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政令指定都市である浜松市で現状の7区が3区に再編されるらしい。
区割りをする時のスタンダードとしては、各区間の人口比を同程度にするというものがよくあるのだろうけれど、この再編案の資料を見ると、人口比が8対1.5対0.5という極端なアンバランスの再編案となっている。
もう現状の政令指定都市の形ではいたくないんだけれど、政令指定都市には法で区の設置が義務づけられているからしかたなく区を残したという風にも見える。
浜松市は静岡型特別自治市という、都道府県の権限の全てを委譲されるとする都市の形を目指しているので、今まで政令指定都市で言われてきたような“市民に身近な役所でなるべく多くの手続きを”というような考え方を基に区へ事務権限の委譲を進めてしまうと、都道府県の権限をしっかりと受けるべき市役所〔本庁〕の力が薄められてしまってということにもなる。
経済が上向かず、人口の減少が進む状況の中で、市役所〔本庁〕にも区役所にも十分な人員配置と十分なサービス提供能力を確保するということも無理なことは理解できるので、まずはゼロから何が効率的な行政組織の在り方なのかを検討した上で、とりあえず区というものを形だけ残したという風にも見える。
ただ、浜松市は区と区役所を無くしても、そこには新たに行政センターを置いて、区割り変更前と同程度のサービスを提供するのだと言う。
また、特にDXが推進される中で、何が何でも物理的に区役所が市民に物理的に身近な場所に無ければならないということでもない時代でもあろうと思う。
浜松市はDX先進都市なので、デジタルファースト宣言を行い、行政手続きのオンライン化やキャッシュレスの推進、マイナンバーカードの取得促進とマイナンバーカードを活用した行政サービスの拡充を浜松市デジタル・スマートシティ構想に掲げているほどなので。
行政区の再編を協議している浜松市議会の行財政改革・大都市制度調査特別委員会での審議資料を見ても、令和 2(2020)年 10 月に策定した「市民の利便性向上に向けた行政手続等のオンライン化の推進方針」の視点や進め方に従い、令和 4(2022)年度末までを強化期間としてオンライン化を集中的に推進するとある。
まあ本当のところ、行政サービスの効率化ということが自治体や地域が生き延びるための第一の課題だとするならば、最初からがちがちな自治体制度に何がなんでもあてはめるということは、効率化にはほど遠いものとなってしまい、理に適うものではないだろう。
地域や自治体の状況によって、様々な自治体の形があってしかるべきと思う。
もう何が何でも政令指定都市にといった時代は終わったのだろう。
さらには、この区割り変更が、合併前の旧浜松市が、政令指定都市化により安易に人口按分で小さな区に細分化された状況を旧浜松市の大きな形に戻すための統合、再編に見えてしまうのも面白い。
旧浜松市が政令指定都市になって細かく区に細分化されてしまうことで、旧市で培われたコミュニティや文化が断裂し、さらに新たな区単位でコミュニティや文化を育むことがいかに難しいかということは、旧浦和市や旧大宮市が政令指定都市となることで各々4つに分断されたさいたま市の例をとっても納得できるし、これはまさに旧浜松市の復活劇だなあと思う。
いずれにしても、経済状況がどんどん悪くなり、人口がどんどん減る状況で、現状の政令指定都市制度は既に制度としては時代にそぐわない欠缺のあるものとなったと捉えざるを得ないと思う。
こういった浜松市の再編は“アリ”だろうと思う。
ただ、区役所というものは行政サービスを提供する拠点というだけでなく、さいたま市や横浜市では、総合行政に関する規則が設けられ、区は街づくりの拠点であり、住民ニーズの施策への反映の拠点でもあるとそこには記されている。
特に今回の新たな区割りは、区役所は街づくりの拠点であったり住民ニーズの施策への反映の拠点であるといった観点からは検証されていないんだろうなあと思ったりもする。
そして、もちろん浜松市にも同様の規則があって、区は住民自治の拠点であること、地域のまちづくりの拠点であることが記されているのだけれど。
そういった観点から見れば、人口を区割りのスタンダードとすることにもそれなりの意味があるものだと思うのだけれど。
もっとうがった見方をすれば、区の区域は県会議員と市議会議員の選挙区でもあるので、それが小選挙区から大選挙区になるわけで、それで誰が得するのかということもある。

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