行政評価はなかなか難しいものである。まず自治体職員にとって、評価表を書くこと自体ほんとうに難しい。とにかく、最初につまずいてしまうのが、指標の設定である。何をもって、どんな数値をもって事業の効果や進捗度を判断するのかということであるが、指標を明らかにするためには、当然各事業の目的、目標を明確にしなければならない。これが、また辛いことである。どの自治体でも総合振興計画があり、そこに記載される目標に沿って本来各事業は展開されている建前にはなっているが、行政評価と事業目標の関連が謳われるまで、つまり行政評価が行政経営システムの一部分であるといった認識がされる以前は、各事業の目標(計画)妥当性について厳密に検討されていなかったと思う。どちらかと言えば、行政評価は、事業の効率性の判断に重きが置かれ、事業費の削減に資する道具であったと言って良いと思う。そのような観点ならば、指標についても、いわゆる活動指標といったもの。つまりアウトプットの質と量を測る指標を気にかけていれば良かったのだ。しかし、目標(計画)妥当性をしっかりと判断していこうということになると、実際の効果を判断することのできる、いわゆる成果指標が必要になってくる。現在では、多くの自治体で、行政評価を導入する時点で、行政経営的視点から、以上のような事業と目標を関連づける作業が必要とされているわけだが、具体的な評価を行なう以前に、既にこの段階で担当は頭を抱えてしまう。なかなかどの事業も、一目見て、どんな目標を持った事業か、その効果を計る指標は何か・・・を見極めることはとても難しいのだ。活動指標ならば、皆直ぐ設定できるのだが・・・・・。また、じっくりと各事業について検討を行なっていると、目標や期待される効果が、どうしても明らかにならないもの、また、期待される効果が明らかになっても、その効果自体が、実は既に不要となってしまっている場合さえ出てくるであろう。そんな時に、職員が、この事業はとうに不要になっていましたと、評価表で明言することは、これまた難しい。評価するのは、今までその事業を是として実施してきた担当者であるというのは、行政評価の本質的な問題である。さらに、目標が明確でない事業も、過去の事業開始時点の事情を問えば、政治的な見地から生み出されたものもあるであろうし、目標が明確でない事業を即刻廃止することになると、絶妙な事業バランスが崩れるといった場合も出てくるであろう。行政評価を実施する際、目標.目的に沿った効果的な事業展開を実現することは大きな目標ではあるが、そう簡単に実現できることではない。まず計画ありきで、事業を展開してこなかった付けが回ってきてしまっている。本来、行政評価は、実施されている事業に大鉈を振るうものであるが、様々な課題を含みながらも、とにかく実施すること自体に意義があるとも言って良い。行政評価から、職員は事業の目標や成果の大切さを学び、問題点を抽出することを学ぶ。時間はかかるであろうが、毎年の実施を重ねる度、各自治体の行政経営システムと職員の質は間違いなくアップするであろう。さて、各評価表には、各事業の問題点を記入する。そして、その問題点を解決する策を記入することになっている。これもまた、なかなか難しいが、問題点を見つけ出し、それを解決する施策を生み出す行為は、まさに「企画」である。行政評価は、それ自体に当然に次の段階へ事業を展開するための「企画作業」を内包していると言える。しかしながら、この問題点や解決策に係る評価表への記載内容もまだまだ不十分なものが多い。まず、問題把握については、上辺に表れた状態(結果)についての記述が多く、その表出した状態を作り出している真の原因を探求したものは少ない。この真の原因が追求されないと、次の適当な手当てが企画できない。原因がきちんと押さえられたとしても、具体的な手当ての「策」が導かれないまま消化不良になってしまうと、「~を改善する必要がある。」とか、「啓発的な事業の実施を行う。」など、非常に具体性を欠く浅薄な「策」の記載に終始してしまうことになる。このように、行政評価の正にこの部分で、しっかりとした問題点の把握と、次の段階に向けた企画をしっかりとやらなければ、具体的に行政評価が、施策の改善、新規事業の展開、予算要求や計画の改善に有効に結びつくことは無い。そのためには、担当職員の各々が企画力をしっかりと身につけて、行政評価を実のあるものに、具体的に次の展開を示すものへと変えていく努力が必要である。企画は、企画部や企画課の仕事では無い。行政評価が取り入れられた段階で、明確に事業原課の責任となったはずである。従来の企画担当は、企画というよりは政策担当となり、各事業を横断的に評価した時の問題点の把握や改革、そして、新たな価値の創出と、その価値実現に向けた新たな施策の創出を担っていくことになろう。(2004年9月松井雅之)

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