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DXを推進しつつ、それに応じた新たな市役所庁舎を構築しようとして、市民へのインターフェイスをどうするか悩んでいる自治体も少なくないと思う。
インターフェイスはリアルな窓口で良いのか、リモートを中心とするのか。
インターフェイスはリモートに対応できるように整理されれば、それは窓口対応でも使用することができるように思う。
このような市民に対応するインターフェイスをデザインするに当たっては、当たり前の話だが、今まで庁舎内に配置のあった個々の市民に対応する機能をそのままデジタル化するだけでは足らない。
まず、そこには人間中心起点のデザインアプローチが必要だ。
行政がただサービスを市民に提供するという立場で考えるのではなく、サービスの利用者である市民のニーズをどう取り込みつつ、サービスを受給する市民の立場にたって迅速で利便性の高いサービス提供手法を構築するために、もっと言えば行政と市民相互の総合的なインターフェイスをどのように考えていくのか。
もちろん、この折角のDX化の機会に、ガバナンスの一員である市民の方々、事業者の方々をどうサービス提供者として活躍してもらえるのか、そういったことも考えていく必要もあるだろう。
今まで自治体は窓口の機能をどう捉えてきたのか。
長岡市の“新しい市役所プラン”(平成20年3月)によれば、窓口の機能をこのように捉えている。
①    フロアマネージャー
②    総合案内コーナー(コンシェルジュ)
③    簡易相談コーナー
④    各種相談コーナー
⑤    証明書発行コーナー
⑥    申請・届出受付コーナー
⑦    収納・支払いコーナー
どこの市役所や区役所もこのような機能で窓口は構成されているのではないか。
このような機能の中でも、⑤の証明書発行コーナーや⑥の申請・届出コーナー”と称して、市民に対してなるべく一か所で(ワンフロア全体で、または一人で対応する等様々な形はあるけれど)対応しようとするのがいわゆる総合窓口(化)ということになる。
総務省の資料によると、総合窓口とは、“市民等からの各種申請等(戸籍・住民基本台帳業務・税証明・福祉業務等)に関する受付部署を複数部署から1部署に集約し、例外的なケースを除きワンストップで対応が完結する取組”とされる。
そして、この総合窓口化を念頭に置きながら、住民異動・戸籍届出、各種証明書発行、国民健康保険、介護保険等、別々の窓口で行っている事務手続きをワンストップ化する総合窓口の実施を念頭に業務フローを見直し、待ち時間の短縮等住民の利便性向上につなげることが必要であるとされる。
今後の窓口のDX化については、この総合窓口化の考え方を踏まえつつ、今までは上記の⑤証明書発行コーナーや⑥申請・届出受付コーナーの二つの機能の一体化が総合窓口化とされてきたが、これに加えて上記の①フロアマネージャー、②総合案内コーナー(コンシェルジュ)、③簡易相談コーナー、④各種相談コーナー、⑦収納・支払いコーナー等をどう一体的に加えつつ、リモートに対応したインターフェイスを構築してバックオフィスに繋げていくのかが重要になる。
それは、①から⑦までの各機能の各々をデジタル化すればよいというものでもなく、人間中心起点のデザインアプローチにより、サービス受給をゴールとする市民ニーズの把握からサービスの紹介・総合調整から提供、そして苦情対応、ペイメントまで一体的にデジタル化された“手続きの流れ”を十分意識した総合インターフェイスを作ることが必要になる。
よく自治体にある電子申請のポータルページを見てみると、そこには電子申請が一つ一つ羅列されている。
初めからどの申請を行おうとするのか、目途が付いている市民は、それを見るだけで、必要な申請を個々に選択して、その場でオンラインで自治体宛てに申請ができる。
しかしながら、普通は自分の状況によりどの申請を行えばよいのか、どの申請を取捨選択して申請することが適切なのかを、まず市民は見極めなければならないだろう。
ただ電子申請が一つ一つ羅列されているポータルページがあるだけでは、電子申請の前提として、必要な申請を見極めることは個々の市民に丸投げされてしまっているということになる。
これじゃどうにもならないだろう。
様々な制度への加入や給付等の申請は、収入にも家族形態にも左右される。
条件が様々な制度への加入や給付等の申請は、電子申請をする前にいったい誰に相談して見極めればいいんだ!ということになる。
そこで、電子申請の前にするべき“必要な申請の見極め”に対応する解決策としては、長岡市の窓口機能における①フロアマネージャー、②総合案内コーナー(コンシェルジュ)の機能をどうインターフェイスに組み込めばよいのか。
そこを考えることが肝になる。
ここのところ、国の主導で、福祉まるごと相談窓口や子ども家庭総合支援拠点、おくやみコーナーなど、申請以前の前裁きをコンシェルジュ的に行う窓口が増えてきた。
グラファー(株)は、質問形式で必要な手続きの目途をつけることができる“手続きガイド”や“お悩みハンドブック”をインターネット上で提供しているが、それらの質がさらに向上し、人間並みの優しさと臨機応変な対応と判断を身に着けてくれるならば、今後人間のコンシェルジュに替わるものになるだろう。
電子申請を行う前の適切な申請の選択こそ、電子申請の鍵なわけだ。
さて、人間中心視点のデザインアプローチだが、PRとかプロモーション、マーケティングのワードでカスタマージャーニーという言葉がある。これは、顧客が自分のニーズに基づいてサービスや製品と出会い、そこからサービスの受給や商品の購入に至るまでの“道筋”のことだが、庁舎の窓口やデジタル窓口の総合窓口化においても、しっかりと手続きを行ってサービスを得るまでの“道筋”に沿って、市民が難なく進んでいけるようにプロセスをデザインすることが必要だ。
このカスタマージャーニーの第1段階は、ペルソナの設定だ。
まずは行政サービスを欲する人の状況を見極めることが必要で、それは年齢や収入、世帯構成等々を踏まえて、どのような生活環境にあるのか。各々の健康状況等も含まれるだろう。
それを基本として第2段階としては、各々の人は何を欲しているのか。どんな不足を充足させたいのかを明確にする段階となる。
第3段階としては、個々の市民の状況や希望に対して、どのようなサービスを提供できるのかを洗い出すことになる。
このようなカスタマージャーニーをしっかりと経ないと、その人に適切なサービスを提供できない。
窓口の総合化、総合的なDX窓口の構築の考え方の肝は、単なる申請のデジタル化ではなくて、申請以前に市民個々のペルソナをどのように把握して、どのような個々に適切な申請を選択できるかにあると言ってよいだろう。





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