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“挽肉と米渋谷店”潜入ルポ/食とまなびのブログ

飲食業以外の人と食事をした時に感想を言うと驚かれることがある。
へー!そんな風に見てるんだ。そんなこと考えてるんだといった感じで。
私自身にとってはもちろんこれが普通なのだが面白いと感じてくれる人がいるみたいなので書いてみようと思う。
なんせ面白い店だったので。

「挽肉と米」という大繁盛の有名店だ。
吉祥寺が一号店で、私が行ったのは二号店の渋谷店。
有名な店なので一度行きたいと思いつつ、いつも行列しているので敬遠していた。
その日は夜18時過ぎ。声を掛けてあまり待たずに入れるようなら食べてみようかとビルの3階まで階段を登った。

いやー、面白い店だったなぁ。
仕掛けや工夫が随所に感じられた。
今回私が見つけられなかった工夫がまだまだありそうで再来店したくなる店。(って、そんな人あまりいないだろうな(笑))

まず行列させるのではなく呼び出し時間制。
それまでの時間は自由時間となる。
一件用事を済ませて店に戻ると呼び出し時間の20分前だった。
ちなみにこの時点で“本日満席”の表示が出ていたので私はタイミングがよかったのだろう。
店前で待っていると結局呼び出し時間の15分前に入店出来た。
うーん、なぜ呼び出し時間制にしてるのだろう。
滞在時間を限定しているわけではないので、行列させておいた方が隙間なく埋められ、売りが立つのに。
客としては長い時間行列するより今の呼び出し制の方がありがたいが・・・。
うーん、効率と満足のバランスをどこで取るか。どう工夫するか。
満足以外に何か理由、狙いがあるのかもしれない。
入口担当スタッフのオペレーションはかなり煩雑になり、ここに必ずひとりの人が必要になる。ウエイティングさせて順に案内するだけなら、ここには0.2人で事足りる。
でもまぁ、やりがいがあるポジションにはなるだろうな。自分次第で売上がかなり変わるのだから。
また行ってみよう。

入店すると券売機で食券買うシステム。
めちゃくちゃ見づらいwが、タッチパネルの比較的新しい券売機、なぜか千円札しか受け付けないたまにあるタイプ。
5千円札だった私はスタッフに両替頼んだ。
なぜにここで人件費使うのか不明。
これは理由や狙いはなさそうに思う。もったいない。

券売機の最初の画面に“食べる”か“呑む”かの選択。
これもまた面白い!
ハンバーグ屋で呑む!いいですねぇ!このチャレンジ。好き。
食事系飲食店の悩みの常、お酒を出したいに対する工夫なのかな。
でもこれだけで出数増えるのかと疑問視していたら、今回隣に座っていたお姉さん、お酒飲んでた。かく言う私も飲んでみようかと思ったわけで。効果あるかも(笑)
ちなみに飲もうかと思った理由は他にも照明がある。
照度が低く、全体照明でなく間接、スポット照明だったこともある。
でも、他にも何か仕掛けがありそう。
また行ってみよう。

券売機で“食べる”をチョイスしたら、食事メニューが表示されるのだが、メニューは屋号と同じ“挽肉と米1600円”だけ。
潔く高効率オペレーションが可能な単品商売。
単品商売に券売機はバッチリハマる。
だがしかし、お酒の出数を増やすことは券売機にとって苦手分野。
いちいち食券を買いに行くのがめんどくさくなるからだ。
飲物の複数枚セット販売したら面白いのではないだろうか。

席に案内されるシステム。
ほー!案内するんだ。
なぜ案内するんだろう。
たまたま今回だけかな。
また行ってみよう。

店内は焼き場2つを囲むようにしてカウンター席のみのレイアウト。
ハンバーグが網の上でコロコロと焼きあがっています。魅せますねぇ!

出発待機中のかわいいハンバーグ。焼きあがっています。

焼き場1つに対して12人ほど対応。
1回転4万円。平均滞在時間約30分として10時間営業で1日売上80万円。アイドルタイムで満席率が下がって1日売上65万位かな。月売2000万位かな。
常時6人体制で回すと、人時売上1万円くらいか。

席せまっ!
横幅の大きい私にとってこれは狭すぎる。
両隣の女性の鼻息が顔にかかりそうなくらい近い。
肘が当たりそうなので縮こまって座る。
木製スツールの下部にちょこっとした荷物棚はあるが、大きいビジネスバックは入らない。
残念ながら諦めて、炭火で焼くハンバーグ屋の脂にまみれた床に直接鞄を置く。残念。
荷物用ランチョンマットを出してあげればいいのに。

