見出し画像

1/9 別れ

彼と別れた。

毎週土曜にやっている一緒に経営している会社の定例は彼と私ともう一名の共同代表でやっている。彼らはもともと学生時代からの友人だ。定例が始まる時間に彼らは来なくて10分程度遅れると言われた。ああ多分私と別れるつもりという話をしているんだろうなと思った。

定例の中に彼がいるという現実がとても辛かった。今すぐ逃げ出したかった。別の話の延長線上で「精神状態が仕事に影響しない女はいいよね」と彼らが話していた。私のことを言われていると思った。私は一緒にやり始めた時から「どんな理由であれ、別れたら辞める」と話していた。それを止めたいというのがあるのか、ただ単に嘲笑うためなのか、単に何も考えていないかもしれないけれど、今この状況でそういう発言ができる無神経さが羨ましかった。

定例が終わった後「話そう」と彼にLINEをする。テレビ電話を繋げてシンガポールでの出来事の整理と、そしてこれからどうしていくかを話したいと伝えた。

シンガポールのことについてはその後このnoteにまとめた内容や自分の中で整理したことを伝えた。とてもショックやストレスが大きかったこと、その上で色々なことを整理して今はその一件自体は受け入れていることを伝えた。

彼からの話は端的で、シンガポールの件は申し訳ないと言う話、そして早々にその話を切り替え別れたいと言う旨を伝えられた。彼の話はこうだ。

私は人のために何かを頑張るという想いが強い。自分を犠牲にしても周りを幸せにする生き方を選んでいると思うけれど、結婚したらその自分には俺も含まれる。俺は自分を犠牲にしてまで成り立つ幸せなどないと思うから、耐えられない。結婚はできない。

驚きもなく、素直に受け止めることはできていた。今まで私は自分が苦しくてもそれで周りが幸せならいずれ自分も幸せになるような生き方をしてきたし、それに対して彼が正しいと思っていないことも知っていた。ただ私はまだこの話をしている時は彼のことが好きだったし、今すぐに結論を出さなくても、帰国まで時間もあるしもう少しお互いが考えてもいいのではないかと伝えた。彼の答えはNOだった。「ずっと我慢していてこの話を言いたかったけれど言えなかった。今は言えてスッキリしているし、結婚ができない結論は変わらない」そう言われた。

いつからそう思っていたか聞くと、少なくともシンガポールに行く前には思っていたと。ただコミュニティも近いし、お店も一緒にやっているので言い出せなかったと言われた。

ずっとそう思っていたなら、シンガポールに来ることも拒否してくれればよかったのに。なぜ私はあの時あんな風に傷つけられなければならなかったのか。なぜあんな理不尽な思いをしなければならなかったのか。

この人は自分を大事にできる人だし、同じぐらいどこまでも自己中心的な人なんだと気が付いた。

「最初から言ってよ。だったら行かなかったし。旅費返してほしいわ」と笑いながら伝えると「でも俺今君が住んでる家の光熱費払ってあげてるよね?」と返された。私が年末に壮絶な経験をしてすごく苦しんだことも、そのショックが大きくて年始ろくに仕事ができていないことも、ご飯が全然食べられないことも、まったく寝られていないことも、この人にとっては月1万程度の価値しかないことだと思われているんだと思った。本当にこの人にとっては周りのことなどどうでもいいんだなと思うと何かがスッと冷めていった。

「一応親に挨拶をしに行ったから、親にはこの後報告するね。ないと思うけれどもし親がなんか言ってきたらその時は電話とかしてもらうかもしれないけれどお願いできる?」そう私が伝えると、「でも俺結婚するって君のご両親の前で言ってないよね」と彼に言われた。何を言っているのか意味がわからなくて「じゃああなたのご両親は私たちが結婚していると思っていないの?」と聞くとそれは思っていると。意味がわからなかった。なんで無責任な人なんだろう。こんなの詐欺師とやっていることが変わらない。私は騙されていた気分になった。この人の中ではこれで筋道が通っているんだろうなと思うと呆れ返ってしまった。

