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一局集中から多極分散へ?

映画“翔んで埼玉”は、「首都圏にもこんなダメな地域があるんだ」と、地方の消滅自治体に住まう皆さんを安堵させる、言わば目くらましの映画だが、それこそ“とんでもなく”首都圏の集積威力はものすごい。
鉄道も道路も環状に整備された首都圏を各都道府県単位で揶揄することに意味は無い。
東京と埼玉の間に関所などあろうはずもない。
東京圏だけだとあまりにもの凄すぎるので、国土形成計画も、関東に、山梨、福島、新潟、長野、静岡を加えて首都圏広域計画として示す始末。
この計画にも記述があるように、“首都圏の総人口は約4,400万人。首都圏は、我が国の国土の約10%にあたる総面積約3.6万平方キロメートルに、全国の34%を占める人たちが暮らす。また、約3,600万人が 東京圏に集中している。”
“首都圏の域内総生産は約192兆円にのぼり、これは、全県の県内総生産の約4割を占める。また、農業算出額は全国の約5分の1、製造品出荷額は全国の約4分の1を占めている。 金融面では、東京証券取引所における株取引は国内株取引の97%を占めている。”
“世界4大都市圏(東京圏、ニューヨーク都市圏、ロンドン都市圏及びパリ都市圏)で比較しても、東京圏は人口及び域内総生産(GRP)の面で圧倒的な集積がある。”
この人口4,400万人という規模は、スペイン、ポーランド、イラク、アフガニスタン等の人口と同程度の規模だ。
オーストラリア、ベルギー、フィンランドなどはそりよりもはるかに少ない。
これがどれだけ大きく、地方都市など問題としない程度かというと、例えば消滅に最も近いと言われる秋田県の中でもその中心たる秋田圏域(秋田市、男鹿市、潟上市、五白目町、井川町、八郎潟町、大潟村)の人口を見てみると、それは40万人に過ぎない。そもそも秋田県の人口も90万人に過ぎない。
これだけ大都市圏と地方の圏域との差がある中で、そもそも首都圏のもの凄い集積も、言わば“国力のあるふりをする”ための目くらましである“でっかいコンパクトシティ”でありながら、例えば石丸伸二さんは“一局集中から多極分散へ“と言う。
しかし、大都市たる政令指定都市と中核市は、日本中で合わせて既に82市もあることから、一定の生活に要する政治・産業・学術文化機能を集積した、生活に事欠かないコンパクト機能は既に国内82市に分散整備されていると言うことができる。
これ以上何を首都圏からどこに分散しようとするのか。
これではコンパクトどころか無用に様々な機能が分散された国となり、その分散された機能を横断的に使うための交通の利便性さえも確保できなくなるだろう。
“一局集中から多極分散へ“などと聞くと、規模が比較的小さな圏域や自治体も消滅せずに残りそうなイメージを浮かべるが、これは欺瞞そのものだ。
地方の町が生きながらえるっていうのは、そういった大雑把な話ではないと思う。

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