tonkori 弦を張って完成
前回のつづき。
全てのパーツを作り、クルミ油を2回塗りして乾かしたあと、
弦(三味線の絹弦)を張る作業へ。
クルミ油は
さらっとしていて使いやすいけれど、浸透して乾くまで少し時間がかかる様子。
資料には、弦は「ツルウメモドキ」の繊維を使うとあった。また、博物館展示資料によると、クジラや鹿の腱も使っていたらしい…。
私は悲しき現代人なので、既製の弦を有り難く使わせていただく…。
tonkori下部に斜めに貫通させた穴に、弦巻き(キサラ・耳)から伸びる弦を全て通し、止め木に巻いて固定する。その間に二つの駒を経由し、フェイクファーを通し、(これは昔はアザラシの毛皮だったりしたらしい。)5本の弦を整列させておくための、小さな穴をあけた細い木材に弦を通してから。
弦巻きにはあらかじめ小さな穴をドリルで空け、糸を通し、玉結びで止めておいてから巻いていく。(備忘禄。)
ファーはあらかじめ下地と接着しておき、穴を空けてあるので
弦を張る作業をほぼ一気に。
はずみで、弦を弾いて初めての音が鳴る。
はじめてこのtonkoriが唄う、びーんと伸びる「D」の音をじっと聴く。
実は、弦を張る前に重大なミス(?)にはじめて気がついてしまう…(汗)。
↓この写真は、北方民族博物館で展示されているトンコリ。
だいたい、トンコリの図解や動画を見ると、弦巻きの位置が
左;2本、右;3本である。
で、私の作ったtonkoriは、左3本、右2本。
ほぼ完成前に気づく驚愕の事実…。
そんなつもりななかったというか…。
「え?」「むーーーーーーん」「まさかやっちゃった?」
弦の張る順番に悩む…
結局、鏡で左右を反転させたように、こんな感じで張ることにした。↓
たぶん大丈夫…いまさら後戻りできないっす…ここまで来たら勢いしかない…
ほら、樺太のウィルタ族の方、ゲンマキ左三本…
(アイヌと自然デジタル図鑑より)
わたしのトンコリは、ニュータイプ、じゃなかった、
ウィルタタイプということにして頂けないでしょうか。
(作るものって性格出るね…つめが甘いっていうの?ざっくりしてるっていうの?泣)。
もと左利きだし、大丈夫。
とにもかくにも完成じゃ!バンビの毛皮が可愛いじゃろー♪
”トンコリの音をアイヌ語ではハウ「声」と言い、調弦をすることはカーハウカラ「糸の声を調整する」と言います。”
〜アイヌと自然デジタル図鑑より〜
私は、Tさんのblogを参考にさせていただき、
D A E B G♭
に合わせている。
今のところ、このお気に入りの調弦でtonkoriを弾く練習をしているが、
このスケールのパターンであれば、音程を変えても大丈夫な様なので
欲が出てきたら色々と試すのもよいなあ。
とにかく、のんびりとこのトンコリと遊んでいきたい。
(このあと
もう少し低めにあわせたり
いろいろ。)
最後にちょっと分からないことが出来て、とうとうTさんのが主催されている
HPのコメント欄に質問してしまった。
完成するまで質問せずに自分で解決していこうと思っていたのだが、
どうしても、駒の位置は固定しておくべきかどうかが分からなかったのだ。
(初心者まるだし。)
見ず知らずの、しかも勝手にblogを見て真似してtonkoriを作ってしまったおばちゃんに、田中さんはとても丁寧に答えてくださった。
この場を借りて、(勝手に)密かにお礼を申し上げます。
本当にありがとうございます。
私も近くに住んでいたら、出来上がったtonkoriを見せに伺いたかったなあ…。
抱えたtonkoriの音と自分の囁き声が混じると、なんとも言えない優しい気持ちになる。
今はインターネットで何でも調べられるのだけれど、
ひとりで楽器を作るという作業は、時間はかかったけれど
変えがたい「何か」だったと思う。
トイレに座りながら、シャワーを浴びながら、包丁を使いながら、
「あれはどうしたらいいかな」と何かしら考えていた。
それまでの私は恥ずかしいことに、ギターの共鳴はどうなってるんだろう〜
なんて考えることすらしなかった。
それに、一万円代の小さなギターだって、わたしの手元にくるまで、
どれだけの人の手がかかっていたのだろうかとも思うと、粗末に出来なくなってしまう。(粗末にしていたわけではないけれど。)
手順を教えてもらいながら作る、という今までの経験とは違う、
(もちろん、教えてもらいながら作るのも好きだけど。)
自分で考えながら作る、
という過程は
大げさかもしれないけれど、
もしかしたら今までの生き方をほんの少し、でもしっかりと、
変えるきっかけになるのではという
ほのかな優しい期待を与えてくれた様にも思う。