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5/18 ピンク髪

時間が空いたのでホットペッパーを開いてすぐにマッサージに行ける店を探した。近くに15分後に予約できる店があった。本当は全身に倦怠感を感じていたけれど化粧が崩れないように座って施術を受けられる足のマッサージを予約した。

「ピンク色の髪の人を施術するのは初めてです」と私の左足を指圧しながらその人は言った。他愛もない話をしてそろそろ会話が尽きてきた頃にその人が頭頂部を眺めながらその言葉を口にした。

それにどう答えるのが正解かを考えたけれど何も浮かばなかったので『まあ、あんまりいないですもんね』と相槌を打った。この話題は続けたくないと思っているという気持ちを最大限に込めて発した言葉をその人も汲み取ってくれたようで、すぐに話題は切り替わっていった。

ここ一年ぐらいで緑や青、赤やピンクに髪の色が定期的に変化していっているが、私の周りの人は慣れているからなのか「おっ髪色変わったね、いいね」ぐらいの反応しかしない。今は実家に住んでいるけれど色とりどりに変化する髪色を見ても親から苦言を呈されることもなく、特に何もコメントもされないので、時たまやってくるこの衝撃、自分が「ピンク髪の人」という枠組みに当てはめられる出来事に出会うと言いようのない違和感を覚える。

昔に比べると派手な髪色の人は増えたと思うけれど、増えたからと言って全ての人に無条件に受け入れられる訳ではないのだということを施術を受けながら改めて感じていた。

最近はタトゥーを入れたいなと思って色々と調べていた。多分これを入れたらもっと色々言われるんだろうなという思うととても嫌な気持ちになった。そういつものを気にせず生きていければいいのに、私はそんな風にはなりきれない中途半端な人間だ。自由に自己表現をしたいとは思うもののある一定は周りにも受け入れられたいとも思ってしまう。

最近よく話をする人から昔関係があった人の話を聞いていて、その人はとても破天荒な人だったんだけれど、私はそんな生き方ができないなと思って、なんだか自分の普通さに絶望してしまった。

髪をピンクにしようが、住まいを転々としようが、本業以外に色んな仕事をしようが、どんな国を旅しようが、私は本質的には普通の人間なんだろうなと思う。

髪を坊主にはできないし、思い切って海外に移住することもできないし、リクルートを辞めることもできないし、情勢不安のある国に飛び込むような勇気もない。

ぶっ飛んでいるよねと言われる度に、この人は何にもわかってないなあと思ってしまう。でも分かったような口を聞いて「意外と普通の人間だよね」と言われることの方がもっと嫌だ。みんな私を分かった気になって色々言うよね。私は私のことを何もわからないというのに。ハー嫌だ嫌だ。

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