11月6日(月)「漁師料理・どぶ汁」
今日の東京は曇り、のち晴れ。でも、全般的にお天気は少々荒れ気味。
最低気温は17℃、最高気温は25℃近く迄上昇。
先週末以降、11月だと言うのに日中は暑い日が続いてますね。ホント、11月だと言うのに。
今日から、富山県以西の日本海側でのズワイガニ・セイコガニ漁が解禁ですね。いよいよ、海も冬の食材に移ろいつつあるようです。因みに、ズワイのオスは3月20日迄、メスは年内いっぱいが漁期となります
昨日、一色さかな村の魚屋さんでの短い修行(?)を終えて東京に戻りました。東京での新たな修行先を今週中に見付けなきゃ(笑)。さて、
先週末には「有害鳥獣・ツキノワグマ」についてお伝えしましたが、今日は「漁師料理・どぶ汁」について書いて行きたいと思います(冒頭画像はコチラから拝借しました)。
どぶ汁。
ナニやら、きったない、そしてヒドい名前ですねぇ。
コレは常磐沖(茨木北東部の常陸(ひたち)と福島南部の磐城(いわき))、即ち南から来る黒潮(日本海流=暖流)と共に北上して来た様々なおサカナが、北から流れ来る親潮(千島海流=寒流)の豊富なエサ(プランクトン)を食べて大きく育つ豊かな海、で獲れたアンコウを素材にしたこの地方の漁師料理であり、郷土料理なのであります。特に、茨城の大洗辺りが有名ですね。大洗のみならず、常磐近辺ではフツーにアンコウ鍋とか言って、家庭でも食べられているモノではあります。
この鍋の特徴的なトコロは、水を使わない鍋物であるコト。
コレは漁師料理ならではと言うコトなのですが、元々は(昔は、でしょう)アンコウ自体にはソレほど商品価値がなく、漁師が船上で暖を取る為に食べ始めたモノだと言われています。先ずはあん肝を鍋に直接煎り付け、ソレに味噌を加えた後に、ぶつ切りにしたアンコウと主として根菜類を入れ、アンコウと野菜から出る水分のみで煮込む、と言うモノです。
従い、濃厚で旨味たっぷりな味わいの鍋になる、と言うワケです。
このネーミングの由来には2つの説があるようで、一つ目はあん肝から溶け出した汁がどぶ(濁った水)のように濁るから、と言う説。
もう一つは、この鍋ではアンコウの七つ道具(身・皮・ヒレ・エラ・あん肝・胃袋・卵巣)を全て使うから、「すべて」と言う意味のある「どぶ」と言うコトバを取ってどぶ汁、と言う説。
ただ、ネットで色々調べてみても、「どぶ」には道路脇にある側溝(そっこう)や汚水を流す渠溝(きょこう)を表す意味の方が圧倒的に多く、「すべて」と言う意味でヒットするのは何故か「どぶ汁」の解説記事のあるトコロのみ。ホントに「全て」なんて言う意味があるのかな?広島弁で「どぶ」が内臓を意味するみたいなコトが書いてあったけど、ソチラの方がドチラかと言えば信憑性が高いような(笑)。
とまぁ、色々とありますが、作り方は至ってカンタン。
アンコウと言うと、やれ吊るし切りだとかナンとかで、偉く高等技術を必要とするように思われがちだけれども、自分流でヤル場合には、キッチン挟と出刃だけで捌くコトが出来てしまいます(多分、誰にでも出来ると思います。失敗しても、鍋に放り込んで煮込んでしまえば同じなので)。
基本的に漁師料理なので、繊細な細工は不要。
キッチン挟で腹を開いて内臓を取り出す。内臓にはアニサキス等が付いているコトが多いけれども、コレは目視で取り除くことが出来るので、ソコは適宜実施(ただ、どうせ火に通せば、アニサキスが悪さをするコトも無い(と言うか死んでしまう)ので、然程慎重にヤル必要も無し)。
アトはヒレと皮をハサミでチョキチョキし、エラを外し、頭は出刃で落として、一口大に断ち切る。
枝肉になったモノは出刃で2枚におろし、ぶつ切りにするだけ。
内臓は血合いや内容物等を取り除いて、鍋に放り込めるようにしておく。特に胃袋と肝臓(あん肝)は丁寧に。出来れば、七つ道具には数えられていないけれども、腸だって食えるのでキレイにお掃除。
アトは上述の手順の通り、あん肝を煎り、味噌を入れ、アンコウ・野菜を入れて煮込むだけ。
自分はアンコウの一番美味い部分は、柳肉(白身部分)ではなくて、コラーゲンたっぷりのぶるぶるの皮とヒレ、ソレに内臓とホネ(骨をぐしゃぐしゃと食えば美味いエキスが出て来るんです)だと思っているので、自分ちでヤル時には豊洲市場に行き、アンコウ1匹買いをするのではなく、柳肉を除いたアタマと内臓だけで300円程度で売られているソレ(ソレでも2~3㎏はあるので、十分な量が取れる)を使う。そうすれば、もう格安でどぶ汁を作るコトが出来るんです(コレは結構な裏技ですね)。
あん肝とアンコウ本体、そして野菜から出た出汁は濃厚そのもの(汁っ気はあんまりないけど)。美味いです。
寒い時季には、そんな廃物利用的な「どぶ汁」も出せたらエエですね。
と言うコトで本日はこれにて。
明日は「未利用魚・ハシナガハモ」(←コレは相当に珍魚です)についてお届け予定です。