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2021年 新年の挨拶

新年明けましておめでとうございます。

 2020年は新型コロナウイルスにより、経済も使用者・労働者、多くの方が先行きが見通せない不安感を抱き、あらゆるもののあり方や考え方、価値観が大きく変化した年でありました。そんな中、社労士は雇用調整助成金を中心に雇用危機を回避するための提案サポート、在宅勤務の導入支援、再就職の支援等、業界全体でコロナと向き合った年でもありました。西村経済再生大臣の会見の中で「社労士」という発言もあり、労務管理の専門家として雇用の維持を守るための活動を期待している、というメッセージは大変印象深かったです。もし仮に、社労士という国家資格者が存在しなければ、雇用調整助成金の利用は少なく、2021年の新年を迎える時の景色は今とは違っていたと思います。

2021年は業務のデジタル化がより加速する。

 2020年の年末に、算定基礎届・賞与支払届の総括表が廃止される、という通達がありました。
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T201222T0020.pdf

2018年7月20日に改定されたデジタルガバメント実行計画に以下の内容が記載されています。

行政サービスの 100%デジタル化を実現するため、各府省は、所管する各手 続について、以下の 1)~4)の見直しを検討する。内閣官房は、各府省の協力を 得て、行政手続等におけるオンライン化の徹底及び添付書類の撤廃等を実現す るため、「デジタルファースト法案(仮称)」を速やかに国会に提出する。また、 内閣官房は各府省の協力を得て、マイナンバー制度等の既存のインフラを活用 しつつ、行政手続のオンライン化や行政サービスに係る受付・審査・決裁・書 類の保存業務のデジタル処理を可能とするとともに、国や地方の行政機関間の 情報連携の仕組みや民間を含めた情報連携を可能とするシステム等の在り方に ついて検討を行う。各府省は、当該検討の結果に基づき順次システムの整備を 実施する。 取組に当たっては、内閣官房(IT 総合戦略室)及び総務省は、内閣官房の他 の組織及び内閣府とも連携し、政府一体となった取組を推進する。

当時、私はこの資料を見て、

「算定基礎届の総括表も無くなるといいな」

と思っていました。デジタルガバメント研修等で登壇した際、

「添付書類撤廃するのであれば算定総括表、附表も無くすべきでは!?」

と言っていました。

 毎年7月の4月、5月、6月の給与平均値を集計する作業は、パソコンが得意とする分野。弊社の台帳のようなソフトが自動集計します。でも算定基礎届の総括表や附表は自動集計した内容をそのまま記載するわけにはいきません。社会保険に未加入の人やフリーランスの人、手当項目の定義などしっかり内容を把握しておく必要があります。したがって、年度更新、算定基礎届の提出が重なる繁忙期は、5月、6月に総括表、附表を素早く作成できる準備が、何よりも大事なポイント。工数や労力がかかることから「算定の総括表はなくなって欲しい」と思っていました。

でもまさか本当に廃止されるとは思っていませんでした(笑)
本通達を見た瞬間、

「やった!!」

と思いました。これで算定基礎届の業務負担が一気に軽減されると。


でも自分の中で喜びは一瞬で消えます。

それはなぜか。

理由は2つあります。


その1、年金事務所の行政調査。

 毎年、何件かの顧問先が年金事務所からの行政調査があり、6月、7月は定時決定時調査で多くの事業所が調査の対象となります。この行政調査の提出書類として、総括表や附表の提出が求められていましたが、今後は、総括表、附表が存在しないことから、調査官は別の方法で社保の未加入者、報酬支払・勤務状況、賞与支払月を把握することになると思われます。どのような方法で把握するのかはわかりませんが、私は、デジタルガバメントの実行計画や「デジタル」という言葉にヒントが隠されている気がします。行政内の方針は、内部の方にしかわかりません。現時点で掘り下げて考えることは置いておいて、顧問社労士としてやるべきことは、今まで以上に社保未加入者の状況をしっかり把握することだと思います。特に、週20H以上〜週30Hで社保に未加入の人がどれくらい存在するかは今後対象者が増えていく見込みですので、必ず把握し事前周知が必須です。ジョブ型や副職が話題になっていることからフリーランスのチェックも必要です。そしてなんといっても賞与支払月です。これまで賞与支払届は、新規適用時と算定基礎総括表の2つで支払月が管理されていました。行政が把握している賞与支払月がいつなのか、実際に支払れた月がいつなのかをしっかり把握しておく必要があると思います。

その2。健保組合。

数年前、協会けんぽに加入している事業所は、氏名変更届、住所変更届の提出が不要となりました。この背景はマイナンバーで年金機構とJーlisの連携ですが、健保組合加入の事業所は、マイナンバー連携が整備されていないため、現在でも氏名変更届、住所変更届の提出が必要です。今回、算定基礎届の総括表、賞与届の総括票廃止は、「年金事務所&協会けんぽ」の組み合わせのケースであり、健保組合加入事業所は、健保組合の方針により、総括表が廃止にならない場合もあると予想されます。


社労士業務への影響

私は、今回の「算定基礎届の総括表が無くなる」ということは、社労士業務にとってとても大きなことだと思います。

社会保険に加入しなければいけないのに未加入の人はいないか?
月変に漏れはないか?
報酬月額が登録されているか?
2カ所勤務の合算額を正しく把握できているか?
賞与届に漏れはないか?
賞与支払月は把握しているか?

これらチェックをしっかり行ない、もし不備があれば、顧問先に指摘して指導し、改善できない事情があるのであれば、どうしたら改善できるのか、いつまでに改善するのかを顧問先に寄り添いながら共に考える。どうしても社会保険に加入できないというケースは、決算書を見ながら人件費、粗利の割合をチェックし、税理士と一緒に対策を考えることも必要だと思います。
顧問社労士として、今まで以上に、毎月の給与データを収集して社保未加入者、賞与支払状況をしっかり把握するとともに、社保未加入者の指導を強化しなければならない、と思います。


当たり前のことを当たり前に行う重要さ。

社会保険の加入手続き、事務処理手続きを正確に正しく行う。社労士事務所としてのやり方云々や顧問先との関係性や顧問先の財務状況に左右されることなく、人事労務管理のプロとして、当たり前のことを当たり前に行う。経営者にとって顧問契約ほど分かりにくいサービスはありません。この当たり前のことを当たり前に行うことが、顧問契約サービスをわかりやすく説明するための1歩だと思います。

私たちセルズは、雇用危機を回避するための提案・サポートをする社労士の先生方を支援するためのプロダクト ・サービスを研究し続けていきます。また、社労士の先生方が顧問先に当たり前のことを当たり前に行うためのサービスを今の時代にマッチしたやり方で簡単に誰にでもできる方法を研究していきます。

お客様や社労士業界にとって2021年が素晴らしい年となりますようお祈り申し上げるとともに、引き続き、セルズをご支援賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

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