「月を斬る」中国人の異次元パワー 人民網日本語版 V.2.1


第1話 月を斬るもの(大学日本拳法)

  たとえ、(日本拳法の)試合で敗れても、その内容においては高く評価される試合や選手というものはある。

  試合という以上、かならず勝ち負けはつきもの。
  しかし「試合に負けても、試合内容・人間性では互角、ある部分においてはそれ以上」という人やその戦う姿を見ることはできるのです。

○ YouTube「2017全日本学生拳法個人選手権大会 女子の部準決勝戦 岡崎VS谷」   https://www.youtube.com/watch?v=O7kumnslLns

○ 2018 Kempo 第31回全日本拳法女子個人決勝戦 坂本佳乃子(立命館大学)vs谷南奈実(同志社大学) https://www.youtube.com/watch?v=DI-HxBtlxxg

「善く戦う者は敗れず、善く敗るる者は乱れず」

  この二つの試合(3人の選手)に勝者も敗者もいない。
  お三方とも、ただ(小手先の技術で)水に映る月を切るのではなく、月(そのもの)を斬ろうとしたのですから。
  そんな、現実に思いっきりぶん殴る(大学)日本拳法世界であるからこそ、私たちは物理的・肉体的な部分(形而下)のみならず、異次元(形而上的世界)をも見る(知る)べきではないでしょうか。

第2話 月を斬るもの(太極拳)

 「善く勝つ者は争わず、善く陣する者は戦わず、善く戦う者は敗れず、善く敗るる者は乱れず。夫れ、棋は、始めは正を以て合し、終わりは奇を以て勝つ。凡そ敵、事無くして自ら補う者は侵絶の意有り。小を棄てて救わざる者は大を謀るの心有り。手に随って下す者は無謀の人なり。思わずして応ずる者は敗けを取るの道なり。
  詩経に云う『惴惴たる小心、谷に臨むが如し』とは此の謂なり」

  「西遊記(一)」小野忍訳 岩波文庫

○ YouTube「Thi Minh Huyen Tran 28th SEA Games Singapore 2015」   ベトナム人Thi Minh Huyen Tran さんの、2015年第28回SEA Games in Singapore   
   WUSHU(武術の中国語読みウーシュウ)に於ける太極拳の演武。46分頃    https://www.youtube.com/watch?v=Oz4pfvb0Uzk

  心身統一といい、心がなければ統一もへったクソもない。
  心技体(心と技と身体の一致)といい、技と身体だけではちぐはぐだ。

  Thi Minh Huyen Tran さんの演武には、心の存在感がある。
  だからこそ、何度でも見ることができる。
  彼女の身体の動きやタイミングとか間合いといった技術に関して、門外漢の私には全く以て、ただ見ているだけなのですが、彼女の心には同期できる。心の波長が合うからこそ、見る度に心の波長の厚みが増してくる。
  そんな彼女の強烈な心の存在感こそが、「月を斬る」ということなのです。

  同じ太極拳でも、他の人の演武は、確かにスピードやタイミング等、素晴らしいのですが心がこもっていない。
  といっては言い過ぎで、心よりも見た目の美しさや技ばかりを追求しすぎているというか、それらを強調することばかりが目につく。曲芸や軽業を見ているのではなく、極まった心を見るからこそ、太極拳なのではないか。
  ところが、演技ばかりに集中している演舞者とは、その源となっているはずの心が見えないというか希薄になってしまっている。

  演武者の友人や家族であれば同期できても、赤の他人にまで自分(演武者)の心を伝える・同期させるというのは、一つ次元が異なる。
  心を見せるための演武として太極拳。これを鑑賞しようとするならば、彼女たちの心が見える演武をしてもらわねば、評価しようもない(真に楽しめない)のです。

  大学日本拳法においては、真剣に・本気で・現実に、蹴って・殴って・投げ飛ばす。そのパワーや技術が、見る側からすれば大きな要素であり楽しみではありますが、私のようなジジイになると、心を見て楽しみたい。若い時に比べて身体が自由に動かないのだから。

