見出し画像

保護犬という選択肢1


 保護犬という言葉をどれだけの人が知っているのだろうか?

 単語としては知っていたが、その言葉を深く考えるようになったのは保護犬のもみじとの出逢いからだった。保護犬を知るということは、この記事を読んでいる今現在も、15分に1頭のペースで殺処分されていくペットたちの現実を直視するということだ。

 僕は大の動物好きだ。世界中を冒険して周りながら世界のイヌと触れ合ってきたし、イヌぞりのイヌのグリーンランドハスキーのお世話をしていた時代もあったくらいだ。知人の家族が飼い始めたイヌの写真をSNSにアップした。その可愛さに虜になった。困ったような顔に見える下がり眉、白い靴下を履いたような毛色の脚、キラキラした瞳、少しだけ野性味を感じさせるスタイリッシュなボディー。実際に会ってみると確かに可愛いのだが、かなり臆病な性格をしており、ちょっとした物音でもビクビクするのが気になった。それが、もみじだ。

 イヌを愛するヒトは多いだろう。それもそのはずだ。イヌとヒトは約2万年前の狩猟時代より共に移動しながら生活してきたという歴史的に密接な関係を持ってきた。古来より生活に欠かせない存在なのだから。
 保護犬とは、何らかの理由で飼い主の手からペットが離れ、保健所などの施設や保護団体にいることになってしまったイヌのことだ。環境省の資料によると(※A)、2018年の統計では35,535頭のイヌが収容され、ネコを入れると合計91,939頭のイヌ及びネコが収容されている。そのうち引取先の見つからない約40%に当たる38,444頭が殺処分される。これは1日に100頭という数であり、15分で1頭が殺処分されるという計算になる。

 保護犬になる理由はそれぞれだ。捨てイヌの場合もあれば、地震や水害などの自然災害で地域の環境が崩壊してしまうと、ペットが逃げてしまったり、飼い主が不明になるというケースもある。

 では、もみじのケースはどうだろうか。飼い主のYさんにお話を伺った。もみじは2018年9月に生まれた”らしい”。あるオーナーが拾ってきた野犬から増えた40頭を多頭飼育をしており飼育環境が崩壊していたため、ある獣医が5頭をレスキューしてきたそうだ。それをペットケアなどを事業とし、板橋区上板橋にある”ハッピースポア(http://happy-spore.chu.jp/)”の代表まるこさんが預かることになり、Yさんがちょうどそのタイミングで保護犬の里親の相談に行ったそうだ。

 幼い頃よりペットと過ごしてきたYさんは当時シニアのイヌを飼っており、家族であるイヌが亡くなった場合、自らがペットロス症候群(※B)になる可能性もあり、新しい家族を探すタイミングでもあったそうだ。

 実は保護犬を引き取るには覚悟が必要だ。どういう交配で生まれたか分からないことも多く、生まれつきの障がいを抱えている可能性もあるし、どんなサイズに成長するかも分からない。飼育環境によっては性格に難があるかもしれない。僕が初めて会った時に感じた、臆病なもみじの性格は環境に依るものかもしれない。

 保護犬は直ぐに引き取れる訳ではない。Yさんの場合はまるこさんと家族全員の面接が必要だった。信じられない話だが、虐待する目的で保護犬を引き取る人もいるという。そういう事がおこらないように面接をし、定期的に今のイヌの状況の写真を送る必要もあるそうだ。こういった手順はイヌが新たな環境で幸せに過ごす為には必要だ。また引き取りの前にトライアルも存在する。実際にそれぞれの家で数日間を過ごして、引取人とイヌの相性を確認するのだ。いきなり家庭にイヌが来てみたら、家庭環境に合わないという可能性は十分に有り得るので、トライアルは双方にとって必要な仕組みだ。
 もみじの場合は9月に生まれてから保護され、11月にYさん宅にトライアル、12月に引き取りという手順を踏み、今は愛されて幸せな生活を送っている。

 Yさんは、保護犬を飼ってると、保護犬という存在がかわいそうだと言われる事もあるけど、と前置きした上で話す。
 『道端に捨てイヌがいたら、どんなイヌか分からなくても拾って育てるでしょう。保護犬もそれと同じ。どう育ったとしても、自分の子どもが増えたと思い看取りたい。その覚悟はしてます。』
 保護犬を飼うのは良い部分もある、とYさんは更に話す。
 『保護犬を飼っているというのが話のきっかけになる事が多いんです。話すことが認知して貰える事になります。』と。

 飼い主の一人ひとりの言動が認知を増やし、可能な限り殺処分を減らす明るい未来に繋がっているのかもしれない。

>続く

●無料記事ですがnoteの投げ銭は歓迎。全額を保護犬活動に寄付します。


-------------
本企画はヤッチャレ先導100日間チャレンジ「冒険家がインタビュアーに!?」による
インタビュー第1弾は保護犬のもみじさん。
#yachallenge100days #保護犬
-------------
参考資料
※A 環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室ホームページ
統計資料 「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html

※B日本医師会 「別離」への心の予行演習-ペットロス症候群
http://www.kagoshima.med.or.jp/people/topic/H17/201.htm



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?