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さよなら20代、こんにちは30代

もうすぐ30になる。そんなタイミングでテイラースイフトを人生で初めて見に行った。3時間半にも渡るステージで完璧なパフォーマンスをする彼女を見て素直に胸を打たれた。

彼女がカントリーからポップ方向へと軸足を移し始めたのが2012年〜2014年。クラブに行けばいつも彼女の音楽が流れ、宅飲みのBGMでかけると「テイラーかよ笑」と”音楽好きの友達”に嘲笑されるような、そんな大衆的な音楽でありアーティストだった。友達が失恋してヤケ酒に付き合った帰り道、京都の四条通りをWe Are Never Ever Getting Back Togetherを歌いながら「次はいい恋愛するぞー!」と酔っ払いながら2人で走って帰ったのを覚えている。

その後私は社会人になって音楽を聴くことが以前よりも減ってしまい、そんな中で迎えた2020年。緊急事態宣言期間中にNetflixで「ミス・アメリカーナ」と言う作品を見つけた。画面に映し出されるテイラーの映像に興味を持った。そこにはテイラーの飾らない悩みや苦悩が描かれていた。

『政治的な立場を表明したらツアーの動員が半分になる』とマネージャーから言われても「それでも自分はもうこのままではいけない」と立場を表明したり、グラミー賞を逃した時に「実力不足だった、次はもっといいアルバムを作る」とすぐに発言したり、この人は私が思う以上に真面目で、自分の中での正しさに対して素直にあろうとしている人なんだと感じた。

そこからまた彼女の音楽を聴くことが増えそして2024年、彼女の音楽を初めて耳にしてから10年以上が過ぎ、東京ドームで初めて彼女を生で見た。

3時間半にも渡るパフォーマンスを笑顔を絶やさずに歌い踊り走り抜ける彼女を観て、思わず涙をこぼさずにはいられなかった。ヘルシーな美しい魅力に溢れている彼女はとても素敵だった。


コンサートを観ながら色々なことを考えを巡らせていた。特に自分の人生について考えていた。

20代の私は自分を強くすることに必死だった。弱い自分を強く見せるために様々な武器を手に入れる感覚だった。

営業からキャリアをスタートさせて採用に異動し、暫くしてリーダー業務のようなものを担うようになった。個人では会社を立ち上げて店舗の運営をしたり、個人事業主として仕事を引き受けながら、プライベートでキャンプイベントを実施したり、いわゆるプライベートも仕事も両立しているバリキャリ街道をずんずんと歩いてきた。

どうしようもなく傷つくこともあったし、人に迷惑をかけることもたくさんあって、もう無理だと思ってもその度に立ち上がって傷を増やしながらも道を歩いてきた。いざ30を前にして自分を鏡で見ると、随分と強い人間になったなと思う。傷つかなくなったなんてことは全くないけれど、傷を負いながらも立ち上がる術をいくつも身につけてきたような、そんな感覚を持っている。

じゃあ私の30代、まだこれをやるんだっけ?


テイラーのライブを見ながらそんなことを考えていた。私はこの先どうやって生きていくんだろう。もっともっと自分を強くして、できることを増やしていって、その先には何かあるんだっけ。それで過去の私は救われるんだっけ。外側ばかり強くしても、核となる部分が変わる感覚を持ったことは一度もなかった。30代もこのままの自分で行くの?ずっと頭にモヤがかかったように考えていた。


まだ何も自分の中でまとまりきっていないけれど、たぶん答えに近しいものはあって、おそらく一旦私はそういう道をずんずん歩むのをやめて、後ろを振り返って過去の自分にもう一度目を向けて、そして救いに行ってあげなきゃいけないんだと思う。

強くすることばかりを考えて、肝心な自分をどこかに置いてきてしまった。もちろん自分が歩んできたキャリアや経験は間違いではないと思うけれど、一度私は立ち止まって、伏線をちゃんと回収しにいかなきゃいけないんだと思う。そう思うと自然とやるべきこと、自分が身を置くべき環境が見えてくる気がした。

今この瞬間そう思えているのはきっと自分が頑張ってきたからなんだとは思う。なんの基盤もないのにそんなことを考えても、やれることなんてないし救える手段が手の内にはないだろうから。

だからある程度自分が社会人として自立してやりたいことをやれていて、それを他者からも評価されるようになってきたタイミングだからこそ、こういうことが考えられているんだと思う。


20代、自分をパワーアップさせることだけを考えてずっと生きてきたけれど、それと対比させるのであれば30代は過去の弱い自分を救ってあげるような、そんな人生が歩めればいいな。

そうなるともしかしたら今の会社も辞めるかもしれないし、辞めずに今の仕事の中で実現する方法があるかもしれないし、副業や趣味の一環でやるみたいなこともあるかもしれないけれど、少なくとも全ての選択肢に対して自分はフラットでありたいし、何よりもちゃんと自分を救ってあげられるような、そんなキャリア、人生を歩んでいきたいと、そう、これはテイラースイフトのコンサートを観ながら思いました。

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