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  歌舞伎では、役者の衣装や演技よりも、その演技の本(もと)となっている役(人間)の心(喜怒哀楽)に感情移入するからこそ芝居を楽しめる。きれいな着物や身体の動かし方や声だけなら、極端な話、私のような部外者でも練習次第でできる。いずれロボットでもできるようになるもしれない。

  しかし、そこに情念やら怨念やら、恋心なり嫉妬なりの心をにじみ出すことのできる俳優・役者こそが、良いというか「真の優れた演技者(演技で心を表現できる者)」といえるのではないか。

  演目のひとつ「三人吉座廓の初買い」で、女に化けたお嬢吉座が、夜鷹から金を盗ったのがお坊吉座にバレた瞬間の「ええ! そんなら今の様子をば」と、口にするその瞬間の「ええ!」に、どれだけ感情(心)がこもっているのか。(私の場合)そこが見どころなのです。

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  Thi Minh Huyen Tran さんの演武には、その意味で一つ一つの動作に心がこもっている・心がにじみ出ている。あくまでも、わたし個人の感じ方であり、他の人がそうでもない、といえばそれまでの話です。
  まあ、その故に、審査員が10名近くもいてそれぞれがそれぞれの主観で採点をし、その集計が客観的な評価となるのでしょう。

  で、ここでも、勝負の勝ち負けとは別に、わたしとしては多くの演武者の中でという比較の問題ではなく、誰がなんといおうとも、どれだけたくさんの演武者がいようとも、とにかく、Thi Minh Huyen Tran さんは「月を斬るもの」である、と感じる(ことで楽しめた)のです。

第3話 (謙虚に筋道立てた)論理と、その実践では負けない中国


<善く戦う者は敗れず>

  アメリカの狂的軍事力には世界中の誰もが敵うべきものではありませんが、中国人は論理で・話合いで・スピリットで、これに対抗することができる。

  2021年の米中天津会談とは、過去、世界中で無数に行なわれてきた欧米人たちの会議だの会談、交渉や折衝といった(空虚で中身のない)レトリック(修辞法・修辞学・美辞・巧言)世界では見られない、いかにも中国人らしい「現実にぶん殴り・蹴って・投げる」というスピリットに充ち溢れている。

  相変わらずの欧米式レトリック(空虚な論法)という小手先の技術を弄するアメリカ外交団に対し、中国人は実のある対話・現実を伴う交渉を懸命に追求しているのです。

  親方日の丸・世襲制おままごと政治家や官僚をやっている、現在の韓国脳日本人とはちがい、中国人の要人とは、叩き上げの(よく鍛えられた)優秀な人間ばかり、ということがよくわかります。

  そんな、いわば14億人の科挙というほどの難関をくぐり抜けてきた優秀な彼らに対抗できる日本人とは「コンピューター付きブルドーザー」と呼ばれた、在来種純粋日本人故田中角栄(1918~1993)首相、ただひとりだけでした。


<月を斬る>

  真理の裏表を体験し哲学する大学日本拳法人は、ここを押さえておくべきです。

  中国人は月を斬る。
  アメリカ人(エリート)に月は斬れない。水に映る月の陰を切っているだけ。

  ケンブリッジ・オックスフォード・ハーバー式欧米のレトリック(口ばかりで相手をやり込めようとする、詐欺的言辞)という次元がスタンダード(業界標準)であるという、従来からの私たちの認識は錯覚であり、「米中天津会談」に見るような、中国人の論理・話の進め方・ものの見方という「異次元」こそが、私たち大学日本拳法人にとってはmake sense(筋が通る・もっともである)なのではないでしょうか。

口先ばかりで心のこもっていない欧米人と、心と言葉が一致している中国人の違い、ということなのです。


第4話 「米中天津会談」

  米中天津会談、中国猛攻に「バイデン・習近平会談」言及できず―それでも習近平との近さを自慢するバイデン

   https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/a4190a8120e96c3fa94be74b5e48b1ecfdfb10e3

