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保健福祉サービスに関するニード把握について

保健福祉サービスに関するニード把握について
福祉行政の目的は変化してきた。
シビルミニマム的な「平均的で画一的なサービス供給」から「市民の個別幸福」を追求することが必要になった。
また、福祉行政の役割も変化してきた。
ただ単に画一的なサービスを提供するのではなく、市場を活用し、サービスの質と量の確保を目指すようになった。
そして、そのためには地域における地域の方々が主体となったサービスの供給、そのシステムを構築する必要が生じてきた。
それにより行政には、保健福祉市場の活性化に向けた経済政策的機能を発揮することが期待されるようになってきた。
そしてその市場をしっかりと動かすために、より具体的かつ個別的なサービスニード(供給が必要なサービスの質と量)の見極めが必要になった。
その必要なサービスを見極めた後は、そのサービス提供に適したサービス供給主体の存在の確認と誰がサービスを提供するのかといった調整を行い、それに基づいたサービス供給を実現するとともに、そのサービス活動をより活性化する施策や、サービス供給主体の継続的な発掘、育成が求められるようになった。
このような必要なサービスを見極めるためのニード把握をどのようにすればよいのだろう。
今までは、行政は市民アンケートといったものを実施してきた。しかし、これでは具体的なニード、個別的なニードは全く顕在化してこない。質問も一般的なものにせざるをえず、質問項目を個々の状況に応じて具体的に作成することは不可能であるからだ。また、現状把握やニード把握には国勢調査等の人口動態の把握が肝要だが、これらの数字ではなかなか地域の町丁目毎に数字が把握できず、身近で具体的なニードがやはり顕在化してこない。
また、福祉的な課題となると、民生委員や地区社会福祉協議会などの地域自治組織のニード把握が一つの手法として大切になるが、おそらくこれらの組織自体がニード把握という目的に関する意識が希薄で、組織としても科学的、効果的な活動は行われていないのではないか。
これらの現状を踏まえるならば、大雑把なアンケートや自治体レベルの人口動態だけを福祉行政の拠り所とするだけでなく、より多くの統計を駆使しながら、市民一人ひとりのニードを見極めるためのマーケティング手法を導入する必要があると考える。それにおいては、統計数値等からより多くの市民一人ひとりのニードを見極めることができるよう、例えば、地理的な条件(エリアの高低、水路の状況、人口密度、気候、犯罪発生状況等々)を把握する必要があるだろう。また、人口構成的な統計条件(年齢、性別、家族構成、収入状況、ライフスタイル等)も見極める必要があるだろう。
このような条件を整えるためには、サービスを実際に地域に供給する過程でのニード把握(民間サービス供給主体との連携が必要)や、総合相談的窓口や苦情相談等の設置によるニード把握、そして、これらのニード情報の集約とデータベース化を行うことによる分析、さらには、地域コミュニティの再構築とその最適化によるニード把握の実現(地域健康福祉連絡会の適正運営、地域福祉行動計画の適正な策定等)が求められる。
現状では、これら市民のニードを把握する機能・体制が十分に整備されておらず、的確な市民ニードに対応した施策が企画、実施できていないのが現状である。
これらの考え方は福祉のみならず、行政各分野全般の課題であり、行政は、真摯にその実現を図ること、そしてそれによりEBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)の推進に向けて取り組んでいく姿勢が必要である。EBPMの始点は常にニードの把握であり、その取り組みのエンジンを回していくためには、地域におけるCRM的な考え方の徹底が必要であろうと思う。

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