笑顔で電話を切った。まだ色々なことが整理できていなかったけれど、人は追い込まれた時に本当の人間性が見えるなと心底感じた。きっと結婚しなくてよかったんだ。

電話を切る前最後に「別れたらお店は辞めるってずっと言ってたし、私は抜けるね」と話をしたら「それは困る」と彼が返した。そんな言葉が一言目に出てくるなんて、本当に自分のことしかこの人は考えられないんだなあと思った。その時にはもう彼への好きな気持ちはなくなっていた。人生の大事な局面で責任逃れをする人と私は付き合っていたと思うと、心底気持ち悪くなっていた。


自己犠牲の上に成り立つ幸せがない、その考え方はとても素敵だと思う。私はお店を一緒にやっていく中で、メンバーの中で私は唯一女性だし友達も多いから、色々な人からお酒をもらって、自分を犠牲にしてでもお店のためになることをしてきた。この話を一度したら彼は驚いていた。「好きで飲んでいると思っていた」と。そんなわけ無いという話をしてそれについては謝ってくれたし、その時も「自分を犠牲にしてまでやるべきことじゃない」って言ってくれたけれど、それでもお店をやる限りそんなこととは続いていくし、本当にそう思うならその日の売上を私に返すぐらいのことをしてもよかったのではないだろうか。
結局彼は私が泥のように働いて稼いだお金の上で酒も飲まずあぐらをかいて好きなシーシャだけ作って経営ができて幸せな思いをしている。彼の幸せは私の犠牲の上に成り立っていた。それでも頑張れたのは私が彼の夢を応援したかったからだし、結婚もするんだと思っていたから、パートナーとして辛くて嫌なことも全部乗り越えて行きたいと思っていた。

途中で気持ちが変わるのはしょうがない。私にだって悪いところもたくさんあるし、合わないものはもうしょうがない。でも去年の5月に両親に挨拶に行った時に、結婚すると断言せずそれを自分の中での切り札として持っていて、それを最も私を傷つけるような出来事を起こして、そして別れを告げて実は前から思ってましたって、どう言うことなんだろう。


あなたは自分を犠牲にしないことが美徳だと言っていたけれど、他人が自分を犠牲にすることを前提としないと生きられないのではないですか?そうやって周りが自分を犠牲にしてでもあなたのためにやってくれたことを、ただそこにあるものとして受け取ってきたのではないですか?何かを人に与えるということはできない人なのではないですか?

そんな自分が嫌だと付き合った最初の方に言っていたけれど結局君は変わらなかったね。それは単純に私への気持ちが冷めたからなのかもしれないけれど、そうなのであれば先に言って欲しかった。そしてあなたは別れる前に一度も自分の非を認めなかった。一度だけあるか。「シンガポールの件はごめん」この一言だけだったね。

一緒に会社をやる時も複数のメンバーでやるにあたって意見が割れた時が不安だと伝えたら「でも俺たちは2人でずっと一緒にやっていくからそこの意見が割れることはないじゃん」ってあなたが言ったね。そこまで断言できるのはすごいと思ったし、ちゃんと責任を取れる人なんだと思った。であればと私から結婚の話をして、合意のもとすぐに両親に挨拶に行ったね。片方でそう言う責任感のある発言をしながら、片方では結婚するって断言していないから大丈夫、と心の中で思っていたんだね。ずっと私の気持ちと信頼を裏切り続けていたんだね。耳障りのいい言葉を使って。そうして私は一緒に会社をやる間、ずっと君に利用され続けてきたんだね。

自己犠牲の上に成り立つ幸せがないと言う考えはすごく素敵だと思います。私はこれ以上君のために店を続けていくこと自体が私にとっての自己犠牲なので、もう辞めますね。これ以上自分が働いた分君に1ミリでも経験として還元されていくことが許せない。自分を中心に物事を考えること自体は全く悪くないと思う。ただ人の痛みに気が付かず、人の犠牲の上に今の自分があると言うことに向き合えない人とは一緒にやっていくことはもう難しいです。



自分の行動や言動に責任を持てない人、嘘をつきながら他人の気持ちや労力を利用する人と、結婚などしなくてよかったと思う。事業パートナーがそういう人であるということに一年も経たずに気付くことができたこともよかった。そう思うことはまだ自分の中では辛いけれど、今でも更新され続けるInstagramを見ながら彼は自分がシンガポールでやったことなど1ミリも申し訳ないと思っていないんだろうと気がつく。私はずっと実態のない何かを追いかけて、そのために頑張っていたような、そんな気持ちを今は持っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?