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事務事業評価と計画進行管理

今から約17年前、合併間もないさいたま市は、既に導入済であった行政評価(事務事業評価)に、総合振興計画よりも一足早く完成した保健福祉総合計画に関する計画(事業)の進行管理を加えて、それらを一体的に推進しようとするモデル事業を実施した。
このようなモデル事業は、まだ当時、行政評価と計画(事業)の進行管理が一体的に実施されている例は他に無く、たいへん先進的な取組であった。
下記はそのモデル事業の分析資料「事務事業評価と計画振興管理―行政経営システムの構築を目指してー」から抜粋した目次と、その内の項目1 事務事業評価の背景、項目2 事務事業評価と計画の振興管理 の部分である。
当時の当該モデル事業に関する考え方や意気込みが伝わってくるので、今後に生かす意味で、この抜粋部分を振り返りながら、今後の在るべきEBPMについて考えてみたいと思う。

事務事業評価と計画進行管理
行政経営システムの構築を目指して
平成 17年5月

1 目 次

1 事務事業評価の背景
2 事務事業評価と計画の進行管理
3 事務事業評価の課題と検証
(1)課題一覧
(2)検証
課題①評価と計画進行管理の方法
課題②政策評価
課題③計画のあり方
課題④行政経営システム
課題⑤市民への対応
課題⑥評価と計画進行管理の進め方
《資料》
(1)テキストマイニング
(2)ABC 分析
(3)バランススコアカード
(4)用語解説
《参照文献》

1 事務事業評価の背景
さいたま市の保健福祉総合計画の「まえがき」には、このような記述があります。
『様々な期待と不安をもって迎えた21世紀も3年目を迎え、少子・高齢化の進展や経済の後退、環境問題の深刻化、国際情勢の危惧など、私たちを取り巻く社会状況は、刻々と複雑にその様相を変えております。このような変化を止めることのない社会の中で、保健・福祉の分野についても大きな転換が進んでいると言えましょう。・・・・・・今後は、行政はもとより、市民の方々や関係団体などとの連携により、全ての市民一人ひとりが、生活の場である地域において充実した人生を送ることができるよう、また、より効果的で効率的な保健福祉サービスが総合的に展開されるよう、本計画の推進に鋭意努力してまいります。』
このように、保健福祉分野に限らず、少子・高齢化や住民ニーズの多様化など、行政需要が拡大している中で、行政は限られた資源を効果、効率的に活用していかなければなりません。
具体的には、市民ニーズに沿った事業計画を定めて、事務事業評価の結果を検証し、それを次のあるべき施策へとつなぐPDCA サイクルのプロセスを確立することが必要とされています。
日本では、三重県が先陣を切って事務事業評価を導入し、今日まで諸課題を含みつつも、様々な自治体で、いわゆるニューパブリックマネジメントの一環として、様々な事務事業評価手法が試されてきており、現在では政令指定都市13市の全てで導入されるに至っています。
また、2004年11月の三菱総合研究所の地方自治体における行政評価への取り組みに関する実態調査結果によりますと、都道府県では導入済み(試行を含む)が97.9%、市・区では73.0%となっており、国においても2001年1月より各省単位で評価が開始されています。
事務事業評価の基本的な目的は、受益と負担の関係を明らかにし、アウトプット指標を元に、最小の経費で最大の効果を上げるための行政経営の在り方を求めることにあります。しかしながら、その効果は、地方分権に対応するべく、自治体職員の啓発と人材育成に資するとともに、住民主体の行政運営を実現することの手始めとして、自治体が実施する事業に関する説明責任(アカウンタビリティ)を確保するものでもあります。

2 事務事業評価と計画の進行管理
本来、事務事業評価の目指すところは、『政策・施策や事務事業について、計画を立てて実行し、その成果を評価して次の計画に反映させるというマネジメント・サイクルを確立すること。』であると思います。しかしながら、我が国で実施されている行政評価は、先進的な数市を除いて、マネジメントサイクルの実現には未だ届かず、単なる事務事業の効果・効率性の評価に留まっているところが多いのではないでしょうか。
事務事業評価を単に、事務事業実施の効率性の確保やアウトプットの改善、効果(アウトカム)の確認に留めず、自治体の戦略的なシステムとして捉えるならば、もっと大きな単位(施策単位)で、目的意識を明確にして評価を加える、すなわち施策(政策)レベルにおける各事業の意味づけを行い、各施策(目的)毎に従来の事務事業の効果を見極めるとともに、ニードに対する事務事業の対応不足についても検証を加える必要があります。
そして、そのような政策的意義の強い、事務事業評価の実施・行政経営システムの導入をするには、総合振興計画の元で、基本計画、実施計画や各分野別計画が整備され、全ての事務事業が、その体系に沿って整理がなされていなければなりません。
そんな当たり前のことが、なぜか今まで実現してはいませんでした。
なぜかと言えば、事業実施の鍵を握ってきたのが、計画や事務事業評価ではなく、単年度毎に査定される予算要求の過程であったからでしょう。
それにおいては、具体的な目的意識がなかなか明確にならず、単年度における財源の分配といった意識によって事業の選択が行なわれ、また、総合振興計画等の進行を管理するといった意識も薄かったためと思われます。
既に先進的な自治体においては、施策の目的をしっかりと捕らえた事務事業の優先順位付け、それに基づく予算配分、そして事務事業実施後は、事務事業評価のみならず、市民の評価や意向を踏まえて次年度以降の事務事業の改善や計画の見直しにつなげる、いわゆる行政経営システム(PDCA サイクル)を実現しているところもあります。
今後、各自治体では、このようなPDCAサイクルを現実のものとすることに加え、人的資源運用の観点や、日々の継続的なプロジェクト管理の観点等、様々な視点を加えながら、多様な評価・計画の進行管理手法が試行され、発展していくことと思われます。

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