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1/14 家族

共同経営の会社のメンバーに、辞めることを伝えた。自分の中で何度も反復して話す練習をし、メモにまとめた内容だったが、やはり辞めることが悲しくて泣きそうになってしまった。

議論は冷静だった。辞めることに関しては私の気持ちを尊重すると言うこと、事業を存続させるかどうかも含めて決めなければならないのと業務の引き継ぎもあるので、今後のスケジュール感の確認などを話した。

話をすればすっきりするかもしれないと思っていたが、全く心のモヤは晴れなかった。私は会社を続けたかった。お店を続けたかった。彼も含めた創業メンバーで一緒に事業をやるのが楽しかったし勉強になっていたし、この場を通して出会えたお客さんや従業員のことが好きだった。でも自分の行動がひとつでも彼のためになっているということが許せなかった。どうしてもそこだけが乗り越えられなかった。大人気ないと思いながらも、その想いにとても苦しんだ。


話が終わって午後父と母と電話をする。改めてことの経緯を話す。父から「結婚のお祝い金としてお金を用意していたから、もし今お金が必要ならそれはいつでも渡せるので言ってくれ」と言われた。別れてからは不思議と一度も泣かなかったけれど、その言葉を言われて私は申し訳なさで涙が溢れてしまった。彼が結婚するとは断言しなかった結婚の挨拶の場に、父と母がどんな想いで来てくれていたんだろう、それを思うと本当に申し訳ない思いでいっぱいだった。その後に気持ちが変わったならまだしも、ずっと責任を取るつもりがなかった彼の態度が心底憎かった。私だけならまだしも私の家族をも欺くような行為をした人間を到底許すことなどできないし、そんな人を親に紹介してしまったことが本当に申し訳なかった。

「あなたが結婚したいと言う相手ができたこと、そうであれば両親に会わせなきゃと思ってくれたことだけで十分です。だから謝らなくていい」父が最後にこう言ってくれた。ただただ申し訳なかった。

父親はどんな想いでそのお金を貯めてくれたんだろうか。苦労して育てた娘が初めて連れてきた交際相手に父も母も浮き足立っていた。「どこに出しても恥ずかしくない娘に育ててきました。うちの娘をよろしくお願いします」その言葉が恥ずかしかったけれど、嬉しかった。それを彼がどんな気持ちで聞いていたんだろうと思うと、とても虚しい気持ちになった。

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