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ザ・バンド「ラスト・ワルツ」

ザ・バンドが好きな人なんて、きっと50代より上の世代だけだろうなぁなんて思いつつ、やっぱり書かずにはいられない。よっぽどの音楽ファンでもないと知らないだろうけど、いいバンドなんです。

1976年の解散コンサートを記録した映画「ラスト・ワルツ」。監督はマーチン・スコセッシ。これが素晴らしいんだなぁ。

60年代始め頃、ロニー・ホーキンスって歌手がバックバンドのメンバーを探してて、それで集まったメンバーが母体となり、やがてエレキ化したボブ・ディランのバックバンドを経て、1968年に「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」っていうアルバムでデビュー。それがザ・バンド。

当時はサイケだヒッピーだフラワーだのの時代に、アメリカの伝統音楽をベースに泥臭いロックをやってるんです。このアルバムがきっかけとなって、ロックはサイケからアメリカ南部へとメインストリームが変わって行くんですねぇ。

ほら、ローリング・ストーンズの「べガーズ・バンケット」やクラプトンのデレク&ザ・ドミノスなんかがその代表でしょうか。

一躍トップバンドになったザ・バンド。しかし、ギターのロビー・ロバートソンがもうツアーはやりたくないよ〜ってことで、企画されたのが「ラスト・ワルツ」。豪華なゲストを招いて、華やかに終わろうってことなんだろうけど、他のメンバーは解散なんてしたくないし、ツアーもやりたいよ〜、てなことでロビー・ロバートソンと他のメンバー、とりわけリヴォン・ヘルムと確執が生まれちゃったらしいです。

ぼくはこの映画を、最初はボブ・ディラン目当てで観たんだけど、ザ・バンドのカッコよさにヤられました。とりわけギターのロビー・ロバートソンとベースのリック・ダンコがカッコいいのなんのって。

ゲスト陣も豪華です。エリック・クラプトンやニール・ヤングや、最近亡くなったドクター・ジョン、ノリノリのヴァン・モリソン、貫禄たっぷりマディ・ウォーターズ、あれこれです。

ライブシーンとメンバーへのインタビューやらが入り混ざって、ラストにボブ・ディランが出て来ます。ザ・バンドかっこええなぁなんて見てて、ボブ・ディランが出て来たら、完全にボブ・ディランが主役になっちゃいました。白い帽子を被ってすごい存在感です。76年のボブ・ディランのオーラすごすぎです。

なんでもボブ・ディラン、5曲演奏するうち最後の2曲、「フォーエバー・ヤング」と出演者全員の「アイ・シャル・ビー・リリースト」のみ映像撮影を許可したとのこと。ところがですよ、ところがなんと、「フォーエバー・ヤング」の終わり頃、ボブさん隣のロビー・ロバートソンになにやら話しかけます。曲は演奏中ですよ。ドラムのリヴォン・ヘルムやベースのリック・ダンコがなんだなんだ?どうすんだ?ってな顔がスクリーンに映ります。うやむやっと「フォーエバー・ヤング」が終わり、ボブさんがギターをカッティング、一曲目にやったはずの「Baby Let Me Follow You Down」を再度演奏し出します。ぼくはここのシーンが大好き。予定にないことを始めるボブ・ディラン、それに応えるザ・バンドのメンバー。ギターのロビー・ロバートソンがめんどくせぇ奴だなぁって顔してます(?)。

ボブ・ディランなりのサービスなのかなんなのか、おかげで2曲の予定が3曲の映像が残されることとなりました。もうこのボブ・ディランを見るだけで価値のあるこの映画。ザ・バンドも素晴らしいけどボブ・ディランも素晴らしいです。

ザ・バンドはこの後、アルバムを一枚出して解散。後に再結成されますが、ロビー・ロバートソンは参加せず。

ピアノのリチャード・マニュエルはツアー中に自殺、リック・ダンコはドラッグで捕まったりしてブクブクに太って56歳で死亡。ロックの殿堂入りの式典では、ロビー・ロバートソンが出るならオレは出ないとリヴォン・ヘルムは出席せず。なんか悲しいバンドなんですよねぇ。

そんなザ・バンドとロックの華やかな時代を捉えた「ラスト・ワルツ」、何度見てもいい映画です。

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