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地震が教えてくれたこと


常連さん:「昨日の地震、ほんヤバかったどなぁ。店ん中、大丈夫じゃった?」

オヤジ:「あぁ、びっくいしたよ。いつものごと母ちゃんと仕込みしてたら、いきなり足元がグラっときたとよ。最初は『ん?目まいか?疲れか?』っち思ったどん、すぐに地震じゃっち気づいたがよ。店ん中、調理器具がカタカタ音たてて、棚の瓶が揺れ始めたけん『こらヤバかど』っち思ったどなぁ。」

常連さん:「そらぁ、怖かったろうが。」

オヤジ:「ほんよ。『母ちゃん、大丈夫け?』っち思って見てみたら、母ちゃんが『こら何ごと?』っち顔しとって、まだ状況がわかってなかったとよ。『地震、地震じゃが!』っち言うたら、母ちゃん鍋持ったまんま固まっちょったど。人はパニックになっち動けんごつなるっち、ほんのこつじゃっち思ったわ。」

常連さん:「母ちゃんもびっくいしたじゃろうが。」

オヤジ:「『大丈夫じゃが』っち声かけたどん、そん瞬間にアラームが鳴り響いて、『大地震です』っち警告が頭ん中をぐるぐる回り始めたっちゃがよ。心臓ドキドキ、焦る気持ちば押さえきれんやったがよ。母ちゃんと一緒にそん場にしゃがみこんで、揺れが収まるのを待ってたどん、そん数秒がやけに長く感じられたどなぁ。」

常連さん:「それで、どげんなったと?」

オヤジ:「やがて揺れが収まって、店ん中に静けさが戻ったどん、母ちゃんもホッとした顔しながらも『もしかしたら、まだデカかのがくっとじゃなか!』っち感じで、緊張が解けん様子じゃったがよ。スマホで確認したら『震度4』。あの揺れで震度4かよっち、改めて地震の威力に驚いたどなぁ。震源地に近いとこでは『震度6』じゃっち聞いて、思わずゾッとしたど。」

常連さん:「震度6はヤバいどなぁ。」

オヤジ:「ほんよ。『薩摩炭火やきとり 居酒屋つかさ』ば始めてもう32年になるどん、何度か地震を経験してきたどな。だけんど、恐怖は毎回新たにやってくっとよ。仕込みの最中じゃろうが、お客さんが居る時間帯じゃろうが、地震が起きたら一瞬で店ん中は緊張感に包まれるど。そしてその後には、不安と恐怖がじわじわと押し寄せてくっとよ。地震は建物ば揺らすだけじゃのうて、心の奥深くまで揺さぶってくるもんじゃがよ。」

常連さん:「そうやって、母ちゃんもしっかり守ってきたとじゃな。」

オヤジ:「80歳ば超えた母ちゃんが、今でも一緒に働いてくれてるんじゃがよ。普段は頼りになる母ちゃんどん、こういうときは自分がしっかりせんといかんっち改めて感じたとよ。災害への備えや対策は確かに大事どん、それ以上に大切なのは、家族ば守り、一緒に乗り越える力じゃっち思ったがよ。」

常連さん:「それが一番じゃなぁ。」

オヤジ:「ほんよ。地震が起きるたびに、日常のありがたさを感じるど。そして、どんなに忙しゅうても、家族と一緒に過ごす時間やお客さんとの触れ合いがどれだけ大切かを再認識するどなぁ。荒波の中におる船のごつ揺れるこのボロ家の中で、揺らがんごつ、何ば守り、何ば大切にすべきか、考える良い機会になったど。」

常連さん:「これからも、母ちゃんと一緒に頑張らんといかんどな。」

オヤジ:「これからも地震は避けられんじゃろうどん、そのたびに家族や仲間と一緒に強うありたいと思うど。そして、日常の中で笑顔を絶やさず、安心できる場所ば提供し続ける店ば守り続けたいど。地震が教えてくれたこの大切な思いば胸に、今日も今日とて、焼くとど。いつもありがとうな」

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