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単眼鏡 Monocular

渡部さとるさんが著した、旅するカメラで興味を持ったZeissの単眼鏡。ふと何かをじっくり見てみたくなったときや、美術館や博物館でガラスの向こうに展示された精緻な作品をもっと近くで見てみたいときに、ポケットに単眼鏡を忍ばせておくと便利で世界が広がりますというようなことを言われていて、一気に欲しくなったのを思い出します。ご本人はMONO 3×12T*を所有しているとのことで、最初は同じものを手に入れようと思っていました。

実機を在庫している店舗は少ないのですが、同社の別モデルや他社の商品をそろえているお店で、操作感・感触や重さ・サイズ感、倍率による視野・見え方やひとみ径などを試させてもらい確認して、その場で購入させてもらいました。思い出に残る誕生日兼クリスマスプレゼントです。

結局選んだのは、金属鏡筒が最高に格好良かった3×12T*ではなく4×12T*。

3×12T*(以下3倍モデル)と4×12T*(以下4倍モデル)の大きな違いは、
 ・ヘリコイド(回転)式 or スライド(伸縮)式のピント調節
 ・金属鏡筒 or プラスチック(樹脂かも)鏡筒
 ・倍率
 ・見え方(収差やにじみ、周辺描写など)
 ・値段
 ・サイズ&重さ
 ・生産地
こんなところでしょうか。

私の場合は倍率が一番の決め手になったような気がします。質感というのも大変重要なファクターではあったのですが、順を追って書いてみようと思います。

ヘリコイドかスライドかは、購入前の確認段階ではカメラレンズで慣れ親しんだ回転式が微調整が出来て良いだろうなと思っていましたが、使ってしばらくすると、スライド式でもそんなに問題がないことが分かりました。カメラファインダーや双眼鏡でもそうだったのですが、私は自分の目で視度調整をしてしまう癖があります。なので、そこまで緻密な焦点調節は必要ないのです。また、どちらのタイプでも片手で調節ができますが、前後の動きの方が(私の場合)スムースにそれが出来るので気に入っています。親指と人差し指で摘まんで、薬指と小指を対物側を同じく挟んでスライドさせる、と。がたつきが出てくると安価望遠ズームレンズの重力負け問題のようなことが起きてくるかもしれませんが、購入して数年が経っても今のところは不具合はありません。

金属鏡筒とプラ・樹脂のボディの違いは、もうこれは諦めました。生産地にも関係してくるようですが、金属性の3倍モデルは本国で、プラ・樹脂製の方は同社が東欧に構えた工場で生産されている"らしい"です。なので価格も違うんですね。それが影響しているのか4倍モデルにはGermanyの刻印がありませんし、3倍モデルはキャップがありますが、こちらにはありません。この差はGEWAのケースみたいですね。笑)4倍モデルが金属鏡筒だったら、その分価格が上乗せされていたとしてもそっちを購入したと思います。

そう、倍率が自分の中では大きなウェイトを占めていたんです。近距離では共に公表では5倍ルーペとして使用できるとありましたが、私の場合、使用する対物までの距離は結構遠いことが多いのです。コンサート鑑賞だったり、ちょっと遠くの建造物・岩鑑賞や鳥や星・天体だったり。鳥や天体は流石に無理がありますが、この数字1つ分の倍率の差が中遠域の見え方に大きく響いてきます。結果、4倍モデルを選びました。もし、対象が近接なのであれば、3倍モデルを強くお勧めすると思いますし、自分の対象までの距離計がハッキリしていると決めやすいはずです。

サイズは、これはほとんど気にならないレベル。3倍モデルの方がひと回りほど小さいですが、ずっしり重さを感じます。120フィルムと35mmフィルムのような感じでしょうか。今の世であれば、iPhoneやアンドロイドの方が重いし嵩張るので、両者ともに全く気にならないレベルです。ましてAFの交換レンズと比べたりしたら、、、ですよね。

最後は見え方。正直言って大差ないです。やはり僅かながら違いはあったのかもという感触はありますが、どこまで許容するの?という感じ。同じZeissでいうなら、50mmレンズにSonnar F1.5とPlanar F2.0のどっちにする?くらいでしょう。大きく引き伸ばす訳ではないですし、瞳(網膜)が周辺の収差やにじみ、そして減光具合をどれくらい感じ取れるのかと考えると、私はシビアに悩んでも仕方がないよなと思考を止めました。その道のプロになれば、マグロとカツオくらい違うと判断できるのかもしれませんが、もしかしたら私だけその辺の感覚が極度に鈍いのかな。レンズ構成や原材料は詳しい人に聞いてください。。。
像質は4桁価格の単眼鏡と比べるのは申し訳ないくらい、ビックリするほどの描写を見せてくれますし、それらと比べてとにかく明るいのもポイントです。夜間に使うものではないですが、コンサートホールや博物館の薄暗い中ではとても役立ちます。逆に明るすぎて暗順応が、、ということもありえます。輪郭がはっきりしない夕刻の三日月や日没後のコントラストの低い雲なんかもしっかり眺めることができるのは、明るいレンズの恩恵でしょう。
単眼鏡を覗きながら対象を追っているときや、前後に長い物体をピントを合わせながら手前から奥へ向かって鑑賞しているときなど、動きの中でレンズがどう描写してくれるのかは、比べていないので分かりませんが、その辺りは大きく差が生まれているのかもしれません。動体に対する連続性を持った描写は気になるところです。


という訳で、なんだかレビューみたいな記事になってしまいましたが、ここからは4×12T*でこんな使い方をしています作例を載せておきます。

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これもカルマン渦なのかな


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月はこれくらいの大きさで見えます


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圧縮効果はこれくらい


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50cmほど先のガラスケースに納まったCバウツ


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昆虫もばっちり見られます

全て、接眼部にスマホのカメラを当てがって撮影したものです。周辺の像の流れや収差・減光は、見口とカメラレンズがLined-upしていないことに原因があるので、実際の見え方がこんな感じではありません。

渡部さとるさんも書いていましたが、購入して直ぐの頃は、ことあるごとにこれで覗いて色々見てました。覗きたくなっちゃうんですね。もう購入してから何年も経っているので落ち着きましたが、今でもカバンの中でいつも待機してくれています。これからも沢山の景色や表情を見せてくれるのではないかと思います。

単眼鏡(Monocular)生活、楽しいですよ。

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