見出し画像

ウィルダネスの提唱

ウィルダネスとは

日本では全然馴染みがない言葉で、環境保全に興味がある私でも全く知らなかった言葉なのですが、アメリカの国立公園では”ウィルダネス“と言う言葉がよく出てきます。

国連の指定する自然遺産や、各国の指定する国立公園ではウィルダネス(手付かずの自然)という原則ルールが提唱されていて、

これは、過去に人間が自然環境に干渉したせいで大きく生態系が狂ってしまったり様々な弊害が起きた反省を踏まえ、何億年もかけて培われてきたサスティナブル(持続可能)な自然のサイクルを壊さないようにするためのルールです。

・森林火災の話

自然は人間の寿命では測れないほどの壮大なサイクルを持っています。例えば、驚くことに、自然発生した森林火災は人工的に消化しない、などの原則ルールも提唱されています。自然のサイクルで森が燃えることは実は珍しくなく、強い樹木が残り、肥沃な土壌にまた新たな生命が根付きます。

・オオカミの話

イエローストーン国立公園は世界遺産第一号となった始まりの自然遺産ですが、かつて西部開拓時代に人が乱獲しオオカミを絶滅させてしまい、草食動物が増え、荒野になってしまった背景があります。

そのため、元の生態系バランスに戻すために、オオカミを人工的に放ち、生態系バランスを元に戻す試みがなされました。

また、同国立公園では、インディアンと入植者の戦いの歴史の中で滅んでしまったバイソンをアフリカから連れてきて放逐しているという例もあります。

・旅人の矜持

ここまでは、国立公園側が工夫している事について言及しましたが、

自然遺産を旅する旅人であれば、旅人自らが自然環境を乱さないためにウィルダネスの観点から様々なことに注意しなければいけません。

ここからは、個人でも実践できるウィルダネスを紹介したいと思います。

・洞窟に入る時

例えば、洞窟の様な閉鎖環境を訪れる時は、洞窟内の生態系を守るために、靴の裏についた外界の土についたバクテリアや細菌を落としてから入る必要があります。閉鎖環境では何万年も生命のサイクルが培われているので、大勢の人間の侵入でそのサイクルを乱してはいけません。

・焚き火について

人が多く訪れるキャンプ場では、現地に落ちている原木を集め、無闇に焚き火をして、木枝を消費してはいけません。大勢のキャンパーが現地の木を燃やしてしまったら、生態系が大きく狂ってしまいます。

・クマの話

自然動物に餌付けをすることも大変良くないことです。イエローストーン国立公園ではかつて観光客がクマに餌付けを行い、クマと人間の友好的な関係が築かれていました。クマに抱きついて写真を撮る観光客もいるほどに、クマは友好的な動物でした。

しかし、ある時、クマを悪戯に挑発する若者が襲われる事件が起こり、クマに餌を与えることが禁止されました。

一度人間の食料の味を覚えたクマは、人間に食料をもらえると思ってしまいます。人間の食べ物が得られなくなったクマが人を襲う事件が増え、結果、駆除せざるを得なくなってしまい、クマの個体数が減ってしまいました。

この悲しい記憶から、イエローストーンの人々は語り継いでいます。

・キャンプでの食料の扱い

クマと人間の悲しい歴史から、キャンプ地で人間の食料を放置して匂いをさせることも良くないことで、食料は密閉して保存するなど、自然に配慮した管理をする必要があります。

一部のキャンプ場には鋼鉄製で密閉された食料保管庫が設置されていて、野生動物への配慮と人間の安全の確保がなされています。

食料庫の併設されていないキャンプ地に於いても同じです。

食べ物の匂いがしないように、食べ終えたあとの食料は密閉すること、できれば、密閉した上にキャンプ地から離れた木の上に紐で吊るすなどする必要もあります。

野生動物、特にクマは犬の20倍以上の嗅覚を持つとも言われています。

身を守るためにも、生態系を守るためにも、共存のために食料の扱いには十分以上に注意してください。

・ゴミのポイ捨て

当たり前すぎることなのですが、世界中どこの観光地を訪れても、必ずゴミのポイ捨てが目立ちます。

景観が美しい場所であればあるほど、悲しくなります。

特に、自然界では分解が困難なプラスチックゴミを捨てることは絶対にしてはいけません。

鳥や、海洋生物の大半が人間の出すプラスチックごみを飲み込んで寿命を縮めているという統計も出ています。

ゴミ、特に自然に分解が困難な類のゴミは絶対に持ち帰るようにしましょう。

・外来種の話

日本でもブラックバスなどが問題になっていますが、日本由来の動植物がアメリカ本来の自然を侵食し生態系バランスを崩している例もあります。

金魚、コガネムシ、アゲハチョウ、カミキリムシ、オオスズメバチ、葛(クズ)、アケビなど、日本由来の動植物がアメリカの自然を侵略していることも、もっと知られるべきだと感じました。

全世界で海外で脅威になっている日本の生き物に関してもっと興味のある人は、この動画がオススメです。

https://youtu.be/o-ZV6qZGuPc

・最後に

私は地球の自然が大好きで、後世の人々にも美しい景観を楽しんでもらいたいと考えています。

後世に少しでも美しい地球を残すためにも、ウィルダネスの概念をより多くの人に広めるお手伝いをしていただけると助かります。

私自身、自然保護については漠然と考えていましたが、どうすればよいのか指標がはっきりと分からず、ウィルダネスという概念をはっきり認識したのもごく最近のことでした。

ちょっとした友人との話題に「ウィルダネス」って知ってる?と話をふっていただけるだけで全然意識が変わると思います。

ぜひ、旅人のコミュニティの中で、この言葉を広げて、美しい自然を維持していきましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?