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ロックポートの地域福祉
ボストン郊外の風光明媚な海岸沿いの街、ロックポートの駅近くにあるダンキンドーナツの店にたまたま寄った。
店内は高齢のお客さんが多く、様々なおしゃべりに花を咲かせていた。
そこに小学校高学年ほどの子供が入店してくると、平日であったこともあり、おしゃべりをしていた高齢の方々がおしゃべりを中断して、「こんなところになぜいるの?」「学校はどうしたの?」と優しく声掛けを始めた。
この光景を見て、このようなファストフード店が、住民がお互いにケアをしあう地域福祉の拠点の一つとなることに気が付いた。
住民の地域活動への参加の程度や参画意識はたいへん低く(下記※資料を参照)、個々の生活に忙しい住民の参画意識を掘り起こして、その意識を高揚させるのはたいへん難しく思われる。
※資料:さいたま市の地域福祉に関する意識調査H24年3月から
〇自治会・町内会活動への参加程度
ほとんどあるいは全く参加しない 37.5%
あまり参加しない 27.8%
ある程度参加している 27.1%
よく参加している 6.6%
〇自治会・町内会活動に参画しない理由
他にやることがあって忙しい 42.0%
自分の趣味や余暇活動を優先させたい 21.9%
興味や関心がなく参加したいと思わない18.4%
かつてマクドナルドは“スマイル0円”というキャッチフレーズを掲げて、ホスピタリティ溢れる運営を宣伝していたが、現状では、アルバイト店員の教育が難しいのか、スタッフからは笑顔が消え、きめ細やかなカスタマーサービスが不十分であるように見受けられる。
その一方で、お客さんの年齢層は幅を広げ、子育て世代から中高大生、サラリーマンに加え、高齢者の来店が目立つようになり、高齢スタッフの採用も目立つようになってきた。
以上で見てきたように、住民の地域活動への参加の現状は十分ではなく、個々の住民の参画意識も薄いことから、日常生活にごく当たり前のように溶け込んだ、そこにでかけることが住民にとって必然であるような“地域福祉拠点”となりえる場所が必要であると考える。
そこで、期待するのが、ミスタードーナツやマクドナルドなど、幅広い世代の方々が訪れるファストフード店のホスピタリティを強化することによる“地域福祉ニーズの把握”と、“課題への対応(調整機能)の充実”である。
親しく来店したお客さんへの語り掛けを増やすことで、商品などのマーケティング機能も強化されるであろうし、そこで把握した地域福祉ニーズは、自店でその解決方策を考えるもよし、社会福祉協議会等に繋げてその解決を図ってもらうこともよいだろう。また、宅配業務が増えてくれば、その業務において安否確認を併せて実施いただくことへの期待もある。
そのためには、店員が傾聴する態度を養うような研修や、アウトバウンドで声掛けから課題把握を行えるような研修も必要になるであろう。特に高齢の店員はその豊富な経験から傾聴や的確なアドバイスを行い得る最適な人材ではないだろうか。また、そのような能力を持つボランティア店員を地域から招聘して店に配置しても構わない。
また、各店舗には日ごろから地域福祉協議会等と関係性を持つことも必要になろうが、企業の社会的責任の一環として、このように企業活動に公益性を帯びさせることによりお客さんの印象が良くなり、集客や収益が向上する可能性もあると考える。
これらを実現することにより、利用者が多世代に渡るファストフードの各店舗が、地域福祉を推進するような優しいソーシャル・インクリュージョン的な雰囲気を醸し出すことも地域にとっては重要である。
ファストフード店にはおそらく福祉的な課題を抱えるお客さんも、その課題に答えられるお客さんも、その双方が出入りしているはずであろうから、そのソーシャル・インクリュージョン的な雰囲気を踏まえて、ロックポートのダンキンドーナツの店のように、住民が相互にケアしあう地域福祉拠点になりえる可能性を本当にすごく感じている。
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