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河童

 前の会社にいた頃の話。昼食後、ぼくはいつも自分の車の中で寝ていたのだが、そこで時々不思議なことが起きていた。何者かが車内で横になっているぼくのお腹の上に乗り、ドンドン飛び跳ねるのだ。
『誰だ!?』と目を開けても誰もいない。おかしいなと思いながら目をつぶると、しばらくしてからまた飛び跳ねる。おかげでゆっくり昼寝が出来なかった。

 ところで、かつてぼくのいたその会社は、いつも水に祟られていた。プロの水道屋さんが水道管を破ってしまって、社内の床が水浸しになったとか、専門業者が来て消火栓を点検していると、なぜかホースが外れて天井から水が降ってきたとか、とにかく普通では考えられない水の事故がしょっ中起きていた。

 昔からその地に住んでいる人に聞いてみると、そこは元々池があって、その会社が建つ時にすべて埋めてしまったということだった。池にしろ川にしろ、元々水場だった場所は、不思議と水を呼ぶものなのだ。それはそこに棲みついている『何者か』が、奪われた水を呼び寄せているからだ。

 さて、冒頭のぼくの腹の上で暴れる『何者か』だが、その水を呼び寄せている『何者か』と同一のものではないのだろうか。同じ場所に『何者か』が二ついるとは考えにくいからだ。
 では、その『何者か』とは何者なのか?ぼくはそれを『河童』だ思っている。もともと河童伝説のある地域だし、あながち外れではないのではないか。

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