愛嬌のあるローカル線

自分を見つめる時間欲しさに三度長野を訪れている。昨日の夕方、特急あずさ号で松本へ。松本からは篠ノ井線の快速列車に乗り継ぎ長野に着いたのは21時を少し回ったころだった。

ローカル線の場合、ドアの開閉はボタン式がほとんどだ。長野駅で降りる際に、後方にいた女性が親切にボタンを押してくださった。ところがドアが開かない。どうして開かないのか。ボタンを押す女性の手をよく見ると、どうも「閉まる」のボタンを押しているではないか。すかさず「開ける」のボタンを押して差し上げると、女性は「あっ、すいません(笑)」と愛嬌を振りまいた。私も思わず笑みがこぼれ出る。ほんのささやかな出来事であれ、こういう光景が垣間見れるのもローカル線ならではの興趣である。

さびついた心の襞にうつろいゆく風景を重ねて、自らの来し方を振り返り、そしてゆく道の標を構想する。今回は旅という名目でなく、未来を探すような肯定的な意味合いが強かった。何度も訪れている土地は、何度訪れても良さは変わらない。変わっているのは自分の気持ちだろうか。昼の新幹線で帰郷する。

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