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昔ブログに書いた記事です。
これを改めて読んでみると、自分のワントゥワンへのこだわりが、プロモーションに少しの違和感を感じさせているのではないかと思ったりします。
一人ひとりを幸福に導きたいのに、プロモーションには少し投機的な匂いがするようです。
一人ひとりの顔も見えにくいし。
実(事業の質)で人を納得させるのではなく、クリエイティブで、しかも確率的に人に訴求しようとする。
少しプロモーションを悪く言い過ぎたかな。☺
でも、主役たる人が不確実性に埋もれてしまっていいものかどうか、やはり考えたくなってしまいます。
行政のマーケティング、宣伝ってのは、このように確実に利益を一人ひとりに運ぶものであって欲しいと思ったり。

CRMって何?

テレビチャンピオンというテレビ番組がありました。(今もあるか?)皆さん御存知のことと思いますが、お菓子づくりとかアニメーションとか、いろいろな分野の実力者が出演して、各々の知識や技術を競い合うといった番組です。最近はこれに良く似た企画番組もたくさん放映されているので、この番組かどうかは定かではありませんが、街角で魚屋さんがその売上を競い合うといった番組を見たことがあります。これを見ていて、実はほんとうに感心したのです。
なぜなら、いわゆる『ワントゥワン(one to one)』マーケティングが完成された代表例を見ているように感じたからです。それはもう驚きました。道行く人に声をかけて足を止めさせて、お客さんの個々の状況を巧みに聞き出して、その状況にあった商品を薦めるのです。足を止めるというのは、その人の関心を引き付けて興味を持たせるということです。アイドマの法則という購買決定の法則がありますが、これは、そこで言うアテンション(attention)ですね。そしてお客さんの状況にあった商品を勧めるというのは、いわゆるレコメンド
(recommend)といわれる行動です。
お客さんに合った商品を勧める(推奨する)といった意味です。例えばこんな感じです。『さあ、どうだ。今日入ったばかりのマグロだ。新鮮だよ。』と、新鮮さを武器にお客さんの足を止めます。または、『さあ、残り2個だ。』と、希少性を訴えかけます。また、『さあタイムザービスだよ。』と、時間限定の徳の存在を投げかけます。その日がとても寒い日なら、『寒いねえ。どう、こんな日はタラの鍋はどう?』とか。その日に町内で小学校の入学式があるならば、『今日はめでたいね。御頭付でいきましょう。』等々、こんな風に巧みにお客さんの足を止めています。足が止まったら止まったで、巧みに家庭構成を聞いたかと思うと、家族の人数に合わせて、3つで500円だけど、それならもう一匹付けちゃうよ。』とか言ってみたりします。さあ、足を止めたけれども、どうにも決めかねているお客さんもいます。そんな時はどうするのかと言うと、『どう、この白身でシチューにしてごらんよ。甘塩だし、うまいよ。ワインの新酒も出たところだし。』なんて、調理やお酒のアドバイスまでしてしまうのです。
これって、いわゆる商品の『附加情報』っていうものです。さらに、魚屋さんのすごいところは、最近はあまり都心では聞かないかもしれませんが、御用聞きまでしてしまいますよね。これって、ニードの掘り起こしです。魚屋さんまで出向くほどのニード(要求)は無くても、魚屋さんが自宅近くに来れば買ってしまうってことはあります。隣に住んでいる人と魚屋さんのトラックでばったり会った時など、見栄をはって1匹余計に買ってしまったりします。こういったことをテレビで見ていて、ほんとうに感心したわけです。
さて、今までの話で何が言いたいのかといえばですね。つまり魚屋さんで買物をするお客さん方は、とても満足してお帰りになるだろうということです。もちろん商品自体が美味しいということは条件になりますが。それでは、なぜお客さんは満足するのでしょうか。これを一言で言えば、自分というものに興味を持ってくれて、こちらの状況を理解しようと声をかけてくれ、実際に要望に合った商品と、さらに生活を豊かに充実させることのできる附加情報、つまりここでは調理の仕方や酒の選択まで教えてくれた。そういうことなのです。そして、お客さんを多くの集団の中の単なる一人としてとらえずに、その人そのものとして丁重に扱ってくれたということ。これがいわゆるワントゥワンマーケティング(one to one marketing)なんです。
皆さんは市民の満足とは何だと思われますか?市民の満足とは、幸福感を感じながら生き生きと生活できること。そして、自己の実現と、自己の能力による社会への貢献によってもたらされるある種の、他から認められることによる感慨ではないかと思うのですが、日々の暮らしの中で個人の満足度を上げるには、その時々において、やはり一人一人が満たして欲しいと思う要求に、(しかも、その要求は市民が自覚していない潜在的なものであることもあると思いますが、)的確に応えてあげるということだと思うのです。
