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DX絡みで内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室が発行する“サービスデザイン実践ガイドブック”には、サービス設計の12箇条が次のとおり掲げられている。

第1条    利用者のニーズから出発する
第2条    事実を詳細に把握する
第3条    エンドツーエンドで考える
第4条    全ての関係者に気を配る
第5条    サービスはシンプルにする
第6条    デジタル技術を活用し、サービスの価値を高める
第7条    利用者の日常体験に溶け込む
第8条    自分で作りすぎない
第9条    オープンにサービスを作る
第10条 何度も繰り返す
第11条 一遍にやらず、一貫してやる
第12条 システムではなくサービスを作る

これらは、今さら“デザイン思考”とか“サービスデザイン”という言葉を持ち出すまでもなく、ほぼ今まで行政が施策や計画を作り出す際に踏まえてきたものばかりだ。
ただ、第3条にあるエンドツーエンドで考える。つまり、個々のサービス毎に切り取って考えるのではなく、サービスの開始から終わりまで、他の行政機関や民間の担い手を含めてサービスの提供を一貫として扱う必要があるということについては、なかなかその実現までたどり着けない。
社会福祉法に補完性の原理を基本とした地域福祉が位置付けられ、介護保険法や障害者総合支援法が生まれ、地域において民間の担い手による公のサービスが実施されるようになったことにより、自治体の総合振興計画の内容については、自治体が行う事業を掲載するだけでは物足りなくなり、総合振興計画にはある意味、地域計画の性質を帯びさせる必要が出てきた。
また、市民に提供する公のサービス情報についても、広く様々な担い手が提供する情報を網羅して提供する必要が出てきた。
このように、公のサービスは市民のニーズを視認するところから始まり、市民本位のサービス受給プロセスをエンドツーエンドで把握・構築する必要性が明確になってきた。
そして、“デジタル社会の実現に向けた重点計画”には、子育て、介護、引っ越し等、様々なワンストップサービスの一つとして“死亡・相続サービスワンストップサービス”の実現が謳われている。
しかしながら、この死亡・相続に関わる機関は、市町村や法務局、税務署、年金事務所、銀行等たいへん多くあり、これらの手続きを網羅してワンストップサービスを実現することはたいへん難しいだろうと思われた。
また、死後の手続きは前触れなく突然訪れ、手続きすべき本人は不在となる。さらに、故人や遺族の状況に応じて実施すべき手続きは全く異なる。
そのような分けで、国の取組としては、市町村に対して、市町村に係る手続きだけを一元化した“おくやみコーナー(窓口)”の設置を支援?するだけに留まっているように見える。
デジタル庁の死亡・相続ワンストップサービスのウエブページも、2021年3月を最後に更新されていない。
今、まさにこの縦割りの牙城を崩さないで何とするのかと思うのだ。

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