新ポジション就任に当たり・・・



12/18に開催されました、日精エー・エス・ビー機械株式会社の定時株主総会にて、監査役を退任いたしました。そして翌19日にプレスリリースがなされ、モノグサ株式会社の常勤監査役に来年1月1日付けで就任いたします。

今回、モノグサ株式会社と出会うまで、「監査役とは」という本質を問い続けました。自らが考える監査役としての職責が果たせるか、それはとりもなおさず、職責あるいは役割のイメージを、経営陣と共有できるかということに大きく依存します。お互いにいい感じだなと最終選考にたどり着いても、監査役の役割に対する相互理解が最後のところで一致せず、お断りされ、お断りするケースが続いていました。

リファーラルの重要性を、転職活動を通じて痛感しました。多くのエージェントがドライな対応をされていた中(これはこれで当たり前なのかもしれませんが)、監査役協会部会ネットワークの信頼できる仲間に紹介いただいた、s社のSさんという稀有なエージェントのおかげで、私自身が転職活動を通じて気づきをいただき、また自分自身の成長を実感することができました。そんな中で相互理解が一致したのがモノグサ株式会社。

監査役の役割に関する理解が正確で、選考に当たっての要件定義が具体的。ここはとても重要であり、就任前準備での違和感が全くなかったのは、必然だったのかもしれません。常勤監査役を置くというネクストステージに向かおうとする若い企業ですが、行動指針の一つ目に「本質的インパクトに執着する」とあるだけに、本質的でないアプローチをとらないのが新鮮でした。

一方で、世間では本質からずれているケースが結構みられます。例えば、法令等が求めるから監査役を置く。それを法令順守と誤解する向きは確かに存在しますね。企業不祥事が発生したときに、企業トップや取締役が責められることがあっても監査役に責任が及ぶことは、第三者委員会など外部の調査機関の指摘や裁判といったケースを除くと、ほぼないといってよい。

三菱UFJ銀行の貸金庫事件の報道に触れ、おそらく行内では監査組織(ここでは内部監査)は「何を見ていたんだ」と批判がなされていようし、少なくとも自己批判は必要になると思いました。他の金融機関も「当行は大丈夫なのか」と内部監査部隊に対して洗い出しの指示がなされているだろう(していなかったら経営責任もの!)。また監査役等の場合は、銀行への信頼という経営の根幹を揺るがす可能性があったこのリスクに対し、長年放置してきた責任があるといわれても仕方がないとも思います。それでも報道において経営執行の責任を問う声がある一方で「監査」という表現は(私が知らないだけかもしれませんが)今のところ見られていません。本件に限らず、不正事案や不祥事が発生したケースにおいて、「監査」の責任をメディアが問う例は稀で、裁判となり判決で責任を問われるか、第三者委員会等の特別委員会で言及されるのが精いっぱい。でも多くの心ある監査役等は、社内で不正が発生したときに、自らの力不足を恥じることとなるでしょうし、そうありたいなと思います。もちろん、そんな不正や事故を発生させないことが、私たち監査役等の職責なのですが。

私はモノグサ株式会社の常勤監査役就任に当たって、「全てのステークホルダーにとって更に価値ある会社に成長するよう、常勤監査役の職責を努めてまいります」とプレスリリースでコメントしました。目線は「全てのステークホルダー」です。

取締役が担うべき責任を果たしているか! 特に社外取締役! といった論調はよく目にします。それは正しいのですが、私はその文脈に監査役を入れていただきたいと切に思います。監査役協会の実務部会に参加されている仲間たちのような、高い意識を持った監査役等も多数おられる一方で、その意識をより喚起した方がいいような方々も確かに一定数おられるように思います。

「監査役等は、社長と同等か時に社長以上に社内の情報に精通し、かつ社会の ルールや新たなトレンドも念頭におき、 会社の役員でありながら独立した外から の目線を持つ、社長の良きパートナー (相談相手・伴走者)となるべき存在で ある。つまり、社長とともに健全な会社 経営、会社のガバナンス(統治)の向上 に貢献すべき立場にある役員なのだ。」

これは、日刊工業新聞に、監査役協会の塩谷会長が寄稿された文章からの抜粋です。ここでは監査役等は「社長の良きパートナー(相談相手・伴走者」と表現されています。

この表現は多くの人が使われるもので、実際私も今回の転職活動において、「経営の伴走者」という言葉を使いました。一方、「ガードレール」「シートベルト」「お天道様」「お母さん」といった表現をした方もおられ、考えさせられました。九大の西山名誉教授は「経営の安全装置」と書かれています。それ以外にも「最後の砦」「守護神」といった言葉で表現される方もおられました。今度の実務部会でも、どう表現するかという問いかけをメンバーに試してみたいと考えています。

そして、新しい環境において、いかなるふるまい、立ち位置、あり方が求められるのか。解析解が存在しないこの問いに向けて、最適解を探し続ける新たな旅に出たいと思います。



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