幸福が、幸福感が個人個人別々に感じるものであるならば、市民サービスも個別対応であるべきでしょう? ですから、これからの行政サービスは、ワントゥワンの発想で行なわれなければならないと思うのです。
さて、この魚屋さんの行動の中で実践されているのが、(つまり、ワントゥワンで対応するために実践されているのが、)CRMと言われるものです。CRMとは何かと言えば、その家族の状況について、例えば家族構成(高齢の方がいるのか、乳児がいるのか等々)や、今日はめでたい日なのか、悲しい日なのか等々----お客さんのいろいろな情報を聞き出し、それらを元に、最適なサービス、商品を選択し、それを与えるプロセス(過程)のことを言うのです。CRMとはコンシューマーリレーションシップマネージメント(消費者との関係を良好に保つこと)のことです。
これを行政においてはシティズンリレーションシップマネージメント(市民との関係を良好に保つこと)と言い換えて使っていましたが。最近はあまり聞きませんけど・・・。システム的には、個々の情報をデータベースに蓄えて、その個々のデータに照らし合わせて、最適なサービスを市民に提供しようとするわけです。理想的には、蓄積したデータから判断して、『この度あなたは○○サービスを受給できるようになりましたので、申請をしてください。』なんて、いわゆるレコメンドサービスでしょうか。そんなことも可能になるわけです。
実は、このCRMこそ、市民の要求と役所の狭間に脈々と流れる深い谷川を渡す頑丈な橋の役目をするものであろうと思うのです。皆さんは役所で嫌な思いをした経験を、誰でも最低1度はお持ちと思います。たらい廻しや2度手間といったものですね。時には3度手間、4度手間の経験をした方もいらっしゃるでしょう。それらは、行政サービスの受給条件の複雑さから来るものがとても多いと思われます。収入や家族構成等々、状況によって受けることのできるサービスの種類や量が違ってくるのですから。また、状況によって申請書も何種類もあったり、記載する内容も違ったりします。いろいろとサービスの申請を行なう時に、自分のことをくどくど聞かれるのは、そのためですが、これはほんとうに嫌なものです。自分の収入額なんて聞かれても、誰も自分の収入なんて覚えていないものですしね。でも、役所は最適なサービスを供給するため、それらを聞かなければいけないし、市民はそれらの正確な情報を結局提供しなければ最適なサービスを得られないのは事実です。それらの、役所の窓口における、なんともやりきれない市民の不満の原因を無くすことができるのがCRMの確立であると言って良いと思います。すばやく市民の状況についてデータベースから取りだし、最適なサービスが迅速に提供できるようになるわけです。
しかしながら、CRMの構築には実は大きな課題があります。それは個人情報の蓄積に係る市民の方の抵抗感と法の壁です。これをどう払拭していくのか。果たして払拭することができるか否かが大きな課題、壁であると言っても良いでしょう。皆さん御承知のとおり、民間のテレビ番組や雑誌の懸賞、アンケートの募集等は全て個人情報の収集が目的です。私たちは、それらに対してはとても気軽に対応しています。もちろん個人情報が悪用されれば怖いのですが、それらの情報によって、欲しいと思った商品が載っているダイレクトメールが届いたりするのです。個人情報というのは、その蓄積が悪なのではありません、あくまで不正に使用するといったことが悪なのです。かつて、役所にインターネットを轢こうとする時に、不正な浸入等があると危険なので、インターネットの導入は中止した方が良いといった、上司からの意見があった時代もありました。しかし、世の中は、生善説で動いているのではないでしょうか。そして、もしもの時に対応する危機管理体制の有無を問えば良いのです。犯罪も、それが実行される前に、犯しそうな人を捕まえるなんていうことはしませんよね。当たり前です。日頃我々が利用している電車も、人が線路に石を置くなんて考えたら利用できません。車だって、飛行機だって、ただ外出することだって、何か事件が起こるかもしれない!なんて考えたら怖くてできなくなってしまいます。我々にできることは、臆病になって行動を止めることではなく、最善の努力を払って、事が怒ることを防ぎ、起こってしまった場合には、最善の努力を持って回復に努めるということではないでしょうか。人間の営みとは、そういうものではないでしょうか。

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