみたいと思う。
肯定的なイメージを頭の中に顕在化させる因子を探り出すということでは、企業であろうと、自治体であろうとさほどその因子に変わりはないのではないかという仮説の元で考えてみたい。
さいたま市が市民意向調査において“満足しているか否か”を市民に問うている項目は20個あって、それらを全て挙げると、電車の便、バスの便、駅までのアクセス、幹線道路の便、公共施設の充実度、飲食店の充実度、ふだんの買い物の利便性、運動・スポーツの環境、余暇活動のしやすさ、子育て環境、生活道路の安全性、自然災害による被害の少なさ、治安のよさ、住民のマナー、医療機関の利用しやすさ、緑、水辺・自然の豊かさ、まちの景観、くつろげる場所がある、名所・名物がある・・・となる。
これにより分かるように、さいたま市の満足度調査とは、日経BP社の考えるような“市のブランドの良さに繋がるような肯定的なイメージを頭の中に持つものについて調査をするものではなく、さいたま市の具体的な特性の一つ一つについて満足度を聞いているのに過ぎないことが分かる。
つまり、各々の列挙された項目の一つ一つの現状について、その利便性や質の程度について満足しているのかどうかを聞いているのに過ぎないのであって、それら個々に関する結果を総合して、それが“市の満足度”(ブランドとしての)であるとして扱うことはどうなんだろうって思わざるを得ない。
評価因子といった考え方(類型)さえもとられていない。
しかも、この20個の項目を日経BP社の調査の評価因子の“フレンドリー”“コンビニエント”“アウトスタンディング”“イノベーティブ”に当てはめてみると、そのほとんどが、“コンビニエント”(役に立つ、品質が優れている等)に当てはまってしまい、“フレンドリー”“アウトスタンディング”“イノベーティブ”に係る項目については一切評価が為されていないことが分かってしまう。
自治体に住まうということは、その自治体が持つ“コンビニエンス”さだけでなく、“フレンドリー”であったり、“アウトスタンディング”であったり“イノベイティブ”な部分が無いと、良い評価をされたり、好感を持たれたりはしないという調査の前提に立てば、このさいたま市の市民意向調査が、市としてのブランドを想起させるような満足度調査とは異なるスタンスを取っているのが歴然と見えてしまう。
今後、さいたま市でブランディングや各事業を推進しようとするならば、“フレンドリー”や”“アウトスタンディング”、“イノベーティブ”の因子においても市民の満足度を素直に訊いて、それらの分野で市民の感情を高ぶらせるような取組がなされるならば素敵だろうなと思うのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?