見出し画像

ごちめし VS みらいの食券

どうも、ごちめし研究家のマサユキです。

アプリごちめしを活用した『さきめし』がメディアでバンバン取り上げられ、おかげさまで登録店・ユーザーさんが激増している今日この頃。

4月20日から開始した新しい前売り券サービス『みらいの食券』が注目を集めています。

そして先日、4月28日。ボクの住まいである熊本の肥後銀行が運営する支援サイト『かせするもん。』において、この両サービスの登録店を対象に支援を募る取り組みが始まりました。

「どちらも同じ前売り券のサービス?どう違うの?」

そんな悩みにお答えしたい!と考えて今回の記事を書きました。少々長くなりましたが良かったら、しばしお付き合いください。

お時間の無い方は『内容はどう違う?』の項だけ見ていただければ、表面上の違いは分かると思います^^

前売り券サービスとは?

コロナショックによる外出の自粛などで今は行けないお気に入りのお店に「後で食べに行くよ!」という応援の気持ちをこめて食事のチケットを先に購入して、落ち着いた後に食べにいこう、という活動を支援するサービスです。(『さきめし』サイト説明文より抜粋)

コロナ期間を乗り越えるために有効な手段の一つとして、2つのサービス以外にも各種ECサイトを利用したお店ごとの活動、クラウドファンディングを利用した販売など全国規模で拡がっています。

影響の深刻化・長期化が懸念される昨今では、購入したとしても店舗が閉店してしまう可能性はあり、その場合の返金などに全て対応するのは現実的に困難なため、寄付や応援といった支援的な位置づけが主流となっています。

ただし、本来であれば後日入るはずの利益を先に回収するわけですので、コロナ明けの営業で弊害もあるのではないか?という声もあり・・・

後半で詳しく書きますがボクが思う『ごちめし』と『みらいの食券』の優れている部分はズバリ、その問題点に各々で対抗できる答えを出しているところ。希望を託すことのできるサービスなのか、判断していただく材料になれば嬉しいです。

内容はどう違う?

まずは具体的なサービス内容について比較していきます。
以下、(G)=ごちめし、(M)=みらいの食券です。

●手数料は?
(G)お客様負担で 10%
(M)お店負担で 決済手数料3.6%+登録料※
※売上の5%か月額5000円を選択。無料トライアル期間が2ヶ月あり。

●どこで購入できる?
(G)アプリ+webページ+購入URL貼付
(M)専用webサイトのみ(店舗ページのSNSシェアは容易)

●販売形式は?
(G)1食分からOK、金額自由の『お値段ごち』も可
(M)3食分・5食分・10食分のいずれか+『お礼の気持ち』
※決済方法はクレジットカード。ごちめしはデビットカードも可。

●有効期限は?
(G)6ヶ月間、ただしコロナ期間中はカウントしない
(M)1年間
※ごちめしは延長決定直後のため、現在システムを調整中。

●お店への入金タイミングは?
(G)Stripe Connectなら毎週(推奨)銀行振込なら毎月
(M)毎週か毎月か選択。どちらも銀行振込。
※銀行振込はその都度手数料あり。
※(M)はコロナ期間中の振込手数料撤廃を宣言

二つのサービスは競合なのか?

結論から言うと競合ではないと考えています。

その本質が全く異なるからです。

ごちめしは『食事をギフトにする』サービス

みらいの食券は『回数券ブランディング』のサービス

そしてコロナ対策として有効である食事代を先払いして応援する機能は、共通の副産物であり、その本質に由来しています。


ごちめしとは

人に食事をご馳走するためのサービス、ごちめし。

そもそもこのサービスは、コロナ対策として創られたものではありません。

ごちめしの内容を解説している今井代表の公式note。その日付は2019年5月。当然、コロナなど影も形もありませんでした。

食事をギフトにすることによって、飲食店に新しい価値を生み出す。

そしてご馳走した人も、された人も、お店の人も、皆が「ありがとう」と言って笑顔になる。

ギフトなのだから、送料や梱包代と同じで手数料は購入者が負担する。お店へ経済的に優しくして、感情の流れを邪魔しない。手数料のパーセンテージは「なんとかギリギリやっていける額」で設定したそうです(笑)

そんな想いを込めて作られた、小さな会社の、お伽話のようなサービス。それがごちめしです。

2020年3月、コロナショックで飲食店が苦境に立たされている状況を目の当たりにした一人のユーザーさんが言ったそうです。

「ごちめしの仕組みを使って、飲食店さんの助けになることは出来ないか」

そうして生まれたのが『さきめし』です。

(現在は期間が6ヶ月から延長されています)
自分自身に食事をごちそうする、という裏ワザのような使い方で、前売り券サービスにしてしまおうという発想でした。そして支援を贈ることは、お店へのギフトであり、手数料を送り主が支払うことを多くの方が素晴らしい!と受け入れてくださいました。

