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おやじさんとメリー専務

 つれあいのおやじさんは商店街の自転車屋だった。拾ってきたスピッツをメリーと名付けてかわいがっていた。愛犬を家族はメリー専務と呼びならわした。

 ある日、用事ができたおやじさんはメリー専務をお供に駅前の信用金庫へ行った。3時になって表のシャッターは閉まり、用事を済ませたおやじさんは裏口から帰宅。表通りで待つメリー専務のことは忘れてしまっていた。

 いつまでも帰ろうとしないメリー専務を見かねた信用金庫から知らせが入り、おやじさんが迎えに行った。ただし、迎えに行ったはずのおやじさんはメリー専務とともに近所の居酒屋へ流れ、帰宅したのはすっかり日が暮れてからだった。

 おやじさんとメリー専務のコンビはその後も長く続き、おやじさんが他界したときもメリー専務は健在だった。

 ただ葬儀のさなか、「そういえばえさを忘れていた」と気づいた家族が探してもメリー専務はいなかった。おやじさんの葬儀の日に姿を消し、2度と帰ってこなかった。

 おやじさんと愛犬にまつわるつれあいの思い出話でした。


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