2021/7/29(木) 15:56

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

<引用開始>

 アメリカのシャーマン国務副長官は天津で外交部高官と会談したが、中国の猛攻撃に遭い、「バイデン・習近平会談」の赤絨毯を敷くことはできなかった。しかしバイデンはなお習近平と会った時間の多さを自慢している。


◆会談設定前のいざこざ:高位の対談相手を望んだシャーマン

 ウェンディ・シャーマンは国務院副長官なので、中国では外交部副部長に相当する。7月20日、訪日した時にもシャーマンの対談相手は茂木外相ではなく、森健良(たけお)外務事務次官だった。

中国には複数の「外交部副部長級」がいるが、序列1位の斎玉は外交部の中国共産党委員会書記で、序列2位の楽玉成が副部長としてはトップとなる。

 そこでシャーマンは最初、楽玉成と対談したいと申し込んだらしい。

 しかし中国側は断った。謝鋒(副部長としては4位だが、副部長級序列は5位)がアメリカ担当なので、謝鋒を対談相手とすると譲らなかった。するとアメリカ側は「ならば、訪中をやめましょうか・・・」と言わんばかりに沈黙を保った。

 すったもんだの末に、妥協案として中国側は謝鋒が対談相手であることは譲らず、謝鋒の後に、「おまけ」として「王毅外交部長との対談も付けてやる」ということになったらしく、7月21日になって米中双方が「天津で、謝鋒外交副部長および王毅外交部長と会うことになった」と発表するに至った。

 なぜ天津なのかだが、

  中国は今、北京にコロナ・ウイルスが入ってくるのを警戒して、外国からの来客を北京入りさせない態勢で動いているからだ。

◆虚勢の張り合い――米中で異なる対談相手を発表

  謝鋒と王毅は、26日の午前と午後にわたって、それぞれシャーマンと対談した。

  中国では主として謝鋒との対談が数多く報道されたのに対して、アメリカでは王毅との対談だけが公表されているのは、米中の虚勢の張り合いを伺わせて興味深い。

  中国では国内向けに「たかだか国務副長官。謝鋒が対応したので十分」というメッセージを発信したいし、アメリカでは権威付けとして、「外交部副部長ではなく、外交部部長(=大臣)が国務副長官に対応したので、シャーマンは中国で非常に高く評価され、アメリカの権威を示すことができた」とアメリカ国民に発信したいのだろう。

  そもそもこの会談はアメリカから仕掛けてきたものだ。

  バイデン大統領は6月16日にスイスでプーチン大統領と対面で会談した直後、「そう遠くない将来に習近平と会うことになるかもしれない」と示唆している。

  7月10日のコラム<「バイデン・習近平」会談への準備か?――台湾問題で軟化するアメリカ>で書いたように、7月6日に「アメリカは中国と平和的に共存できる」、「台湾の独立を支持しない」などと述べたキャンベル国家安全保障会議・インド太平洋調整官は、「バイデンが今年10月にイタリアで開催されるG20で習近平に会う可能性がある」という趣旨の発言をしている。

  だから今回の米中天津会談は、バイデンが習近平との(対面での)会談を実現するための赤絨毯を敷くためにアメリカ側が中国側に申し入れたものと受け止められていた。

 しかし、中国のあまりの攻撃的な姿勢に、とても「バイデン・習近平会談」の話に触れるところまで至らなかったようだ。

  では中国はどのように対米批判を展開したのだろうか?