こちらのノートで、経緯を紹介されています。

ボクのnoteでも長々と解説していますので、お時間のある方は読んでみてくださいね^^

みらいの食券とは

元から存在していた『ごちめし』に対して、コロナショックが顕在化していく最中に強い意志を持って創られたサービス。

それが『みらいの食券』です。

喫茶店フリークにはお馴染みの「コーヒーチケット」に良く似た性質があります。馴染みのない方のために説明すると、5回分の値段で6回分のコーヒーを飲むことが出来る、といった感じで少しお得な回数券チケットです。1枚のみの購入は出来ず、3枚・5枚・10枚のいずれかから選べます。

google先生に「コーヒーチケットのメリットは?」と聞いてみたらこんな回答が出ました。

集客と売上の向上に役に立つアイテムという感じはしますね!

しかし全てのお店が使ってないということは、それなりにデメリットもあります。よく言われるのが

①管理の手間がかかる(お店・お客両方)
②金額が大きくなるので買ってもらえない
③そもそも作るのが面倒でコストもかかる

といったところでしょうか。

さて、カンの良い方ならお気づきかと思います。

この3つのデメリット、webサービスなら解決できるのです。

①と③は管理会社が代行してくれるので、スマホ画面でらくらく
②は3枚・5枚・10枚から選べるので価格調整がしやすく、店頭販売ではなくweb上のプラットフォームなので購買への導線もデザインしやすい。

お店にもお客さんにもメリットが大きいサービスなのです。

それだけではありません。

みらいの食券の古庄代表は、元飲食店経営者。そしてPREO DESIGN『ブランディング会社』の代表でもあります。飲食店のコンサルタントや新サービス開発の専門家です。

ブランディングとは「本来あるべき価値を、正しい顧客に正しく伝える」ことであると、この方は語ります。

そのような人が創るサービスがただの『現代版回数券』のサービスに留まるハズはなく、様々な仕掛けが施されています。個人的見解なので恐れ多いですが、3つほど紹介してみます。

1.お礼の気持ち
食券には『お礼の気持ち』という特典がつく決まりになっています。こちらは特に指定はなく、お店が自由に設定できます。単純に一回分サービス、のようなお得なものでも良いし、新メニュー試食券や看板娘のスマイル券など独自の付加価値をつけても良いというものです。

これによって起こる思考は何か。店主はこの状況の中で改めて「うちのお客様はどんなサービスをつければ喜んでくれるのか」に向き合うことになります。そしてお客さんの反応を介して、お店には何が求められているのか、を知ることができます。

それはきっと、コロナの苦境を乗り越えてお店を続けていく上で大きな武器になる。だからこそ、試行錯誤して見つけて欲しいという願いが込められたデザインなのです。

2.広告効果

食券販売プラットフォームとして非常に使いやすい・分かりやすい作りになっているのも特徴です。

アクセスする度にお店がランダムに表示されるトップページ、広告の排除、クラウドファンディングを彷彿とさせる『ファンを作る』店舗ページ、食券販売ページを切り分ける事で新規・リピーター両方の使いやすさの確保、公式ツイッターでの定期的なお店紹介etc・・・

工夫を上げたらキリがありません。正直、飲食店紹介サイトとして使っても楽しめるレベルです。

つまり飲食店は『みらいの食券』に登録することで雑誌や紹介サイトに掲載するような告知ができるということ。ホットペッパーさんみたいな感じですね。その割には価格が良心的すぎますが。

そしてこれは、苦境にある中でSNS等を使った戦略を取りたくてもノウハウや拡散力がない、といった地方を中心とする個人店さんへの救済措置としても機能しています。

3.店舗に寄り添った姿勢

飲食店さん向けの紹介ページ。これを見た時は目を疑いました。

申込フォームを送信後、本登録の作業は「オペレーターが連絡」します。さらに食券や掲載内容でお悩みの場合は「コーディネーターがサポート」します。

いやいやいや。

この会社の技術力なら、フォームとメールでの一括作業やチャットボットによる手順簡略化などでサクサク登録を進めていくのが当たり前じゃないかなと。

それをあえて、時間のかかる個別対応。まさか電話なのか?問い合わせも電話で受付。更に掲載内容や食券のアイディア出しまでコーディネート。全国展開する事業をベンチャー企業が担った上でのこの対応、運営にかかる負荷は想像を絶するはずです。

とことん飲食店さんに寄り添い、使ってもらうからにはそのポテンシャルを十全に使ってもらおうという覚悟が凄い。

ましてやこの状況です。先への不安から厳しい当たりを受けることもあれば、全力で寄り添った店舗さんにとって辛い局面に遭遇するかもしれません。その想定をしていないとは、とても思えない。

全て覚悟の上。その場凌ぎではなく、未来に繋がるブランディングのためには必要な事だという判断。こんなの、応援せずにはいられないですよね。

他にも仕掛けがいろいろありそうですが、長くなりすぎたので一旦次の話に。

共通点と相違点、それぞれの長所

●共通点は?

