もし施術家を長く続けるのであれば、毎日欠かさず鍛錬するように。

・・・とまでは言わないですけれども、週に三日くらいは鍛錬をしておかないと、真面目な施術家さんであればあるほど、いずれ身体を壊しますし、変な癖がついてくる。
と、長年の経験から、僕はそのように思います。そして、ただ単に身体を鍛える。・・・というのではなく、その鍛錬が、施術にも活きるようでなければ、やる意味がない。というのが、僕の持論です。
 
 経験的に言うと、太極拳に代表される、いわゆる内家拳と言われる武術体系は、施術における身体作りと、身体の用い方を学ぶ上において、かなり役立つことが多く、鍛錬することで、施術時における姿勢の崩れや、動きの変な癖を取り除くことにもなり、とても役に立つ。ということを、最初に明言をしておきます。
 
 また他にも、日本が誇る伝統武術の一つである、合気柔術における 「合気」 の技法などは、施術においての応用範囲が実に広大で、一例を上げると、施術を受けられる方の異常な緊張を取りさることもできますし、施術の技に、合気の微妙な感覚が活かせれば活かせるほど、様々な場面で役立てることができるようになります。たとえば、東洋医学的な活用法では、いわゆる邪気を抜いたりすることも出来ますし、 何より、相手の方に信頼と安心感を持って、施術を受けて頂けるので、たとえ長年の歳月を費してでも、修得していく価値がある。と、僕はそのように思っています。
 
 また「合気」はその性質上、修得する度合いに応じて、「触診」の技術が向上する上に、触診自体が治療にもなってしまう。という、副次的な効果も産まれて来るものなのです。
 なので、学ぶことをおすすめする訳ですが、これが如何せん、教えられる人が少ない上に、教えられる内容というのが、人によって違ったものだったりしますし、武術の性質上、秘密にしていたり、あるいは、わざと神秘的に見せていたりして、学ぶことが非常に困難なようにも思われています。
 確かに、一日二日で修得できるものではありませんが、年数をかけて鍛錬することで、どんどんとその成果が施術にも活かされて来ます。
 なので、「合気」というものの正体の一部を、少し暴露してみたいと思います。

「合気」というものは一見、不思議な力を使って、相手を自在に操っているように見えますが、これは、一つの明確な技術でありまして、神経網に作用させて、筋肉に働きかけることが出来る、潜象意識を用いた技法である。と、ある意味、言えるのではないかと思います。
「合気」の技術を、文章で説明するのは、とても困難なことなので、その要点だけをお伝えします(感の良い人なら、これを理解するだけで、少し出来るようになることもあります…)。
 物理学の世界では、力がある方向に作用する時には、必ず、反作用が生じます。
 たとえば、ロケットが上に飛び立つ為には、下にエネルギーを噴射しなければ飛べませんし、飛行機が前に進む為には、後ろにエネルギーを噴射しなければ、前に進むことはできません。
 もう一度言いますが、動きには必ず「作用と反作用」 が伴います。これは、「重力と斥力」 が関係していて、「合気」はこれに潜象意識を用いて働きかけることで、技法を技法足らしめているのです。では、潜象意識とはなんで、それをどう使うのかと言えば、潜象意識というのは、エネルギーをエネルギー足らしめているモノ。のことで、まぁ、今は簡単に、エネルギーに働きかけることのできる微細な意識。って、位に思っておいてください。そして、合気ではそれを「手の内部において用い、反作用を引き起こすことによって、相手の反射機能を無効にしてしまう」ということをおこなっているのです。
 つまり、合気とは、相手の反射機能を無効にしてしまう技のことなのです。

 筋肉は神経が支配している。

という事実があります。これ、一見、簡単そうな表現に見えますが、実はとんでもないことなんですよ?
 だって、考えてみてください。たとえ究極的に筋肉を鍛えて、誰も想像出来ない程の最強な力を手に入れたとしても、神経を操られてしまったら、それを無力化されてしまう。・・・ということなのですから。

この表現で伝わりますかね?

 もちろん、どれほどの影響を与えられるかは、その習得度合いにもよるのですが、相手が気づかぬうちに動かされてしまう。という現象は、そういった道理によって生じる。
 と、僕は長年の経験から、現段階では、そのように仮定しています。


#技の巻

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