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雑誌で国境を超えたハブのネットワークを作りたい

いつのころからか、国というものに違和感を持ち始めました。権力者の領土の範囲として国が生まれたのに、そこで生まれた人が教育によって国に愛着を持ったり、他国を敵視したり、おかしいなと。
 
自分が生まれ育った地域共同体や、自分が育った自然環境などに愛着を持つのは意味が分かります。だけど、その延長線上に国があるとは、僕には感じられないのです。
 
多民族、多宗教のペナン島に10年住んで感じたのは、コミュニティと国とが、必ずしも一致しない生活があるということ。マレーシアでは、マレー系が政権を取っていますが、ペナン島に限れば、中国系が多数を占めています。マレーシア華人にとっては、マレーシア政府は自分たちのコミュニティの延長線上にはありません。かといって、今の中国政府を自分たちの政府とも思っていません。そこには、国に回収されない「私たち」というものがありました。
 
コミュニティが生成するには、お互いを深く知り合う必要があります。言語の壁がコミュニティ生成に立ちはだかります。カタコトの英語や日本語でやりとりしても、自分を深く理解してもらったり、相手を深く理解することが難しいため、ついつい同じ言語の人同士でつるむことになりがちです。しかし、テキストとAI翻訳の組み合わせは、言語の壁を超えたコミュニケーションを可能にします。
 
ペナン島の友人たちに、英語や中国語で雑誌の原稿を書いてもらいました。彼らは、5~7個くらいの言語を操る多言語話者で、その7番目くらいが日本語だったりします。日本語で話したときに感じた彼らへの印象と、第一言語で書いてもらった原稿から感じる印象とは大きく違いました。英語や中国語の原稿をChatGPTで翻訳して読んだときに、はじめて、彼らの知性や、本当に考えていることに触れることができました。

ペナンの友人たちと読書会もやりました。読書会に使った小説「ジミー」は、文化の文脈が衝突している作品です。マレーシアで育ったジミーが、日本の高校に転校してきたところから物語がスタートします。第1章では、ジミーがクラスで「ジミーです。」と自己紹介するシーンがあります。アジア系の風貌の彼とジミーという名前が日本では結びつきません。日本はアメリカ文化の影響を強く受けている国で、外国人=アメリカ人という結びつきが強いからです。その自覚がない日本の高校生は、「ジミーって顔かよ」と笑います。一方、多言語空間では、お互いの名前を発音することが難しいという理由で、English Nameをつける習慣があります。もともとは植民地で、宗主国の人が現地の人の名前を覚えられないというところから始まっていて、香港などがよい例です。しかし、ペナン島などの多言語空間では、植民地の文脈を超えた文脈で、English Nameが使われています。佐藤純一郎という本名を持つ彼は、その文脈で自分にジミーという名前をつけたのです。
 
ChatGPTで「ジミー」を英語と中国語に翻訳して、マレーシア華人の友人と、日本からペナン島に来た友人とで一緒に読書会をやりました。英語で読んだ人、中国語で読んだ人、日本語で読んだ人が一同に会して対話しました。一人で読んでいるだけでは感じられなかった他方の文脈が、対話をする中で見えてきました。違いに対する驚きと学びがあり、今までに体験したことのない読書会になりました。文脈が衝突しているところで、AI翻訳を利用しながら学び合いをする試みの可能性が見えました。
 
単一の文脈を中心から周辺へと行きわたらせていく方法が、国を作る方法です。言語を統一し、教育を統一し、テレビやラジオで情報を行きわたらせていきます。国家統一とは、この方法によって実現します。今のグローバリズムは、同じ方法を地球全体へと広げる世界統一の流れでしょう。同じようなハコを各地に作り、均質な体験を共有させます。世界各地にスターバックスやマクドナルドがあり、世界中の人が同じ体験をしています。
 