 中国外交部のウェブサイトで謝鋒とシャーマンの対談および王毅とシャーマンの対談 が、それぞれまとめて公表されているので、基本的にこの情報に基づいてご紹介する。

◆「謝鋒vs.シャーマン」対談:中国の激しい対米攻撃

  謝鋒がどのように激しい対米攻撃を行ったか、そのいくつかをピックアップしたい。

 ●米中関係悪化の根本的な原因は、アメリカの一部の人々が中国を「仮想敵」として扱い、国内の根深い構造的対立の責任を中国に転嫁し、自国民の不満をそらそうとしていることにある。しかし、それによってアメリカが救われることはない。

 ●アメリカの「競争、協力、対抗」の三分法は中国を封じ込めるための「目くらまし」に過ぎない。対抗と封じ込めが本質であり、協力はその場しのぎ、競争は言葉の罠だ。自分たちが優位に立っていると判断する領域では、友好国を誘い込んでは中国に対してディカップリングを行いブロック化して制裁し、衝突して対立する。アメリカは自己本位で、一方的に利益を得たいだけだ。要するにアメリカは中国に負けたくないだけではないのか。

 ●中国はアメリカを負かしてアメリカに成り代わって世界制覇をしようなどとは思っていない。アメリカと軍事競争をする気も持っていない。

 ●アメリカ側の「ルールに基づく国際秩序」の維持とは、アメリカのような一部の国が自分たちの「家族の法律やルール」を国際的なルールと位置付けて他国を規制し、自分たちの利益になるようにルールを改ざんしているに過ぎない。中国が強くなることを怖がり、弱肉強食のルールを適用しているだけだ。アメリカは最も反省すべき国であり、自国の民主主義や人権問題に真剣に取り組むべきだ。

 ●アメリカは中国が新疆(ウイグル自治区)で種族絶滅を図っていると言い掛かりをつけているが、アメリカ大陸にいた原住民を絶滅させて国家を建設したのは、どこの国なのか。現在もなお人種差別をしている国はどこなのか?自国の人種差別と非民主性を改善してからものを言え。

 ●「一つの中国」原則は米中関係の基礎である。「台湾独立」を阻止してこそ、真の平和がある。内政干渉は許さない。

 ●香港が「中華人民共和国香港特別市」として中国に帰属したことを知らないわけではあるまい。アメリカはその現実を正視する勇気を持つことができず、何とか香港を、中国を転覆させるための「橋頭堡(きょうとうほ)」(敵地に侵攻するための拠点)に仕立て上げようとしている。小手先の内政干渉をしてきても香港の大局は揺らがない。

 ●アメリカは数か国に呼び掛けて「中国が悪質なサイバー作戦を仕掛けた」と事実無根の捏造をしているが、「盗人猛々しい」もいいところだ。アメリカこそは世界で最もインターネット技術と権力が集中している国であり、最も攻撃的なサイバー攻撃を仕掛け、西側先進国にまで盗聴の手を伸ばし、最も多くの機密をオンラインで盗み出す国であることは世界中の誰もが知っていることだ。サイバーセキュリティ問題で中国に汚水をかけなければアメリカは中国企業に勝てないので、汚い手段を弄している。

 ほとんど「悪口雑言」に近い激しい対米批判は4時間にわたって展開され、謝鋒は最後に二つの対米リストをシャーマンに手渡した。

 一つは、アメリカが中国に対して出している誤った政策や言動を是正せよという「是正措置リスト」で、もう一つは中国が懸念している案件のうち優先的に解決せよという事を要求している「優先案件リスト」だ。両方とも非常に長いものなので詳細には論じない。要は個人に対する制裁を撤廃せよということや、中国人留学生や孔子学院への弾圧をやめよといった類の内容である。

◆「王毅vs.シャーマン」対談:アメリカは国連憲章に基づく国際秩序を守れ!

