たまごブラザー
誰かに頼まれるとかでもなく、自分で考えて、何かやってやろうぞと思ってやる仕事ってなにかあったでしょうかねと考えた時に、
これは全員に通ずることなのですが、
その扉を開けた時に最初にある思い出っていうのが、どうしても「卵をとく」になってしまうのです。
何かを思い出そうと思ってるとき、漠然と何を思い出すかの方向性だけ決めて、そこからピントを合わせるみたいに記憶をたどっていくと思うんですけれども、
そのたどっていく道中、ふと脇を見たら、自分の背中が見えるわけです。
で、なんか背中で隠れてるものがあるなと思って、そいつにばれないようにちょっと右にずれて、そいつの体の正面にあるもの覗き込んだら、
白くてべこべこのボウルが見えて、まあボウルって落としすぎるもんですから、それはいいとして、じゃあなにが入ってるんだろうってなったら、その中に溶き卵が入ってるわけです。
じゃあ、
これだとおかしなことになってしまうんじゃないのですか、というのが話の肝になっちゃうのですよ。
だってじぶんの背中が自分の目で見えるわけないんです。
背中を見ることができないのは分かっているんですけれども、でも、溶き卵作ってるときの自分の姿っていうのは、絶対正面のカットが一個もないわけで、その代わりに後姿を唯一見ることができるシチュエーションなわけです。
だから、夏休みの絵日記、子供たちは、あんなにネタに困ってるにもかかわらず、「卵を溶いている自分の絵」は絶対描こうとしないわけなんですよ。
だって、その時の貌が思い出せないから
今 絵日記にしようとしているそいつが、こっちを向いてくれないから
絵日記に、自分一人しかいない絵で、後ろ姿の絵を描くのが怖いんだからしょうがないじゃないですか
そもそも 卵をとく作業なんて絵日記に書いてもどうしようもないし
残念だね
あれ
でも
最初の仕事って、絵日記に描かなくても、覚えてるもんなんですね
卵をとく絵を没にしてまで絵日記に書いた内容は全く憶えていないのに
卵を5個くらい一気にとくと、オムレツがでかくなる
マーシー
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