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3年前に自分が勤務する区役所においてNTT東日本と共同したAI−OCRとRPAの実証実験を行った。癖のある文字を良く読み込むOCRと、迅速なデータの読み込み処理を行うRPAには実用性を十分感じた。
しかしながら、読み込む元のデータが紙の申請書に人が筆で書いたアナログの申請内容なので、過渡期を担うシステムとしては良いが、そもそも申請書を紙に書くという行為をデジタル入力に転換して、最初からデジタル入力したデータを直接システムに読み込んで処理をさせたいとやっぱり思ってしまった。
この実証実験を経て、デジタルな申請からシステム入力までの流れはそれほど導入が難しい流れでは無いなと感じた。
こういったデジタル化・デジタル処理の課題がほぼ解決すると、あとは人間が使用するインターフェイスの問題に思考が移る。
当たり前ながら元からデジタルで人間にデータを入力させたいのだ。
まあ、インターフェイスとしてはPCやスマホが既に存在するので、それらを使えない情報弱者の存在こそが課題となる。
しかし、ここがなかなか解決できない。
ノンデジタルピープルはデジタル化を軸とするシステム改善に相性が良くない。
人間がビフォアデジタル世代とアフターデジタル世代に分かれてしまっているのは現実だ。
我々は今、配偶者を失った高齢者を“顧客”として、死亡時の複雑な行政手続きを、死亡者の態様に応じてご案内し、一定の申請を受ける“おくやみ窓口”といったものを設置するよう企画をしている。死亡時の精神的な辛さの中で面倒な手続きを少しでもサポートしたいという思いから、全国的に同様な窓口を設置する自治体が増えている。
今は亡くなる方は80歳を超えるのも普通だということなので、残された配偶者も十分要援護者たる高齢者だ。
このような窓口は、ビフォアデジタル世代のニーズがある限り、インターフェイスは“対面”と“会話”ということになるだろう。
そのビフォアデジタル世代が容易に使える(入力できる)インターフェイスができてくるなら、それは画期的なことで、本当はそれを期待するけれど。
ただ、死亡時の手続きを“おくやみ窓口”だけで対応することは効率の良い方向ではない。
市民の方に区役所までお越しいただくにしても、リモートで相互にコミュニケーションが図られるようになるにしても、人が“対面”と“対話”というインターフェイスを使用する以上、相互のやり取りに一定の時間はかかるし、人件費もなくならない。
そこで、いま現在できうる対応として、我々は二つのチャンネルを用意した。
一つが今言ったリアルな世界に設ける要援護者対応の“おくやみ窓口”。
そしてもう一つが、残された配偶者の御子息や、配偶者を手助けいただける方がいる場合は、PCやスマホを活用していただき、インターネットで自分に必要な手続きを容易に抽出できるシステム(グラファーの手続きガイド)の利用だ。
これら二つのチャンネルで、ビフォアデジタル世代にとってもアフターデジタル世代にとってもストレスの無いようにしていきたいと考えている。また、インターネットのシステム利用については、広報の充実等によりさらにその利用者数を増やしながら、アフターデジタル世代が“おくやみ窓口”に訪れる数はほどほどに抑えて、窓口で対応する職員にかかる人件費が増大しないように考えていきたい。
さらに、今まで各所で分散して受けていた死亡時の手続きに関する相談事や手続きはなるべく新たに設置する“おくやみ窓口”に集約するなど、より効率的な事務配分も実現していきたいと思っている。

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