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「週刊プラグインレビュー」Variety Of Sound / BootEQ mkIV

外に出るのも危険な日々が続いておりますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
水分補給ってレベルじゃねぇ~ぞ!という猛暑が続いておりますが、まだ8月すら迎えていないという事実にただ恐ろしさを感じるばかりであります。

さて、今月は・・・といいますか、ありがたいことに、先月からずっと繁忙期を迎えておりまして、日々スタジオに拘束されながら、このタイミングで引っ越しを行いました。
さらに、部屋の音響的な響きで、容積の広い音を実現するアコースティックグッズの開発、販売へ向けてのロードマップを無理やり押し進める・・といった一か月でありました。

そこに加えて、今月のプラグインは不作。
もしかしたら記事の更新が来月にはみ出る可能性がございます。
あらかじめ、お詫びさせていただきます。

そんな中で、レビューを募集したところ、古参なら必ず知っている名作プラグインメーカー「VOS」ことVariety Of Soundの名前がありました。
昔から筋の良いメーカーではありますが、これが久々にホームページを見てみると、精力的にバージョンアップを重ねている状況でして。
試してみたところ、無料なのに学びが深い!ということでご紹介していきたいと思います。

それでは、今月もやっていきます!
プラグインレビュー!!

BootEQ mkIVとは?

実際にはリクエストをいただいていたのはBootEQ mkIVではなく、Densityだったのですが、思わずその職人性に唸ってしまったので、こちらをレビューすることにさせていただいた。

まず、VOSというメーカーについて簡単に説明をしておきたい。
VOSは老舗で無料のプラグインをリリースし続けてくれているベンダーのひとつで、まだプラグインが32ビット動作だった時代にはテープシミュレーターや歪系の定番プラグインとして名を馳せたメーカーだ。

その後、本格的にプラットフォームが64ビット動作に移行。
しばらく更新が止まったのちに、2023年から64ビット対応版をリリース、そして新作も精力的に出し始めた。

なかでも、このBootEQ mkIVは、6月にリリースされたばかりの最新作。

「果たして、ベテランの意地は現代に通じるのか?」
そんな問いを持ちつつ試してみた次第だ。

なお、VOSは大変残念ながら、VSTのみだ。
AAXもAUもない。なので、プラグインラッパーを経由しないとMac勢は使いにくい旨、予めお伝えしておきたい。

機能面

BootEQ mkIVは以下の二つのセクションに分かれている。

・二つのモードをもつパラメトリックEQセクション
・真空管とVintage/Modernモードをもつプリアンプセクション

もはや見ればわかるレベルのGUIではあるが、説明書を読み解きつつ解説をしていこう。

EQモジュール

・HFについて
Qでスロープを変更する。
反時計周りにまわせば中域に影響をするし、時計回りに回せばエアーを追加する。
10kHz周辺を+-12dBの可変幅で変更する。
また、「Ⅰ」「Ⅱ」のスイッチでそれぞれ別のカーブを描く。

説明書より
「Ⅰ」は継続的に立ち上がっているのに対して、「Ⅱ」はディップを発生させることでシビランスのカットをしている。これはボーカルのシビランス制御に役に立つことが多い。

・HMFについて
同じく+-12dBでブーストとカットをする。800Hzから8.9Hzで調整が可能で、カーヴシェープをスイッチで変更することが出来る。

・MFについて
こちらは100Hzから1.5kHzを調整する。
他はHMFと同じ。

・LFについて
LFはピーキングのEQか、HPFとして機能をする。
ピークフィルターは40Hzから250Hzの間で調整が可能。
HPFとして機能させる場合はゲインはレゾナンスゲインとして機能する。

・ON/OFF
EQモジュールのON/OFFを決める。

プリアンプモジュール


・VUメーター
ドライブ回路の直後の内部ゲインのレベルを示している。

・DRVノブ
+-24dBでの連続調整が可能で、出力レベルは自動で補正をしてくれる。
ゲインマッチをされた状態で歪みかただけ調整できるということ。

・Vintage/Modern
Vintageモードでは、典型的な位相歪のアーティファクトを生成する。
それに対してModernモードは、位相に対して完全にリニアである。

・LF
トランス回路の低域に対する挙動を設定する回路。
これは内部のゲイン構造と高調波の生成に影響を与える。
これによって、どの程度飽和させるかをコントロールできるようになっている。つまりローをどれだけ事前にぶち込むか?で飽和感とキャラクターそれ自体をコントロールできるようになっているということのようだ。
優秀~~!

左側のLF EQ /フィルターモジュールは、低周波パラメトリックEQを提供しますが、共振ハイパスフィルターに切り替えることができます。この場合、ブーストの量がフィルターの傾斜を決定し、さらに重要なことに、その共振を決定します。グラフはこの動作を詳細に示しています。

ノブを反時計回りに回すと、信号の内部飽和が増加し、LF体積がわずかに減少します。ノブを時計回りに回すと、この飽和が低下し、通常、LFボリュームがわずかに増加します。内部的には、これは回路の帯域幅と速度を変更することによって行われます。
EQがプリアンプに従うので、クールなトリックは、プリアンプの低周波をブーストし、EQでそれらをカットすることです。このように, 不要な低周波情報をいくつか切り取ることができますが、ファンダメンタルズの高調波が存在し、音を調和的に豊かにすることができます。

説明書のTIPSより。本質的なPre→EQのワークフローの考え方が。ありがたや。

・OUTPUT
+-12dBで出力ボリュームの調整をする。

・ON/OFF
Preamp全体のON/OFFを切り替える。

その他TIPS

飽和度が高いと、通常、音のカラーが強くなります。しかし、それはまさに私たちが望んでいることですよね?
あまりにも多くの良さが適用されている場合は、ドライブノブでそれを元に戻します。
プリアンプがローエンドの歪みを生成しすぎる場合は、プリアンプのLFコントロールを増やすことでこれを減らし、ローエンドの飽和を減らすことができます。
このデバイスは、ミックスのさまざまな関連部分で最もよく機能し、全体的なまとまりのある印象を作成します。
オーディオ出力は、アーティファクトなしで出力をドライ/ウェットで混合することを防ぐ入力と同相ではありません。
含まれているプリセットは、開始点として使用されることを意図しています。
常に目ではなく耳でEQ。

ブラヴォー、おおーブラヴォー!

示唆に富みすぎているTIPS。これはまさしく開発者が”向こう側 エンジニア有段者”である感じが隠しきれていない。
開発者としてもエンジニアとしてもまさにベテランの境地である。


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検証してみる。

それじゃ、いつも通り検証していこう。
カーヴの違いは公式に出ている通りであるので、歪関連が中心になる。

VUメーターが0を示すようにDriveさせ、それぞれの変化をみていこう。

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