 26日午後、王毅とシャーマンの対談が2時間ほどにわたって行われた。

 王毅の主張は謝鋒の主張と重なるので、ここでは省略するが、

要は

アメリカこそが最も反省すべき国だ」として、「国連憲章に基づいた国際秩序を守れ」あるいは「高関税や一方的な制裁は国際ルール違反だ」とシャーマンに批判を向けた。

 また、台湾問題については「台湾独立勢力が挑発してくるなら、中国はあらゆる必要な手段を取って制止する権利がある」と主張した。

 シャーマンは「一つの中国」原則を守り、「台湾独立を支持しない」と誓ったと、中国外交部のHPにはある。


◆アメリカ国務省のHPは王毅外相との会談のみを公表

 一方、シャーマンの主張に関してはアメリカ国務省のHPに王毅との会談のみが公表されている。

 それによればシャーマンは以下のように言ったとある。

 ●われわれの価値観や利益に反し、国際秩序を損なう中国のさまざまな行動について懸念を示した。たとえば、香港での反民主主義的な弾圧、新疆ウイグル自治区で進行中の虐殺や人道に対する罪、チベットでの虐待、メディアへのアクセスや報道の自由の制限など、人権に関する懸念を示した。

 ●サイバー空間、台湾海峡、東シナ海、南シナ海での北京の行動に対する懸念についても述べた。

 ●中国で拘束されたり、出国を禁止されたりしているアメリカ人やカナダ人の事例を取り上げ、「人々は交渉の材料ではない」と伝えた。

 ●しかし「アメリカは中国との対立を求めているわけではない」と述べた。


◆バイデンが「私こそが世界で習近平に最も近い指導者」と自慢!

 米中天津会談におけるシャーマンの発言が発表された翌日、ホワイトハウスは「バイデン大統領のアメリカ国家情報長官室におけるスピーチ」を発表した。

 それによればバイデンは「自分が如何に習近平と近い存在であるか」を、以下のような事例を挙げて自慢している。

 ●私は習近平とは、世界のどのリーダーよりも多くの時間を過ごした。副大統領時代には、25時間も二人きりで過ごしている。

 ●私は習近平と一緒に1万7千マイルを旅した。彼と一緒に座って話したこともある。私が座って話をすることができたのは、それぞれに同時通訳がついていたからだ。

 ●習近平は中国が21世紀40年代までに(2040年頃までに)世界で最も強力な軍事力を持ち、世界で最大かつ最も優れた経済力を持つ国になることを、死ぬほど真剣に考えていた。これは本当のことだ。


 ああ、なんということだ…。

 中国側の猛攻に圧されて、バイデンが望んでいる「バイデン・習近平会談」の話題さえ持ち出せなかったというのに、誰の目にも明らかになる「習近平への秋波」を、国家情報長官室で送るとは何ごとか!

 中国側はそれを仕掛けて「戦狼姿勢」でいることも知らないのだろうか。

 7月28日にアメリカに到着した新任の秦剛・駐米中国大使は、米中天津会議の「シャーマン・王毅会談」に同席していた。

 彼は「アメリカが中国を戦狼外交と言うのなら、アメリカは悪狼外交だ」と言ったことで有名なやり手だ。英語が堪能で、習近平の対米政策ブレインの一人であることに注目しておいた方がいいだろう。

<引用終わり>


遠藤誉

中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。


○  中国人の主張(無尽蔵のファイティング・スピリット)

  ここまで徹底的に、懇切丁寧に、自分たちの立場と考え・方向について明確に述べる国や民族はいないであろう。


<於人民網日本語版「米国の理不尽さを指摘する」直近の論説>

○ 米国はなぜ頻繁に「中国生産能力過剰論」を騒ぎ立てるのか?○ 【イラストで読み解く】「中国生産能力過剰論」をでっち上げる米国○ 国家発展・改革委員会「『輸出の多さ=過剰生産能力』との認識は成り立たない」○ 「輸出の多さ=過剰生産能力」はつじつまが合わない○ 【解説】「中国の生産能力過剰論」に対する10の質問○ 「中国のグリーン製品輸出が他国の経済に損害」? 全くのナンセンス○ 中国のグリーン生産能力に対する中傷、事実を前にすれば自ずと破綻○ 外交部「いわゆる中国『生産能力過剰』論は保護主義への口実提供に過ぎず」○ 西側が騒ぎ立てる「中国の過剰生産能力」について海外メディアがコメント○ 中国の駐米大使が「中国生産能力過剰論」に反論○ 「米国のいわゆる『言論の自由』の事実と真実」報告書が発表○  米国は「国家安全保障」を万能の口実にしてはならない