二つのサービスの共通点は、お店とお客様の『関係性』にアプローチしていることです。

片や好きなお店の食事を贈りものにすることで、片や好きなお店に何度も通う約束を取り付けることで、より互いの関係が密になるよう設計されています。サービスの起点が常連さんや、既にある程度以上にファンとなっているお客様なんですね。

そしてその効果を最大限に発揮するには、実際にサービスを受けるよりも早いタイミングでお店に入金がなされる仕組みであることが必要で、それこそが今コロナ対策として有効な手段のひとつである『先払いでの応援』に繋がっているのです。

そしてその関係性は、コロナが明けた時にも非常に良い効果を発揮します。

一般的に言われる「前売り券サービスなので、後からが厳しくなる」というご意見。それは、お客様が協力的でない場合の話です。『ごちめし』や『みらいの食券』を利用して前売り券を購入した方の願いはお店が存続することで、それはサービスを使う過程でより強くなります。

まるでお店が自らの財産であるかのように。その方々がお店を追い詰めるような行動を、果たしてするでしょうか?

そもそもコロナ後も継続して利用できるサービスなので、お店が安定するまで買い支えを続けるといったことも可能です。

それでも対応や状況次第では厳しくなるお店は、絶対ないとは言えません。ですがそれを可能な限り避けられるよう設計されている意味は大きいと考えています。

●違う点は?

そもそも利用料金を請求する相手、つまりサービスにとってのお客さんが異なります。

『みらいの食券』のお客さんは、飲食店です。そちらから手数料や登録料をいただきます。だからこそ、先に説明したようなお店に寄り添ったサービスとして展開しています。

では『ごちめし』のお客さんは誰でしょうか?

こちらは、飲食店を利用するお客様が対象です。本来の立ち位置は飲食店向けのフードテック事業のハズなんですが、受益者は誰なのかという事をとことん考え、お店に優しいサービスにしようとした結果、サービスの対象自体が入れ替わってしまっているんですね。非常に面白い現象だと思います。

前売り券販売サービスとして言うなれば

「危機を乗り越えようとする飲食店の助けになる」

のが、『みらいの食券』で

「飲食店を救いたいお客さんの願いに応える」

のが、ごちめしの『さきめし』です。

●それぞれの長所

お客様が主体となって使う『ごちめし』は、自由度の非常に高いサービスです。

お店さんがアプリの基本構造を理解してくれてさえいれば、お客さんは自分なりの応援をすることが出来ます。

現在だと普通の飲食店を子供食堂として機能させてみたり、応援したいお店の前売り券に似顔絵の特典を付けて販促するファンの方がいたりします。

手数料を割合を考えるとオンラインイベントの投げ銭機能としても優秀ですし、例えば「YouTuberにファンの皆で好物の牛丼を奢りまくる」といったエンタメ性の高い使い方も可能です。しかもそれがキッチリ飲食店の支援になる。

自治体や大手メーカーさんも拡散に力を貸しやすい仕組みになっています。

ただ飲食店さんからすると、ご自身の提供するサービスがお客さんの手で勝手に独り歩きをしているような、妙な気持ちになるかもしれません。

ですがこれは「誕生日のお祝いに貴方の店を使いたい」とか「友達を元気づけたいのでココのご飯を食べさせたい」といった昔からある流れの延長線上にあるものです。

どうか誕生日用の特別メニューを作るような感覚で、お店とお客さんの両方が盛り上がれるよう促してもらえたらと思います。

一方の『みらいの食券』の長所は、なんといっても分かりやすさと安心感です。

基本的には昔から馴染みのある方式をより洗練して使っているので、飲食店さんもお客さんも「ああ、そういう仕組みですね」と安心してパッと使うことができます。

そして先に申し上げた、全力で寄り添うサポート体勢。さらには直感的に理解を促すデザイン性。

とにかく、とっつきやすいです。

どちらのサービスを使うべきなのか

正直、これは意見の別れるところだと思います。お店をよく知る店主さんや常連さんでも

「こっちがウチのお店に向いているサービスだ!」

というのは判断が難しいはず。最終的には、単純に好みかもしれませんね。

ボクとしては、ここで第3の提案をしたいと思います。すなわち。

両方使ってみてはいかがでしょうか!!

