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ミロ太郎ラーメン物語 第10話 日曜食堂とAIまかない君

この物語は、『Miro革命』の第5章にも掲載します。(完全に同じではありませんが、おおよそのストーリーは同じです。)

最初から読みたい方はこちらから

それでは、第10話スタートです。

第10話 日曜食堂とAIまかない君

翌週から、毎週日曜日に、ミロ太郎ラーメンと子ども食堂の合同プロジェクトである日曜食堂が開かれるようになった。店頭では、だいちゃんが、「今日は、日曜食堂だから、いろんなものが食べられるよ」と話している。お客さんが、ミロ太郎ラーメンに入ると、エプロンをつけた子どもたちが手書きのメニューを持ってくる。

「味噌トンコツラーメンにしますか?それとも、こちらのメニューにしますか?」

子どもたちは、お客さんに手書きのメニューを渡す。そこには、日本とベトナムと中国の家庭料理が並んでいた。手書きのメニューを注文すると、隣の子ども食堂の厨房から料理が運ばれてくる。

「味噌トンコツラーメン下さい。」

バオと劉は、ベトナム料理と中国料理を作るために、子ども食堂の調理場にいる。厨房には調理担当の子どもがいて、自動調理システムのスイッチを押す。自動調理システムのおかげで、子どもたちが調理担当をすることができるのだ。子どもたちは、自動調理システムに「クック君」と名づけ、「クック君、おねがーい」と言いながら、スイッチボタンを押していた。

新しいお客さんが来た。

「あ、満席ですか?」

エプロンをつけた接客担当の小学生が、答える。

「隣の子ども食堂の席にお座りください。メニューを持っていきますね。」

ラーメン屋と子ども食堂は、日曜食堂のときには、厨房だけでなく、客席もシェアしている。

続いて、白髪頭の男がニコニコしながら、子ども食堂に入ってきた。

「あ、山田さん!いつもありがとうございます。」

と多恵子が声をかける。山田宗太は、元タクシーの運転手で、フードロスの食材を子ども食堂に運ぶ役割を、いつも担ってくれている。

「八宝菜定食をお願いします。」

宗太は、手書きメニューを見ながら注文した。厨房から多恵子の声がする。

「山田さん、さっき、白菜がきれちゃって、作れないのよ。」

宗太は、スマホのアプリで子ども食堂のMiroをチェックする。

「丸木スーパーで白菜が余っているみたいだから、オレ、ちょっと行って取ってくるよ。多恵子さん、ついでに何か持ってくるものがあれば言ってね。他にも何か所か回ってくる。」

宗太は、ニコニコしながら立ち上がって、子ども食堂から出ていった。

三上は、それを見て、この場所は、街の食卓なんだと思った。宗太は、買い出しに行く街のお父さんみたいだ。みんな、街の人と一緒にご飯を食べるために、ここにやってきているのだ。

しばらくして、三上は、働いている子どもたちに手帳を配り、そこに「感謝ポイント」のスタンプを押すことにした。スタンプ1つで、ラーメンや、日曜メニューを1つ注文できる。日曜日に家族を連れてきて、手帳を出して、「これでお願いします」と言うときの子どもたちの顔は、とても誇らしげだった。
 
三上は、「クック君」をベースに、AIを搭載した対話型調理ロボット「AIまかない君」を開発した。子ども食堂の調理担当が、毎回、メニューを考えるのに頭を悩ませていることから思いついた。「AIまかない君」は、世界中の家庭料理の作り方を学習し、その日の食材の状況に応じてレシピを提案し、調理者と会話しながら一緒に作るロボットだ。その日に集まっている食材を伝えた後、「今日は、中華風の料理が食べたいのよね」「1時間くらいで作りたいな」など、「AIまかない君」にお願いすると、集まっている食材と、料理に必要な所要時間などを総合的に考えてレシピを提案してくれる。レシピに合わせて食材を用意するのではなく、集まった食材に合わせて料理するから、完全にレシピ通りのものを作れないし、作っている途中で新しい食材が到着することもある。そんなとき「AIまかない君」は、カーナビがルートを再計算するように、その状況に応じた変更案を提案してくる。調理担当は、「AIまかない君」の提案に耳を傾け、一緒に考え、楽しみながら、毎日、いろんな料理を作れるようになった。こどもたちが調理担当をする機会も増えた。料理が完成すると、「AIまかない君」が、「今日の料理は、地中海風麻婆豆腐です」「今日の料理は、なんとなくボルシチです」といったように、それらしき料理名をつけてくれる。その日の料理にどんな名前が付けられるのかも、日々の楽しみの一つになった。

日曜食堂

第11話(最終話)へ続く

編集後記

「自動化の上に生まれた余白を、温かい交流の場に活用する」という発想で妄想してみました。

自動調理システムがあるから、子どもたちが調理担当をできるようになり、生まれた余白で、バオさんと劉さんは、自国の料理を振る舞えるようになるというのは、「クック君」「子どもたち」「バオさんと劉さん」とが、それぞれ生かされる形になったのかなと思います。

「AIまかない君」は、調理担当のアシスト役です。カーナビがあるから知らない道を走れるように、「AIまかない君」があるから、作ったことのない料理にチャレンジできるようになります。

AIと人間とが共創する未来をイメージしてみました。

残り9日 83%達成

「Miro革命~ビジュアルコミュニケーションによる新しい共創のカタチ」出版プロジェクト

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