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『百年のお裾分け』(3):決意

Sさんは母の親友だ。時折道で会うと母のことを話したり庭を一緒に見てくれたりした。母が亡くなった2016年以降のことである。

先日、お宅の前を歩いていたら、玄関先に娘さんの夫さんがいたので、「お母さんはお元気か」と声をかけたら、お元気とのことで、家に上がっていってくれという。お父さんが少し前になくなって、外を歩いている姿を見なかったので久しぶりにお会いした。もう少ししか歩かなくなり、手には浮腫が見られステロイドを処方されたという。歩くのも難儀だとお聞きした。翌日「3食御家族のセット」をお持ちしたら大感激であった。

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シラコとマダラ子の煮付け、鳥の地獄焼き、バラ肉のネギ焦がし、レバニラ、玄米の豆炊き込みご飯、保温鍋ロールキャベツ

長期モニターをお願いした。

僕は「百年のお裾分け」というビジネスを始めたいと思っていた。しかし、まだ本当に買ってもらえるのか、200万近くの投資が必要になるのに果して前にすすめるのか不安であった。妻とも大喧嘩になり、どうして良いのか分からなかった。

娘さんは少し離れたところから介護に通っている。食事も作るが、どうして良いのかわからないという。まさに僕の2016年の頃の姿だ。

介護は家族を壊す。逝った老人も、残された家族も辛い。僕は母と最後の言葉もかわさないで別れた。愚かさから父をとてもつらい思いをさせて逝かせた。かつて介護が家庭で閉じていた時代は様々な知恵がそこにはあったのだ。今は「自宅介護という家族をめちゃくちゃにする悪魔」と出会って、どうして良いのかわからないままに医者や介護施設に任せてしまう。そこでは心を殺す薬をもられ、年金ATMとして生かされるのだ。
僕は運が良かった、父と5年毎日食事を作りながら過ごせたのだ。そして、介護は悪魔ではないと気がついた。学びなのだ。これから自分に来る運命を教えてくれるものなのだ。親は子に多くのことを教える。最後に、「死が間違いなく訪れること」を教えてくれるのだ。そうすることで、自分がどう生きるかを知るのだ。

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今日のおかずのギスを食べて美味しいという。山育ちだけど魚が好きだったのだそうだ。親戚に大きな魚屋さんがいたという。

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今日の献立は、ギスの唐揚げ、魚2種、イカのソテー、ヤリイカのヤワヤワ煮、牛すじの保温ねべ煮込み、汁である。いずれも僕の家の家族が食べるもののおすそ分けである。

Sさんは食べながら僕の母の話をしてくれた。母が、僕を遣わせてくれたという。とても仲が良かったという。

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2022年11月1日 「百年のお裾分け」始めます

2021年11月1日は僕にとって一生忘れられない日になった。Sさんが僕の食事に目を輝かして食べてくれた。大喜びしてくれたのだ。

嬉しかった。

食事というのは単に空腹を塞ぐためのものではない。人と人とが結びつきを感じ合う大切なものなのだ。

昨今の食事は、金で買って「いただきます」も「ごちそうさま」もない。

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ルール1)カンパ、寄付、支援は一切お断り

ボランティアや介護というとカンパ・寄付や支援がつきものであるが、それは毒まんじゅうである。資金繰りは楽になるだろうが、金の出所の奴隷になる。「国・県・市・町内会」というような集めた金を出して偉そうにする連中は大嫌いだ。自分では何もせずに奴隷のようにボランティアをこき使い名と利を得る連中は気に入らない。

僕の作る食事を食べていただいた方かのお金だけで成り立つ仕組みを考える。やがて僕も何もできなくなった時に「お裾分け」をいただくのだ。

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ルール2)歩いていける範囲にしかお裾分けしません。納得出来る数しか作りません。

半径1〜2Kmの範囲に住んでいる方、その地域に住んでいるお年寄りの介護をしている人にしか売りません。

利を求める貪欲な経営者は、ブランド名で多くを売る。しかしその中身は外国で作らせた物だ。自分では決して使わない。お裾分けは自分で食べる食事をそこに生きている人と共にするのだ。

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エリアマップを作った。これから一軒一軒歩いてお話をお聞きする。営業とは自分を伝えるのではなくお客様を知ることなのだ。

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ルール3)一緒に働く仲間もその範囲に住んでいる人に限ります。

これは面白いアイデアだと思う。つまり、その地域で食べたお金がその地域で生きている人に循環するのだ。

ネットで物を買うと、豊かになるのは遠くに離れた連中である。それは仕方がない。グローバリズムはすでに後戻りできないほどに進んだ。しかし、問題は食事である。自分の死に方の問題だ。僕は、この50年の間の社会の変化が見事に消し飛ばしたものを、新たに見つけたいのだ。

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ルール4)利益が出たら、その金は働いた仲間皆で分配します。

