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死亡・相続ワンストップサービス

政府 CIO 補佐官等ディスカッションペーパー (2021 年 4 月)「行政機関におけるサービスデザインの利活用と優良事例」にもあるように、国が目論む死亡・相続ワンストップサービス化については、死亡者数も年々増加傾向にあるとともに、死亡時の手続きは、死亡届、年金手続、不動産の名義変更、税務申告など、これら行政手続は自治体の各窓口、年金事務所、法務局、税務署と個別に相談して行わなければならない状況にあり、また、金融機関を始めとした民間事業者においても、戸籍謄抄本等の提出を要するというような繰り返し手続が発生し、相続人の負担も重く、このような業務を効率化することが求められているとされる。
ただ、今日現在、国がどのような手筈でこの死亡・相続ワンストップサービス化を具体的に進めようとしているのかはまるで分らない。
国は今のところ、市町村において“おくやみ窓口”とか“おくやみコーナー”と称せられる、死亡時に必要な手続きを整理して差し上げ、市町村の手続きについてはなるべく一か所で一体的に行おうとするワンストップ化の取組については、経費の負担はしないまま、ただ応援しているという体でいる。
しかしながら、自治体で必要な死亡時の手続きなどは、重要なものもあれどその数はそう多くはない。それらは死亡時までに受けていたサービス等の喪失の手続きやそれに伴う受給者証の返却等で、遺族による手続きが行われなくても自動的に喪失手続きが行われるものも多い。
死亡時に遺族が本当に必要としていて、手続きの煩わしさに悩む手続きとは、年金や相続税、相続登記等、ほぼ国の機関が行うものなのだ。
それなのに、今、国が取り組んでいることは、DXとも言えないようなプリミティブな自治体の“おくやみ窓口”や“おくやみコーナー”に対する経費も伴わない支援だけだ。
各自治体における“おくやみ窓口”や“おくやみコーナー”の設置は、DXという名前に相応しいようなデジタル情報の共有や、それによる効率化云々についてはほぼ言及されておらず、あまり役には立たないであろうエクセルレベルの案内データベースが提供されているだけに留まっていて、実際に進む各自治体で取り組まれる内容については、その仕様や仕組みは様々だ。
一体的に行う手続きの内容や数も自治体によって異なる。
そして、このような自治体に関する手続きの効率化が多少なり進めば進むほど、国が所管する年金、相続税、相続登記等の手続きのデジタル化、一体的な効率化の推進がなされていないことに対して市民の不満が積み重なっていく。
実際は、これら死亡時の手続きは、長い人生の中で亡くなった時の一回だけでしかなく、市民から効率化のニーズが沸き上がり、それが顕在化してくことを考えるのは難しい。
ニーズの盛り上がりに欠けるため、国へのインセンティブも働きづらいのだろうか。

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