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市役所は在宅勤務の夢を見るか

市役所は在宅勤務の夢を見るか

もう10年ほど前の話ですが、私が子育て企画課長であった時に、次世代育成支援対策行動計画を推進する担当課長でもあり、ワーク・ライフ・バランスを推進する庁内の委員会の座長でもありました。
そのワーク・ライフ・バランスの委員会の中で、ほんの2~3人でもよいので、在宅勤務を試験的に運用してみないかという話になり、検討をしたのですが、当時の人事所管から勤怠管理の適正な運用が確保できないという意見が出て断念したことを思い出しました。
今でもこの“意見”が心配するような状況を変えることはたいへん難しい課題であると思っています。
コロナウイルスの関係で在宅勤務がクローズアップされたので、勤怠管理の運用の可否については脇に置いておきますが、頭の中で市役所の在宅勤務の可能性について少しだけ思いを巡らせてみました。
まず、区役所については、リアルな対面で市民への対応が求められている内は在宅勤務を考える隙間はほぼありませんが、住民異動や、それを起点にした保険・年金・福祉等に係る部署については、様々な規制がさらに緩むことで、窓口で行われる手続きがネット上で実現するならば、在宅勤務を考える以前に、リアルな窓口で対応する人員そのものが不要になってくるでしょう。
現在の銀行の窓口形態が良い例だと思います。
そして、さらにはPayPayなどの決済サービスが普及してしまえば、収納窓口も不要になってくるでしょう。
このような抜本的な合理化が行われない内は、リアルに人と接する区役所の窓口は、福祉的な業務と同様に、人と人とが直接対面することが避けられない“ヒューマンサービス”であり続けることになりそうです。
また、合理化がなされたとしても、市民と職員が直に接して相談に対応することにより、市民に安心感を醸成するような仕事は減ることはないかもしれません。
介護保険や障害福祉、さらには子育て関連、各種扶助等についても、相談を受けながら様々なサービスを組み合わせていくといった事務が必要となりますので、市民の悩み事を伺いながら、リアルに市民に直接寄り添う必要もあるのではないでしょうか。
その“寄り添う”ということ自体が市民に必要なサービスであるのだろうということです。
また、今現在様々な自治体で運営がなされているコールセンターの機能が、もう少し真摯な成長を見せてくれるならば、窓口代替手段の一つになる可能性もあるのかなと、それに期待したい気持ちもあることはあります。
窓口で働いていた職員が自宅でその業務のコールセンターのオペレーターとして携わるとすれば、それが窓口で対応する職員が在宅勤務化した形態と考えればしっくりします。
10年ほど前は、市民の各々においてウエブでマイページを作成して、そこで役所が得ている個人の税情報等も活用しながら、自分が受けるサービスを各々がシミュレーションしつつ、そこにコールセンター機能も付加するなんていうものもかつての情報化計画の検討のまな板にのっていましたね。
さて、それでは、窓口以外の、例えば本庁の企画部門等の業務はどうでしょう。
以下の記述はあくまで一般的な例示と思っていただきたいのですが、例えば、それらの窓口対応業務以外の業務については、大まかに言えば、首長や議会、そして市民を起点とした行政課題(ニーズ)を把握するところから始まります。
もちろん、これらの課題(ニーズ)をどのように在宅で職員が把握するのか、できるのかといったことも大きな課題ではありますが、その課題(ニーズ)を把握した後にどうするのかと言えば、その課題(ニーズ)を、事業を新たに起こしたり、事業を改善することによって解決していく分けですが、そのプロセスにはある程度の迅速さも求められます。
課題(ニーズ)を把握すると、その課題(ニーズ)を、どのような手法でどこの部署で対応していくのか、もしくは対応は不要なのか、組織内や首長や議員を含めて縦横無尽な調整と判断が行われるでしょう。
このように、在宅勤務を実現する場合は、在宅のまま、組織内の各部門間で迅速で緻密な連絡や意思決定を実現できるだけの情報連携をすることができるレベルのICT環境が必要となるでしょう。
それはただ単に事前に決まった時間に各所管課内の打合せ会議を行おうとすることとは全く異なるレベルにあります。随時に、まさにマルチなメディアを扱い可能とする高速な通信環境を利用することが必要です。
さらに言えば、行政の各施策は役所内だけで進んでいくわけでもありません。
その担い手には各自治会や社会福祉協議会、民生・児童委員、そして、様々な企業やNPO、指定管理者、社会福祉法人等もガバナンスの一翼を担っていますし、行政の施策推進過程に参画する皆さん、例えば、各〇〇審議会委員等の皆さんとも迅速な情報共有を行うことが必要となる場合もあります。これら、行政において一定の役割を日頃から担っている地域の皆さんをも含んだ、高速で迅速なICT環境の構築が必要であろうと考えますし、その環境を十二分に使いこなす職員や市民の能力も前提条件として確保する必要があります。
これらを踏まえますと、まあとりあえずは、5Gの活用に期待するところも大きいかなとも思う分けです。
個々の職員や担い手が紐づいた、要はサービスする面だけを整備するのではなく、サービスを担う側の裏機能もネット上に整備したバーチャル市役所(区役所)が欲しいかなと思うところです。
まあ、要はバーチャルなセカンドワールドをネット上に作るということかもしれません。
現状のリアルな世界のインフラをそのまま活用しようとするなら、もうサロゲートですね。😀
石黒浩先生にお願いするしかありません。😀

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