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月が出た、出た、月が出た。行ってみれば、何もない死の世界、こわ。

 また一日が終わった。
 考えてみれば、ずっとこうだった。
 こどもの頃、フッと死んだら、自分はどうなるんだろうと不安に思った。
 少し大きくなって、いろいろ忙しくなって、それどころじゃなくなった。
 結論はない、あるいは、どうしようもない。
 西方浄土とか、天国、地獄って言っても、信ずるに足らない。
 誰も行ったことないし、行った人は帰ってこない。
 知り合いの人たち、みんなに近いぐらい、ほとんど逝っちゃった。
 父母、義父まで逝ってしまった。
 最期は、テレビでみるようなもんじゃなかった。
 ひとそれぞれなんだろうけど。
 しかたない。
 いずれ順番が回って来る。
 月を観ると、そうしたことが心静かに思えてくる。
 どんな形で死んでいくか、わからない。
 しかし、死ぬんだ。
 覚悟を決めようと思っても、どうにもならない。
 お経を読もうが、神に祈ろうが、やがてみな死ぬ。
 メメント・モリ
 それまで愉快に暮らそう。
 死が二人を分かつまで、最愛の妻と!
 月見れば ちぢにものこそ 悲しけれ わが身一つ 秋にはあらねど
                   大江千里
 また明日が愉しみ。

日暮れ前の月

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