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日米の最高裁判所の比較

日米の最高裁判所の比較
田中和夫先生 要約

・最高裁裁判官の人選について重大なことは、15名のうち何名は裁判官からというような枠が事実上設けられているということである。
※裁判官6名、弁護士4名(東京弁護士会1、第一東京弁護士会1、第二東京弁護士会1、その他大阪等の弁護士会1)、その他5名(検察官2、教授1~2、外交官や内閣法制局長官等0~2)

・こういう枠が決まっていると、裁判官出身の人が定年近くなると最高裁で後任候補の人選をするとか、検察官出身の裁判官が定年近くなると、法務省事務当局と検察官出身の裁判官とで相談して後任者の人選をするというようなことが実際に行われているようである。(各弁護士会でも同様)

・細かい枠の中でこういう方法で人選して、果たして常に最良の人物を集めることができるであろうか。さらに枠を決めて人選すると、選ばれるのはどうしても上位の者、年配者ということになる。

・裁判所法75条2項後段は、下級裁判所については「評議の経過並びに各裁判官の意見及びその多少の数については、この法律に特別の定がない限り、秘密を守らなければならない」と規定している。そしてその特別の定として、同法11条が最高裁について、「裁判書には、各裁判官の意見を表示しなければならない、」と定めている。
(そういった最高裁でさえ、)わが国の最高裁判所の裁判書は、アメリカの連邦最高裁判所と比較すれば、すべてがper curiam=by the courtの裁判書であるということになる。

・アメリカの意見判決訴訟については、州務長官や選挙関係の公務員を被告として、現行の区割規定が連邦憲法違反でることを宣言し、かつ次期議員の選挙をその違憲の規定によって施行することを禁止する、或は、次期議員の選挙を州全域を一選挙区として施行するか、もしくは国勢調査の結果を数学的に適用して定めた各選挙区から選出する方法によって施行することを命ずる(BAKER事件)等の判決を求めるというような請求の趣旨の訴を提起するのである。

・裁判所がどこまで我慢するかはその時の事情による。何年何月までに新たな合憲と判断しうる区割法を制定すべし・・・その時期を経過すれば裁判所が自ら区割法を制定する・・・と命ずることがある。

・田中二郎氏は、「行政に関する行政庁の第一次的判断権は、行政権のために留保されなければならない」と強く主張されている。

・それが我が国の通説であると思うが、アメリカでは大いに異なっている。連邦裁判所はそのような場合に衡平法の原理という言葉を使っている。

・衡平法(equity)は、コモンロー(従来の法)が権利として認めていない利益についても、国民が法律上の保護を与えるべきだと考えるようになってきたことから、大法官が請願に基づき当該事件の具体的事情によって例外的に保護を与えたことに始まる。
衡平法の原理とは、「衡平法は、権利を救済なしに放置しておこない」「衡平法は不正を救済無しにそのままにしておかない」。
Equity suffers not a right without a remedy.Equity will not suffer a wrong without a remedy.

・衡平法の原理によって行動するとしても、裁判所が立法部の行動に干渉できるとするのは、三権分立の原理に反するのではないかとの疑問が生じるであろう。しかし、三権分立といっても、その具体的内容は国によって異なる。英米における法の支配の原理によれば、何が法であるかを最終的に決定し、法に適合するように救済を与えるのが司法権限であり、アメリカにおいては立法部であっても法に支配されるのであり、アメリカはそういう強い意味における司法国家なのである。

・最高裁判所は憲法・法律の有権的解釈権をもっているのであるから、その裁判官の多数の考え如何によって憲法・法律の内容が実質的に現実に変わっていくことを否定することはできない。それ故に最高裁判所裁判官に誰を選任するかは、極めて重大は事項である。

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