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スモールビジネスに向き合うカスタマーサクセスがやること

はじめまして、freeeのカスタマーサクセスでハイタッチ※の領域を担当している増田です。
(※1対1のコミュニケーションによる顧客支援を指すサクセス用語)

freee Success Advent Calendar 2021の20日目担当として投稿です。

ERPベンダーのワークスアプリケーションズからコンサルティングファームを経てfreeeに入り、もうすぐ2年半になります。
入社から2年はOnboarding以降の工程の仕組みづくりに取り組み、この7月からはOnboarding含むハイタッチの領域全体を担当しています。

ワークスでのエンプラ向けのサクセス経験を持ちつつ、この2年半スモールビジネスにプロダクト価値を届けることを考えてきたという経緯もあり、今回はこの2年半で取り組んだ各サクセス工程の仕組みづくりにおいて意識した部分について、エンプラ向けサクセスとの違いにも適宜触れながら、まとめてみたいと思います。

Onboarding

まずはOnboarding=導入支援工程についてです。
SaaSにおける導入支援工程については、対象とする業務領域の性質によって違いはあるかと思いますが、多くは初めはサクセス(orSales)によるハイタッチでの導入支援から初めるかと思います。
その後はエンタープライズ向けであれば導入PjM+領域別担当制など役割を細分化し専門性を高めたり、有償の追加支援サービスの拡充を図るなどの流れがあります。
一方スモールビジネス向けにおいては、着実に稼働に導くと同時にスケーラビリティも求められるため、一定の質の担保の目途がたった後は1:nのロータッチ化やオンライン化、あるいは無人化による効率化を進めることが求められます。
freeeにおいても後者の流れを進めており、現在はお客様の自力によるサクセスを支援する各種施策を企画提供しつつ、有償の導入支援においてはパートナー企業の協力によるデリバリ体制構築を図っています。
このパートナー企業との導入支援体制づくりについては以下でまとめているので、導入工程の詳細が知りたい方はぜひ参照ください。

また導入支援の効率化に合わせてヘルススコアの設計も進めています。

エンタープライズ向けであれば、有人での導入支援体制を広く敷くことで、一次情報で各案件の詳細状況が把握できますし、かつ継続的なアカウントマネジメント体制を敷くことで細かな機微も把握が可能です。
加えて、ことバックオフィス領域については、企業規模が大きくなるにつれ求められる業務網羅率や各業務の複雑性/独自性も高まるため、活用度の判定基準も個別化が必要となり、ヘルススコア設計自体が困難で意味を持たなくなってくるという背景もあるかと思います。

一方でスモールビジネス向けおいては、プロダクトの成熟に合わせて上述の効率化を進める必要がありますが、それに伴い得られる一次情報も減るため、それを補う手段としてのヘルスコア設計が求められます。

freeeにおけるヘルススコア設計に関しては以下にて紹介していますので、こちらも合わせてぜひ参照ください。

Retention

続いて、稼働後の継続的な支援を担うRetention工程についてです。
ここもOnboardingと同じく、対象とする業務領域の性質やARPU(ARPA)規模に応じて、テック/ロー/ハイタッチそれぞれアプローチの違いが生じます。
エンタープライズ向けでARPUが大きくなればなるほど、Onboarding工程に引き続いてRetentionにおいても、アカウントマネジメント体制を敷くことが可能になります。
一方スモールビジネス向けにおいては、顧客数の多さも踏まえると個社の担当制を敷くハードルは高まるため、ハイタッチで対応するポイントは見極める必要があります。

RetentionはOnboardingよりも捉えるべきジャーニー(工程・期間)が遥かに長くなるため、的を絞ることの難しさは非常に感じますが、まずはじめに重点を置くポイントとしてChurn理由の回収/深掘りを挙げたいと思います。

SaaSビジネスの最終工程であるサクセスにおいて、一連の顧客体験を経たお客様の更新判断に向き合うことは当然ながら重要です。SaaSである以上、本質的な解決には(ひとの手を介する)サービスではなく、プロダクトで解決することが必要で、そのインプットとしてChurn理由に向き合い、FBを届けることがサクセスとして重要な役割です。

ただ、われわれも適切にFBを届けるべくChurn理由に向き合う中で、その難しさも非常に感じています。具体的には、言葉尻ひとつで如何様にでも変化するChurn理由から、課題に辿り着くことの難しさです。
そのため、アンケートなどのみでの理由回収による課題特定には限界があり、的を絞った上でハイタッチによるヒアリングが必要だと考えています。

難しさの例としてはたとえば、とある機能が業務要件を満たせずChurnに至るケースでも、そのChurn理由が「プロダクトに対する不満」とされる場合もあれば、「営業時との期待値のGap」や或いは「価格理由(当該業務がスコープアウトした結果、高いと感じる)」とされる場合もあります。