<参考>
「異次元レース 人民網日本語版の中国 V.2.2 」@MasatoHiraguri
「「バスに乗り遅れるな」人民網日本語版に見る中国 V.4.1」
「水と月 V.2.1」 

2024年5月15日
V.1.1
平栗雅人

第5話 世界的規模で行なわれようとしている弁証法

  弁証法とは、「意見(定立)と反対意見(反定立)との対立と矛盾の働きが、より高次な発展段階(総合)の認識をもたらすと考える哲学的方法。」  広辞苑 第七版 (C)2018 株式会社岩波書店

  早い話が、あるやり方を行い、次にそれと反対のやり方を行使することで、発展していこうという考え方。

  元々はああでもない・こうでもないと討論することで、より良いアイディアにしていこうという対話術・問答法。それを社会の創造・進化のやり方になぞらえた、ということです。

① ここ200年ほどのあいだ、英米(アングロサクソン)によってアジアやアフリカ地域で行われてきた、意図的に戦争や革命を起こして相手の国土を破壊し、自分たちのものやサービスを買わせる。そうやって、世界中を自分たち主体の社会や国家にしていこうという進化・成長のしかたでした。

② このやり方というか(あくどい)手口が行き詰まって(バレバレになって)きた為に、今度は、中国(人)主体のWin Win(相互互恵: 破壊しないで、お互いが利益を得るように協調しよう)というやり方を、いま中国が推し進めているわけです。

  従来の「破壊で利益を得る」というのは、アメリカや英国のような軍事力に勝る国だけでしたが、中国のやり方では、相手国のなにものをも破壊しないし、また破壊に伴う急激な再建という見かけだけの繁栄も期待しない。

  あくまで、相手国の社会システムや人々の生き方に合わせて、ゆっくり・じっくり成長していこう、というスタイルです。

 つまり、破壊というやり方で世界をグチャグチャにしておいて、今度は平和的な協調によって、世界を進化させていこうという「神」の思し召し、というわけです。


第6話 籠に乗る人担ぐ人

  米映画「マトリックス3部作」においては、悪と善の戦いのあとで、ソース(source みなもと・源泉・出所)という人間(神)が登場し、再度、世界をプログラミング(プログラムをつくること)する、という終わり方になっています。

 彼(ソース)によると、いままで何十回もそうやって世界を創造(しては破壊)してきたのだそうです。
  つまり、僕も君も・天地自然すべてが「神」によってプログラミングされて(作られて)いる、というわけです。となると、人がいつ死ぬかもプログラム通りということになる?

日本では、
① 織田信長が、それまでの支配者であった天皇・貴族・仏教体制を叩き壊し、
② 豊臣秀吉が、それをよく捏ね(熟成させ)、
③ 徳川家康が、完成させた(天皇から権力を奪って武士の社会にした)。

なんていう、事例があります。
① 織田信長が、餅をつき、
② 豊臣秀吉が、食べやすい形に捏ね、
③ 徳川家康が、それを食べた。

弁証法で
① アメリカが壊し
② 中国が治し
そして、
③ その後に君臨するのは誰か。もしくは、①と②を意図的にやらせている「第3の男」がいる。
  ということなのか。

  ミステリーの謎解きは別問題なのでここでは考えない。

  いずれにしても世界中を破壊と混乱に巻き込んできた英米という定立に対し、その反対(反定立)となりうるのは、世界で中国一国であることは間違いない。
  今後は中国の経済力・文化力、そして、そのイデオロギー(思想傾向、政治や社会に関する主義)がどう世界に受け入れられていくか、中国がどうやって受け入れさせていくか、がキーとなるだろう。
  「パンダ」とは中国イデオロギーの伝播手段のひとつなのです。

2024年5月16日
V.2.1
平栗雅人

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