試算をしてみた。僕は初期投資をするので、その償却分と家賃はいただくが、利益が出始めたら志を同じくする仲間で公平に分ける。

僕は変動時給と呼ぶ。50食までは赤字なので時給800円で皆で働く。
100食になると時給1000円、200食で時給1500円、300食で時給2500円になる。
300食売れた時、22日4時間働くと、20万円を超える。
僕の売上より良い。

経営者は、自分では何も作れないくせに、社員を奴隷のように扱い最低の時給で働かせる。おかしいと思う。確かに自分の老後を考えれば「守銭奴となるのも」仕方がないように感じる。僕もそうだったから。

しかし、安らかな老後は金では買えない。「百年のお裾分け」は人と人との結びつきを生むのだ。毎日ご飯を持っていって声をかけて話をする。老人が求めているのは「宅急便で届く冷凍されたご飯」ではない。

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ルール5)365日休みません。

食事は、休むことがない。商売は営業日にしか動かない。僕は父に毎日食事を作った。辛いことも多かったが、それこそが「家族」を守るということだ。

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ルール6)「政治的に正しい栄養学」を否定します。父を守った食事を作ります。

僕は食事の力を信じる。人の内に持っている生きようとする力を助ける食事を作る。今の栄養学は「皿の上の食材の数」を数える。僕の食事メソッドは、食材の持つ「命=細胞の内外に浮かぶタンパク・脂質の持っている立体構造」を大事にした調理プロセスである。「乾燥抽出濃縮」の工程を通った時に確かに47種類の必須栄養素は残るだろうが、今の私たちを苦しめている。

あらゆる権威の言葉を拒否します。権威の言葉とは患者を見ないで検査値を見て処方する医者の侵襲を正当化します。本当に必要なのは、苦しんでいる人に寄り添うことです。

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昨日のメニューはカボチのクリームグラタン、魚、八宝菜である。動画を見てもらえれば素材から作っていることがわかる。そして美味しいのである。

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今日は、ギスの天ぷらにイカ三昧だ。

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Sさん大喜びだ。絶対元気になると大騒ぎであった。

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母にまた会えたようであった。帰り道少し泣いた。僕は毎日Sさんのためにお裾分けする。つくつ手間は一緒である。毎日こんな温かい食事を食べることが出来るのは嬉しいという。お金を払いたいと言われるが、お裾分けはお金の問題ではない。

ビジネスとして始めるのはまだ一年先だ。

Sさんが元気になる食事を作れたら、僕は次のステップにいく。春には結果が出ている。

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しびれて、浮腫ある手を揉むと気持ちがいいと言ってくれる。

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僕らがどうなるかを老人は教えてくれる。今の介護の政策、医療のマニュアルは間違えているとおもう。Sさんのお父さんは大腿骨の骨折で「手術をすれば元に戻ると」医者に言われ、人工関節を入れられて歩けなくなった。施設で孤独に亡くなった。僕の父は何ら治療を出来ない背骨の圧迫骨折で何度も検査に呼ばれて衰弱していんだ。医者は商売なのだから仕方がない。しかし、自分も通る道だとは思いつけないのだろうか。

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生まれた土地の川のそば。大変美人である。

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東京の裁縫の学校に通ったそうだ。うちの母も編み物の学校に通った。

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僕の同級生だった娘さんも嬉しそうだ。一緒に生きていこう。

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半径3Kmの小さな細胞

僕が今考えている仕組みはうまく行っても半径3Kmの試みだ。けどね、共感してくれる人がいたら、あなたの場所で始めればいい。

この小さな細胞が命を持って世界を覆えばいいと思う。僕はいくらでもお手伝いする。

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僕は弁当を売りたいのではない。百年昔からあり、百年先も続く人と人との結びつきを今の社会の中で見つけたいのだ。

遺言のつもりで始めたnoteである。父が亡くなってから酒が止められなくて苦しんだ。どうしても生きていく理由が見つからなかった。しかし、この試みについて考え始めてから、もう2週間飲んでいない。もっと生きろと声が聞こえた。

医者も栄養士も、商売だから仕方がない。けどね自分が通る道なのだ。そんなに簡単に官僚の考えが変わるかとは甘く考えてはいない。しかし、世界が変わったのだからそれに向き合う努力はしてもいい。一人の人間として、変わってほしいと思う。

上手く行かなくとも、決して諦めない。

誰もやっていないことだ。できるはずがない。介護施設に入ればいいのだ。という言葉が聞こえる。そうかも知れない。けどね、始める前から諦めることはない。

10人くらいの人に、サンプルを食べていただいた。みなさん「あんたの弁当なら毎日食べたい」という。僕が父のために作った5年間で学んだ物だ。

いつか機会があったら、あなたにもお裾分けしたい。そしてあなたの食事も分けてもらいたい。

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#百年のお裾分け

厨房研究に使います。世界の人々の食事の価値を変えたいのです。