実はそれぞれのサービスには短所もあります。

『ごちめし』は革新的なサービスであるが故に、正直言って運用には割とコツが必要です。

幅広い運用のできるシステムが裏目に出て、飲食店さんやユーザーさんから「よくわからない」という声はしばしば届きます。

ちなみにTwitterで「ごちめしわからない!」と呟くと、もれなくボクが助けに現れます。気をつけてください。

認知や理解、システムも含めまだまだ発展途上のサービスです。それでも理念に共感していただく声は多く、お客さん達の熱意が軽々と壁を乗り越え、想いの受け皿として現在大活躍しています。

『みらいの食券』はリリース直後であるにも関わらず、非常に完成度の高いサービスです。それ故にどうしても使い方は限定的になります。

具体的には『取りこぼし』が出てきてしまう、ということです。

例えば、1食分だけ支援したい人は買うことが出来ません。1枚のチケットを販売してしまうと、ブランディングに繋げることができないからです。また、10枚と言わず大量の食券を買って支援したい!と言う人も少し難しいです。現実的に、使い切るまでに時間がかかり過ぎてしまうためです。

2つのサービスを併用することで短所を補い、長所を伸ばすことが出来るのではないかというのが持論です。

1食分だけでも支援したい人は『ごちめし』で手数料をかけて購入することで、想いを届けられます。もっと多くの支援を届けたい人は、知り合いにギフトしたり応援企画を立ち上げることで、より強い応援ができます。

前売り券サービスそのものや、お客様から手数料を貰うことに抵抗があるお店の方は『みらいの食券』を利用することで理解を深めることができます。Webでの販売戦略やお客様の心情について、コーディネーターの方と協力して前を向いて臨むことができるハズです。

2つのサービスを利用することで、それぞれの強みを生かしたメニュー設定をすることも可能になります。お店側とお客さん側の両方から、守るための手段を講じることが可能になるのも大きいです。

なにより、利用料がかかりません。『ごちめし』は永続的に店舗負担はありませんし、『みらいの食券』も2ヶ月の無料トライアルと緊急事態宣言中の振込手数料無料という対応をしています。無料期間が過ぎてもかなり良心的な設定だと感じています。

ただデメリットとしては登録・管理・運用の習熟・告知などの手間が2倍になってしまうことですので、こちらに関してはあくまでもご無理のない範囲でのご利用をお勧めいたします。

一応、登録と習熟さえしてしまえば、後の負担は比較的少ないとは思います。

飲食店の皆様、導入を検討してみてはいかがでしょうか?

そして飲食店を守りたい皆様、お店の方に勧めてみてはいかがでしょうか?

おわりに

『ごちめし』の代表である今井了介さんは、数々の名曲を手掛けた高名な音楽プロデューサーです。

その今井さんがフードテックサービスに携わることになったキッカケは、東日本大震災でした。

その惨状を目の当たりにした時、被災者の物理的な助けになることができないという、音楽家としての無力さを痛感したそうです。

「音楽では、飢えも寒さもしのげない」

音楽が人の心を満たす素晴らしいものだと信じていたからこそ、一時はその道を諦めようとする程に悩み苦しんだ、とnoteに綴られています。

人の生活の基盤となる、衣食住にまつわるような仕事に関わりたい。もしまたこのような大災害が起こった時に、慌てて何か始めるのではなく『普段から誰かを応援できる仕組み』を創りたい。

その想いを抱き、北海道帯広のとある飲食店に出会い、その発想と名前を受け継いだ。それが『ごちめし』のルーツです。

一方で『みらいの食券』代表の古庄伸吾さんがブランディング特化の事業をはじめたキッカケは平成28年熊本地震でした。それ以前はデザインの受注を中心とした業務内容だったそうです。

被害の大きかった阿蘇にお住まいの古庄さんは、激しい揺れの最中に3人のお子さんを抱えてご自宅を飛び出し、そのまま避難所での生活を余儀なくされました。

避難所生活の中でずっと古庄さんが考えていたのは『これから先の自分の役割』。熊本ではこの先消費が落ち込み、今まで普通に売れていたものが売れなくなってしまう。そこに立ち向かう時、上っ面のデザインだけでは足りない。自分はこのままでいいのか。そして辿り着いた答えがブランディング構築支援だったそうです。

それから古庄さんはブランド・マネージャーという資格を取得し、商品の魅力を正しく伝え『売れ続ける仕組み』を創る道を歩み始めました。

そして今年の3月上旬。飲食店の助けになることを決意し、会社としては通常通りコンサルによる支援を続けながら、全国から仲間を集めて新たなチームを作り、全速力で新サービスを創りあげます。これが『みらいの食券』のルーツです。

コロナによってもたらされた、多くの苦難に立ち向かう人達の力になりたい。その想いはきっと、どちらも同じであると信じています。

とても長くなってしまいましたが最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

頂戴したサポートは、全額ごちめしに投入し、飲食店支援に回します。良かったらご協力をお願いします^^