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各政令指定都市(浜松市を除く)の区長の裁量で予算要求なり、予算執行なりを行う予算額について、各市の令和3年度予算に関する資料をウエブで見ながらまとめてみた。区長の裁量という意味では、市から各区に委譲されている区長権限の大小が比較できるのかなと思う。
なお、区には区長の権限で獲得した予算以外でも、市役所(本庁)各局から再配当されているものもあると思われるので、ここに示した額だけでは区の事務量の推定は難しい。
ただ、区民のニーズを捉えながら区独自の事業を組み立てうる権限の大小について推量はできるのかなと思う。
まず、市全体予算の内、区長裁量予算の占める割合を見ると、多い順で並べると、大阪市の1.4984%、横浜市の0.6675%、さいたま市の0.2652%、新潟市の0.2147%と続く。
次に、各市の1区当たりの区長裁量予算額を見てみよう。
多い順で並べると、大阪市が11億4千万円、横浜市が7億4千万円、さいたま市が1億6千万円、新潟市が1億3百万円と続く。
いずれにしても、大阪市の区長裁量予算の多さが際立つ。
歴史のある旧六大都市の中でも区長裁量予算がそう多くないところもあり、また、近年政令指定都市に昇格した比較的人口規模が小さい都市はおしなべて区長裁量予算が少ないことから、それら人口規模の少ない都市は、元々区長権限の少ない小区役所制をほぼ取っていると言ってしまってよいと思う。
そのような中で、大阪市の区長裁量予算の多さがとにかく目に付く。
大阪市はシティマネージャー制を取っているためと思われる。
大阪市は比較的狭隘な市域(政令指定都市で4番目)に多数の区(政令指定都市で最多)を抱えている状況の中で、区役所の事務分掌が限定的であるとともに、区内で執行される事業の所管が市の各局である部分も多く、組織(区と局)を横断的に、区内の事業を区長が総合調整することの難しさがあることを素直に認め、区内で局が実施する事業について、ただ区に権限移譲を求めることが“スケールメリット(規模の利点)”を失して非効率であるという難しさを認識した上で、それを解決すべく従来の区長を、市の各局長の上位に置くシティマネージャーを兼務させた。
これにより、各区内において基礎自治に関する施策や事業の決定・展開を行う権限を区長が得ることとなり、区長の区内における総合行政推進機能(調整機能)が活性化されることとなった。
その結果、新たなシティマネージャー制度における区長が、横断的な総合調整を行った結果、区と局の事業のメリハリが効いて、区長裁量の区のための予算(局予算)が増えたのではないだろうか。
従来の政令指定都市制度において、区長に対して、“局事業を含めた、市民のニーズに即した事業を行うための総合行政推進機能”を期待しながら、なかなかその機能の発揮、総合調整の実現がどの政令指定都市でも図られなかったが、シティマネージャー制度を導入することでそれを実現した大阪市には感心する。
最初から区長権限を小さく見積もった小区役所制の運用では、市民ニーズを敏感に感じることができるであろう市民にたいへん近い区として、局を相手に遺憾なく総合行政を推進(調整)するということができないだろう。区長のその権限の無さから、区役所はただの出張所と化す可能性が高い。

※大阪市の区長裁量予算約280億円の内訳は、シティ・マネージャー自由経費予算として約170億円、区長自由経費予算約110億円の合計になります。シティ・マネージャー自由経費予算は、シティ・マネージャーの指示のもとに局が動く仕組みとしていますので区の予算ではありませんが、区長裁量の区のための予算ということになります。この場合における局の事業予算をシティ•マネージャー自由経費といい、各区役所の事業予算として計上される区長自由経費とあわせて、区長(シティマネージャー)が自らの権限と責任で実施する区政運営のための予算となっています。

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