しかしまぁ、女性客が多い。
ハンバーグ屋の一生の課題、油分をふんだんに含んだ空気との戦いの中、女性客がたくさんいる。
ハンバーグが焼ける姿を見ながら、匂い、そしてこの空気が食欲をそそるわけだが、洋服や鞄には匂いを付けたくない。
シズル感と不満不快のバランスをどこで取るか、どう工夫するかが課題。
店内を見渡して驚いた!
ガラス扉の小部屋がある。
中に何も入っていなければ喫煙所かな?と思う小部屋。
そこはなんとセルフのクロークだった。
大きめのキャリーバックも入れてある。
ガラスの引き戸でしっかりと閉じられているので匂いの付着を防止できるって寸法。

臭い防止のセルフクローク。私は電車の中で余韻を楽しみたい派なので入れませんw迷惑w

なんと他にも鞄用らしき引き戸付きの棚まであった!!
言ってよ!教えてよ!そこに鞄を置いたのに!
いやー、しかし素晴らしい工夫ですね。本当に素晴らしい。
地代の高い渋谷でこのスペースを作るには勇気と決断が相当必要。
焼き場を囲むカウンター式の店だからこそ構造的に空きスペースが出来て可能だったのかもしれない。
いやー、これはうれしい気遣い。
気遣いやこだわりを価値に変換して顧客に伝えるのが接客の役目。
アナウンスに工夫が欲しいところ。

実は他にもガラス扉で仕切られた小部屋があった。
仕込部屋みたいな作業場所。
ここも油か匂いを付けたくないのだろうか。
米かな?ハンバーグ以外だと米と酒と調味料くらいしかメニューにないしなぁ。
ここはちょっと分からなかった。
また行ってみよう。

仕込部屋みたいな場所も小部屋になっていた。

視点を座席に戻す。
カウンターテーブルの下に引き出し収納があるタイプ。
これのハシリってどこなんだろう。表参道ラスかなぁ。
収納の中には箸、塩コショウ?紙おしぼり、そして調味料類の説明書があった。

調味料系の説明書が引き出し収納の中にある。

卓上調味料、ソース類が多種準備されている。
これは単一商品商売でよくあるパターン。
先日行ったナポレオン軒も同じ。飽きさせない工夫、再来店を促す工夫である。

窯玉中華そばのナポレオン軒の調味料類

卓上といっても、カウンターに20cm位の足のついた棚が1人当たり2つ伸びていて、その上に調味料セットが置いてある。
1つ目の棚には、生醤油、モウさんの麻辣辣粉、青唐塩レモン、ジャオマー、青唐辛子のオイル漬け、大蒜ふりかけ。
もう一つの棚には白菜の梅酢漬けと食べる醤油がセットされている。
今回は醤油しか使っていない。
それはなぜかということ、食べ方にアドバイスが入るのだ。

空中に浮いた調味料類。手元スペースを広く確保するための工夫だが、この後、これ以外の理由に気づく

着席すると、初めてのご来店ですか?と確認される。
90gのハンバーグが3つまで提供できること、いくつお持ちしますか?と聞かれたので、当然3つ頼む。(270gは十分な量)
面白い提供方法ですねぇ。
焼きたてを常に食べ続けることが出来る工夫。素晴らしいなぁ。
これ、券売機でチョイスする時に初回来店か否かを選ぶ工程を入れて食券で判別できるようにしたらさらに効率とサービスを向上できるなぁ。
そして、ハンバーグ3つ目の代わりに提供する物(例:一口デザートや鶏団子)を準備しておけば、そっちに流れるお客は多くなるだろう。代わりの物はハンバーグ1個よりも原価の低いものにしておけば利幅を上げながら、バリエーション向上による顧客満足も上げられる。
次に、別の場所にお冷と生卵があり、生卵は1人一つまでどうぞとのこと。
この生卵のセッティング場所がまた面白く、ボールに卵がたくさん積まれていて蓋がしてあるのだが、ボールの下に冷蔵機器?氷?水?か何かで冷やしてある状態になっている。無機質でなく非常に自然で卵が美味しく見えるとともに安心安全に配慮した工夫がある。

たまご1人1個無料。食べるしかない。食べないわけがない。美味しい米に生卵

席に戻る。

白米と味噌汁が提供される。
白米の産地や銘柄の説明があったが内容は忘れた。
2台の焼き台の間に羽釜が5台?ある。
そこで炊きあがった米を持ってきてくれる。
ごはんはおかわりが自由とのこと。
さらに、ごはんが美味しいのでまずはそのままお召し上がりくださいとのこと!自信満々ですな!
どれどれ
挽肉と米という店名から分かる通り米にも並々ならぬこだわりを感じるし、しっかりとそれを魅せ、価値に変換して伝えているのがさすがだと感じる。
結局この後、私は3杯食べることになるww
だってホントに美味しかったのだもの

実は味噌汁も意外と美味しかった。この時点ではごはん少なめだなぁと感じていたが・・・。

目の前のカウンター奥(スタッフ側からは手前)には溝が切ってあり、溝には炭が設置され、炭の上に網が置かれている。
自分用の“ハンバーグ保温器”ということだ。
中央の焼き台で焼かれた90gのかわいいハンバーグが私の目の前の専用網にポンと置かれる。
このかわいさが伝わるだろうか。
愛おしくなり写真を撮る。

