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5/1 歩み

「GW松本にいる?」そう尋ねると『いるよ!おいで!』と文月さんからすぐに返信が返ってきた。翌日特急あずさに乗って東京から松本へ移動した。

まだ自分の中で処理しきれていない出来事をあれこれ考えながら車窓を眺めていると気付けば眠りに落ちていて、目を覚ますとあっという間に北アルプスの景色が広がる駅に着いていた。

文月さんは時間指定の受け取り荷物があるとのことだったので、1人で蕎麦を食べに行き前回改装中で行けなかった松本市美術館で草間彌生の企画展を見に行った。

草間彌生の生まれ故郷松本

その展示に私は胸を打たれてしまい思わず涙が止まらなくなり、企画展の出口を出たあとトイレにしばらく篭っていた。死を目の前にしながらも作品を世に出し続ける彼女の生命力の強さ、そして歩みを進めることの意味やその問いかけ、願いを真正面から受けてしまい面食らってしまった。それぐらい素晴らしい展示だった。ただ作品がいいだけではなくて、多分今の自分の感情とか状況とかそう言うものが組み合わさった結果ではあるのだろうけれど、こう言う体験ができることは稀なので、すごく自分は恵まれているんだと思った。

その後2人で銭湯に行って色々な最近の出来事を話す。文月さんは言葉を仕事にしている人だから選ぶ言葉や表現が丁寧で、自然と自分もそれに合わせてコミュニケーションをするようになる。文月さんと話す時の自分の言葉を大事にしながら会話をする感覚が好きで、一緒にいると心地いい。

その人に対して好意を持っていても、その人と一緒にいる時の自分が好きになれない感覚を持つことが多い。基本的には周囲に合わせることが多いので話し方や立ち振る舞いは相手に依存するし、割と幅広く色々な人とやり取りできるタイプの人間ではあるが、それが故にこの人と接している時の自分はあまり好きになれないなと言う感覚を持つことは少なくない。ここ最近は色々な人と関わることが多かったから、少し疲れてしまっていた。文月さんと話すことで、本来の自分を取り戻しているような実感を得ていた。

三軒目でスナックに行き、カラオケを歌いながらこの店の歴史とかマスターやママがどう言う人生を歩んできたのかの話を聞いた。60年とか70年という時間軸の話にやや圧倒されながらも色々なことを経験したからこその凄みや深みみたいなものが感じられる人たちで、それでいて謙虚で親しみやすさもあり、自分もこういう歳の取り方をしたいと思った。

カラオケ文月

帰宅して文月さんは原稿の締め切りがあるとかでパソコンに向かい合っていたけれど、私は早々に眠くなってしまってそのまま布団で寝落ちしてしまった。お酒をそれなりに飲んだけれど泥酔はしていなくて、すごく心地の良い眠りだった。ここ数日の私はとても疲れていたのかもしれない。

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