一方で、異なる文脈を重ねて新しい意味を生み出す方法が、文化を作る方法です。単一の文脈の中で生きづらくなった人が集まってきてアジール的な空間ができ、その中で、自分の初期設定が相対化されます。それは、単一の文脈を内面化して自己批判してきた人にとっては、癒される体験でもあります。日本の文脈から逃れてペナン島に移住した僕にとっては、ペナン島はアジール的な空間でした。ここで、自分が飲み込んできた日本の文脈を相対化して、初期設定をリセットしたことで、自由に考えられるようになりました。このような異なる文脈が重なるハブが、国とは違うレイヤーで各地にできています。僕は、そのような世界のハブを相互に繋ぐような雑誌を作りたいと思っています。言語の壁を超えたワールドアジールネットワークを作りたいのです。
 
マレーシアのペナン島、アメリカのデトロイト、韓国のソウル、そして日本各地のハブに原稿を依頼し、自分の得意な言語で書いてもらっています。それを、そのまま雑誌に載せます。田原イコールは、英語や中国語や韓国語や日本語が入り混じる雑誌になります。田原イコールは、雑誌で実現するアジール空間であり、ハブです。各ページにはQRコードがあり、そこからアクセスすると多言語に翻訳されたページへ飛ぶことができます。世界中の人が自分の言語に翻訳して読める雑誌なので、世界中のハブに販売しに行きます。
 
田原イコールで起こってほしいことは、すでに起こり始めています。ペナン島にある自閉症の方のトレーニング&作業施設を訪問したときに、岩手で同様の取り組みをしているサッコラジャパンのことを思い出しました。サッコラジャパンは、障がい者の持つ可能性と、岩手の伝統工芸の裂き織とを結びつけた素晴らしい取り組みで、代表の石頭悦さんは、この取り組みを世界とシェアしたいという気持ちで、Sakkora Share Globalという会社を新しく作りました。早速、悦さんに「取り組みを紹介する原稿を書いて」とお願いし、それを英語に翻訳してペナン島の施設に送りました。次のステップは、相互に訪問しあうこと。できれば、双方に窓を設置したい。そういう取り組みを通して、世界に意味のある繋がりが生まれていくでしょう。
 
新しい動きは辺境から起きます。辺境に生まれるアジール的な空間がハブになって、そこに異なる文脈が折り重なってくるからです。田原イコールは、AIの力で言語の壁を超えてハブを活性化し、ハブ同士を相互に繋いでいくツールです。田原イコールを手掛かりにした読書会や対話会を行っていきます。そこに、社会の構造を変えていく可能性を感じています。

文脈が重なりあうところにハブができる

皆さんにお願いがあります。田原イコールを2000部くらい刷って、世界各地に行きわたらせていきたいのでサポートしてください。図の黄色やオレンジの領域に雑誌を行きわたらせて、新しい動きを活性化させていきたいです。クラファンで集まった金額に応じて印刷する部数を決めます。2000部刷るには印刷代が100万円くらいかかります。現在クラウドファンディングを実施中で、締め切りが8月31日で、現在集まっているのが33万円くらいです。サポートとしてありがたいのは、以下の4つです。

1.クラファンの支援をしてくれる。 ⇒ こちら
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5.あと13日、全力疾走しますので、応援するよ!という個人メッセージを送ってくれる。

出版パーティーを、対面とオンラインで行いますので、ぜひ、お集まりください。出版パーティーの参加費も、クラファンのリターンに入れてあります。これからの13日間、一緒に疾走して出版パーティーで喜びを分かち合いましょう。

また、田原イコールの編集部になりたい方は、田原研究室にお入りください。田原研究室の参加費もクラファンのリターンに入れてあります。田原イコールは、トランスナショナルのコミュニティ生成マガジンですので、コミュニティ生成活動に参画してくれる方を歓迎します。

新しい時代が始まるときには、新しい雑誌が創刊されてきました。田原イコールは、新しい時代を拓く雑誌になっていきたい。ご協力お願いします。


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