06 『そうか、もう君はいないのか』
2023年6月。
満中陰が明け、この頃は部屋の整理と朝晩のウォーキングが日課になっていました。ウォーキングの途中に立ち寄った古本屋で、先日の遺族会で紹介してもらった城山三郎の『そうか、もう君はいないのか』の文庫本を見つけ、早速読んでみました。
城山三郎といえば硬派の経済小説のイメージがあって、これまで作品は読んだことがなかったのですが、この『そうか、もう君はいないのか』は、死後、娘さんが遺稿を出版したエッセイというか自叙伝でした。前半の3分の2は奥さんののろけ話で、それだけ大切にされていたことが伝わってきます。妻を亡くしたという状況に、うまく慣れることができず、ふと、話しかけようとして、われに返り、「そうか、もう君はいないのか」と気づいたと書いています。城山さんにとって一心同体だったとも言える奥さんを亡くし、自らの命が尽きるまでの7年間、とても寂しい想いをされたことでしょう。
その頃読んだ読売新聞のグリーフケアに関する記事に「悲嘆は、喪失したものがいかに大切だったかを示す心の勲章」という表現がありました。「哀しさや寂しさが消えなくても気にすることはない。それだけ大切な人を失ったのだから。」とも。
私も妻を失ってから、いかに大切な存在だったのかを思い知らされる毎日を過ごしていました。
でも、「心の中に今も妻は居る。いつでも心の中で、楽しかったことや辛かったことを報告すればいい。返事が返ってくるような気がする。答えは自分の中にある。目の前に妻がいてもいなくても。自分が望んでいることは妻も望んでいるに違いない」。そう考えるようにしました。
もっと前向きになろう。たまたま案内のあった同窓会に出席の返事をしました。