まるで寿司屋かのように私のハンバーグがマイ保温器の上に置かれる。ういやつ

白米に続き、ハンバーグでも「はじめは何もつけずにそのままお召し上がりください」とのこと。
ここで気づく。
カウンター奥に設置された自分専用の保温器からかわいいハンバーグを箸でつかみ持ってこなくてはいけない。
いまにも崩れそうなかわいいハンバーグ。
強くは掴めない。
そこには愛が必要になるのだ。
そしてどこに持ってくるのか問題である。
そう
美味しいご飯の上にonするのがこのお店の流儀。
なんとエモいのでしょう!
ツヤツヤの白米の上に崩れそうなハンバーグを愛をこめてonするこの瞬間。
これはこの店の価値が爆発する瞬間だ。
だから、ごはん茶わんの大きさに対して入っている白米の量が少ないのだ!
さらに、ハンバーグを持ってくる時に落としてしまう人もいると思う。
だから、調味料系は足付の台の上に載せて空中にあげているのだ!
取り皿的なものは引き出しの中にあったが、やっぱりごはんの上にのせる方が圧倒的にエモい。
この文章を書いている今も興奮してくるほどだ!はふぅ!
まるでWBC2023の準決勝メキシコ戦で逆転をする前に二塁打を打ち仲間を鼓舞する大谷翔平のようにエモい。

ごはんの上にのせたハンバーグを箸で崩しながら食べていく。
ツヤツヤのごはんはハンバーグの肉汁などで汚れていく。
汚れれば汚れるほど“挽肉と米”が相乗効果をうみだす。
うまい!
まるでWBC2023の決勝でマイクトラウトを三振に打ち取り優勝を決め雄たけびをあげる大谷翔平と同じように、私は心の中で雄たけびをあげた。

一つ目のハンバーグと一杯目のごはんを食べ終わる時、二つ目のハンバーグが供される。
そう、中央の焼き台にはいまかいまかと出発を待つ焼きあがったハンバーグが待機している。
次に私のところに来るのはあの子かな、いやこっちの子だった!

アムロ行きまーす!

もちろん、ごはんのお替りをお願いした。
二つ目のハンバーグとともに供されたのは、鬼おろしの大根おろしとポン酢、そして味噌ダレ?だ。
そうか。二つ目はこれで食べてということね。
受けてたとうじゃないか。
なるほどー、意外としっかりと脂分と下味を感じるハンバーグに大根おろしとポン酢が口直しをしてくれる。
二つ目のハンバーグは食べやすく変身する。
味変カンフージェネレーション(リュウジ)だ。
ハンバーグとごはんは一緒に食べきるのが俺流と言わんばかりに食べきったのだった。

ところで、
カウンターの奥、マイ保温器のさらに奥に木の札が置いてある。
札には数字が書いてある。
これはなんだ?
卓番じゃなさそうだし。
最初私は組人数かと思った。
私は1人だから1。隣の人は二名だから2。
それで提供のタイミングを見ているのかと思った。
でも違った。
残ハンバーグの数だったのだ。
その数が1になった時、私側の側面には「おかわり肉、いかがですか?」の文字が見えていた。
良くできてる!良くできてるなぁ。

おかわり肉いかがですか?の札が私を誘う。この誘惑に打ち勝つ私。素敵。

3つ目のハンバーグを出してくれた人はご飯のおかわりを聞いてくれた。
この一言が嬉しい。
私の体形を見て言ったのでなければw
3つめのハンバーグは、どうやって食べようか。
そう、まだ食べてないものがある!調味料ではない。
最初に取りに行った卵だ。
ご飯に卵を落とし、そこにハンバーグを優しくのせた。
“挽肉と米と卵”の出来上がりである。
結局、棚の上の調味料類はここで醤油だけ少し使った。
次回来店時にいろいろと試してみようと思う。

最高の絵面

あれ?
ベランダがあるぞ。
さらにベランダにはカウンターみたいなのがあるぞ。
ここでハンバーグ食べるのかな。
渋谷の街を眺めながら外で立って食べる挽肉と米はどんな味になるだろう
また行ってみよう。

存分に楽しめた挽肉と米。
次回訪問した時はどう楽しませてくれるのだろうか。

以上が挽肉と米のルポです。
ここまで作りこまれた店を仕上げるのにどれだけの試行錯誤を繰り返したことだろう。
そしてそれを実現していったことが本当にすごいことだ。
深い敬意と強い感謝を捧げたい。

ここまで読んだ方はお分かりの通り、私は食べることが大好きなんです。
飲食店が大好きなんです。
食べてるときは味、美味しさだけでなく、こんなことを考え、感じながら食べています。
井之頭五郎がやってることは私にとっては至って普通のことで、私はいつもあんな感じ。
料理と店と会話しながら食べています。
ひとり外食は苦にならないどころか楽しくてしかたがないのです。

感謝します。
ごちそうさまでした。

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