ここで必要となるのは、プロダクトの提供価値が十分に発揮されたと言える状況=「勝ち筋」を定義することだと考えています。
この価値が発揮されれば更新いただけると自信を持って言える状態を定義し、その状態が実現された上でも尚解約に至るケースはプロダクトの価値不足と捉える。一方その状態に到達せずに解約に至っている場合は先ずはサクセスの課題と捉え、どういった支援があればその状態まで導くことができたかを考える。

安易にChurn理由に飛びつくと、その言葉尻に振り回され、なかなか課題に辿り着くことができません。
描いている「勝ち筋」に到達できたかを基準に、解決すべき課題を整理することが重要だと考えています。

Renewal

最後に、Renewal=契約更新の工程についてです。
Renewalに関しては、プロダクトによっては元々自動化されている(プロダクト上のユーザー操作のみで完結する)ケースもあるかと思いますが、一方でSalesによる商談を経て契約に至る場合は、契約更新に関しても同様に有人で対応しているのではと思います。
顧客別に担当者を置くアカウントマネジメント体制を敷いている場合であれば、基本的に担当者が契約更新のコミュニケーションを担うかと思います。

Renewal工程においても、他工程と同様にARPUや顧客数の違いをもとに取り得る対応は変わり、スモールビジネス向けにおいては必要に応じて自動化を図っていくことが求められます。

自動化を図る際、Renewalが担う役割を踏まえた上でオペレーションを構築することが重要ですが、RenewalがSaaSにおいて果たす役割の重要性はなかなか分かりづらいところもあるため、取り組む中で感じた点を以下に改めて整理したいと思います。

役割①|Churn傾向分析
分析自体は必ずしもRenewalチームで担う役割ではないと思いますが、契約更新結果に直接触れる工程である以上、その分析の解像度を上げていく上でRenewalの工程をいかに活かすかは、Renewalのオペレーションを設計する上で重要な論点です。
Churn要因の定性的な把握に向けた解約意向時のRetentionチームとの連携や、Churn分析を見据えた更新結果入力方法の最適化など、Churn分析の精度向上においてRenewalが持つ貢献割合は高いと感じます。

役割②|Churn予実管理
日々更新日を迎える各案件の更新結果を集計し、予め立てたChurn見込との乖離を管理します。四半期や月単位など細かなスパンで目標管理を行いPDCAを回していく上で、タイムリーな予実管理と乖離要因の把握がRenewalには求められます。

役割③|プライシング統制
SaaSにおいてプラン・価格の改定はつきものかと思いますが、その改定を図る上で既存顧客とのコミュニケーションを通じたスムーズな移行の実現もRenewalの重要な役割です。
この点においてRenewalが機能不全を起こすと、過去のプラン・価格が意図せず残存し管理が困難になります。
また、同様の観点で新規契約内容に対する統制もRenewalの役割であり、契約更新を見据えた内容管理をRenewalで担うことが求められます。
これらを通じて契約内容に対する統制をRenewalが十分に果たすことが、SaaSの生命線とも言えるプラン・価格のスムーズな改定に繋がると考えています。

freeeにおけるRenewal工程については、以下でも触れていますので気になる方はぜひ合わせて参照ください。

最後に

エンタープライズ向けサクセスとの対比で、freeeのハイタッチサクセス領域の特徴や課題に触れてきましたが、つまるところスモールビジネスに向き合うカスタマーサクセスの難しさは、1人ひとりに着実にプロダクトの価値を届け切ることと、国内企業の9割を占めるほどの圧倒的な数に広く届け切ることの両立にあります。
私が担当している領域がハイタッチであることも、よりその難しさを感じる理由かと思います。

ただ、非常に難しさを感じる一方、その分この上なくやる意義やその楽しみも感じられ、日々本当にワクワクする領域です。

サーバー投資や追加開発など大規模なイニシャル投資は不要で、気軽に始められるSaaSの価値は、本来スモールビジネスにこそ届けるべきものだと考えていますが、上述のサクセス上のハードルによりなかなか価値が届き切っていないのが現状です。

上述の課題もまだまだやり切れていない部分が多々あるのが現状ですし、その先取り組むべき課題も無数にあると感じますが、スモールビジネスに価値を届け切るために、サクセスからそのブレイクスルーを起こしたいと思っています。

またさらに言えば、領域問わずSaaSサクセスがスモールビジネスに価値を届け切るブレイクスルーを起こせば、その突破口から一気に多くの価値が届く流れも生まれていくのではとも思うので、ぜひ取り組みをシェアしながら互いに進化させていければと思います!

私が紹介したのはあくまでハイタッチサクセスで他にもたくさん取り組み紹介していますので、ぜひアドベントカレンダー参照くださいー!

あと採用もめちゃくちゃ大募集中ですのでスモールビジネス向けSaaSサクセスやりたい!って思っていただけたらぜひぜひよろしくお願いします!!!


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