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田原イコール物語22 コロナとYAMI大学深呼吸学部

コロナの闇を象徴するテクノロジーがZoomだった。マレーシアに移住して、オンラインで仕事をしてきた僕にとっては、2011年からロックダウンみたいなものだったが、世界中の多くの人にとっては、2020年がロックダウンのはじまりだった。

橘川さんのYAMI大学深呼吸学部は、毎週土曜日の20時から始まり、12時を超えることも多かった。最初の頃は、橘川さんが培ってきた参加型の原理についての講義が中心だった。1週間かけて準備してきたパワーポイントを使って、毎週、4-5時間の真剣な講義が展開された。講義と書いてしまったが、今から考えると、あれは、ライブだったような気がする。

橘川さんが、これまで考えてきたことと、今週考えたこととが融合して生まれた何かを語っていた。毎週、何かが迸っていた。それを共有することが、この時代を一緒に生きている実感を持つことなのだと思った。

1週間の終わりに「濃い時間」が流れる。それが、コロナ生活のリズムを作り出す。また、土曜日が来て、深呼吸学部が始まり、そして、また、土曜日が来て、深呼吸学部が始まるのだ。それが、100回以上続いた。脳みそには、コロナの記憶と深呼吸学部の記憶とが切り離せない形で織り込まれている。

橘川さんは、体調が悪くても、何があっても、深呼吸学部を休まなかった。数十ページにわたるパワーポイントを準備して、土曜日の講義に向かっていた。受ける側も、それなりの覚悟を持って受けなくてはと思って、こちらもほとんど休まなかった。歴史の生き証人として見届けなければと思った。

いつまでも続くかと錯覚してしまいそうになったころ、深呼吸学部は突然終わった。確か「ジミー」の出版パーティーのあとだった気がする。橘川さんが、「今日は深呼吸学部の卒業式だ。おれが卒業するんだ」と言って、深呼吸学部の第1期が終了した。その後、コロナの闇が明け、YAMI大学も終了した。

毎週、4-5時間の講義を100回以上受けて、橘川さんが話している内容を覚えていたり、忘れてしまったりしている。内容よりも、あの時間を一緒に過ごしたという時間の重みが、ずっしりとした質感で残っている。濃密な時間には重さを感じるのだ。

自分も、重さを感じられるような濃密な時間を生み出していこう。それが、YAMI大学深呼吸学部を終えた後、決意したことだ。

■クラファンは残り22日。49%達成

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