約束

 人は自分では如何ともし難い理不尽さや不自由に出食わすことを知っている。

 だがここまで切迫した事態を私は味わったことがない。

 街が封鎖されたわけではない。車は走っている。電車も動いている。空も晴れている。戦前のモノクロ写真のように色のない世界ではない。

 でもお店はシャッターを閉めていて、通りは人もまばらだ。

 この状況下において、怒りや疑心暗鬼の矛先を互いに向け合い、国家が責任を個人に転嫁するような「総動員体制」を助長させたくはない。

 それぞれの事情に想像力を働かせることなく、互いに傷つけ合うことは避けよう。

 奪われてしまった日常を懐かしむときがそのうち来そうだ。また誰かと話を交わしたくなるときが来そうだ。その日が来ることを約束しよう。

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