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スティーブ・ジョブズが見出した「マーケティングの価値」とは

こんにちは、西村マサヤです。


先日書いたマーケティングのnoteが非常に好評で、引き続きマーケティングに関するnoteを書いてみたいと思い、今日はスティーブ・ジョブズの話をします。


時は1997年。

当時倒産寸前だったAppleに、ジョブズが戻ってきました。

着任早々、わかりづらくセクシーでない製品たちを次々と廃止し、これまでとまったく違う革新的なコンピューター「iMac」を発表するなど、凄まじいスピードで改革を推し進めていったわけですが、実は彼が真っ先に着手したのは「ブランドキャンペーン」でした。

離れてしまった顧客の「心」をAppleに振り向かせるために、「Appleとは何者なのか」「Appleは何を信じているのか」そういったメッセージによって、自社のブランドをもう一度復活させようと試みたのです。

その結果、誕生したのが『Think different』

クレージーな人たちがいる
はみ出し者、反逆者、厄介者と呼ばれる人達
場に馴染めない人達
物事をまるで違う目で見る人達

彼らは規則を嫌う 彼らは現状を肯定しない

彼らの言葉に心を打たれる人がいる
反対する人も 賞賛する人も けなす人もいる
しかし 彼らを無視することは誰にも出来ない
何故なら、彼らは物事を変えたからだ

彼らは人間を前進させた

彼らはクレージーと言われるが 私たちは天才だと思う
自分が世界を変えられると本気で信じる人達こそが
本当に世界を変えているのだから


このCMの素晴らしさについて語りだすと止まらなくなってしまうので割愛しますが、実はこのCMが完成し、ジョブズが社員にお披露目した際の映像が残っています。この社内プレゼンはあまり知名度はありませんが、「マーケティング」に関するジョブズの価値観を表す非常に貴重な動画です。

今日はそんなジョブズの社内プレゼンをまとめてみました。

ちなみにこの社内プレゼンの直前、彼は深夜までCMの最終チェックをしていたそうで、見るからに顔が疲れています。(プレゼンの冒頭で「朝の3時までCMのチェックをしていた、と話しています)

しかし、話し始めるとどんどんエネルギッシュになっていく点も見ものです(最後にYouTubeのリンクを入れています)

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私にとってマーケティングとは価値そのものだ。

この世界はとても複雑で雑音も多い。人々に我々のことをちゃんと覚えてもらう機会も簡単には得られない。どの会社もそうだ。だから、我々の何を知ってほしいかを明確にしておく必要がある。

現在アップルは、幸運にも世界中でベスト五に入るブランドになっている。ナイキ、ディズニー、コーク、ソニーと肩を並べているのだ。とびきりすばらしいブランドだ。アメリカだけでなく世界中で。そんな偉大なブランドも顧客との結びつきや活力を維持するためには投資とケアが必要になるが、アップルのブランドはこの何年間か、それを怠ったためにもがき苦しんでいる。

我々はブランドを復活させなければならない。
その方法は、コンピュータのスピードについて語ることではない。ミップス(コンピューターが一秒間に一〇〇万個単位の命令をいくつ処理できるかを表す単位〕やメガバイトのことでもない。我々がウィンドウズよりもすぐれている理由を話すことでもない。

マーケティングの歴史における最良の例にして、もっとも偉大な作品のひとつはナイキだ。
ナイキはコモディティ(日用品)を売っている。靴だ。だが、人々がナイキについて考えるとき、ただの靴のメーカーとは思っていないはずだ。彼らは宣伝で価格について語ったことがない。自社のエアソールがどうだとか、リーボックと比べてどこがすぐれているとかは話さない。ではナイキは広告で何をしているのだろう?偉大なアスリートをたたえ、偉大なスポーツをたたえているのだ。それがナイキであり、ナイキはそのためにあるのだ。

アップルは大金を広告に使っている。みんなは気づかないだろうがね。……私が戻ってきたとき、アップルは代理店をクビにして、二三社に競いあわせ、実に四年をかけて一社を選ぶ予定だった。それを我々が吹き飛ばして、シャイアット・デイと契約したのだ。あそことは何年も前に一緒に仕事をしたことがあるし、広告賞をとった作品をいくつも作っている。その中には広告関係者の投票により史上最高の広告に選ばれた、わが社の『1984年』のCMもある。

ふたたび一緒に仕事をしはじめた我々は次の質問をした。顧客は知りたがっている。「アップルは何者で、何を象徴しているのか?この世界のどこにいるんだ?」。我々の存在理由は、人々の仕事に役立つ箱を作ることではない。もちろん、うまく作れる。ときには誰よりもうまく。だが、アップルはそれ以上の何かなのだ。アップルの中核にあるものは、そのコアバリューは、情熱を持った人間は世界をよりよく変えられる、と我々が信じていることだ。……そして、自分が世界を変えられると思うほどクレイジーな人たちが、実際に世界を変えているのだ。

そこで、この数年で我々が計画する最初のブランド確立キャンペーンそのコアバリューに戻ろうというものだ。多くのものが変わってしまった。マーケットも一〇年前とでは様変わりした。アップルもがらっと変わったし、アップルがいる場所もまったく違う。……だが、価値は、そしてコアバリューは変わってはいけない。アップルが心から信じていることと、今日のアップルが象徴することとは同じなのだ。

だからこそ、我々はこれを伝える方法を見つけたかった。今、ここに用意したのは私が強く心を動かされたものだ。それは世界を変えてきた人々をたたえている。存命の人も故人もいる。故人も、もし彼らがコンピュータを使っていたとしたら、きっとアップルだったはずだ。このキャンペーンのテーマはThink differentだ。物事をまるで違う目で見る人たちをたたえ、世界を前進させた人たちをたたえている。そして、このメッセージこそ我々そのものであり、わが社の魂にふれるものだ。

みんなも私と同じように感じてくれることを願っている。


僕がこのジョブズのプレゼンから感銘を受けた点は3つです。

1. ジョブズはマーケティングを集客や広告ではなく「価値創造」そのものと捉えていた

2. ジョブズは製品の機能面ではなく「情緒的な価値」を訴求すべきと考えてた

3. ジョブズはマーケットがどう変わろうと、コアバリューはブレてはいけなと信じていた


僕は常々スティーブ・ジョブズという人間は最高の経営者であり、「最高のマーケター」だと思っているのですが、そのエッセンスが濃縮されたプレゼンだったように思いました。

テキストより動画だとより迫力のあるメッセージになっているので、ぜひ観てみてください!


プレゼンの日本語原稿は『Think Simple』に掲載のものを一部修正、省略しました。

『Think different』に関する様々なエピソードも載っている素晴らしい一冊です。


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